下ル下ル商店街

馬 並子

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ウサギの処遇

ショーを楽しみ賞金も手に入れた男は名残惜しげに台を回り込み、いまだにアシスタントの男に髪を掴まれたままのトオルの顔を覗き込む。恥をかき尽くしたトオルの顔には、絶望が浮かんでいるか、それとも苦行を終えた安堵が広がっているかと思われた。
だがなんと、その眉根は切なげに寄り、口からは熱い息と涎を零しているではないか。
恐ろしいことに、切羽詰った排泄欲求が満たされた今、トオルの中にはあの、敏感になった肉壁を擦って欲しい、性器の裏の部分を思い切り押して欲しいという熱痒いもどかしさが再び甦っていたのだ。

ビンゴ玉による刺激を失った内壁が、物足りなさを訴える。既に腸壁から薬が吸収され切っているため、ローションが押し出されても効果が無くなりはしなかったのだ。
「あ、ああ、ああっ」
信じられない恥を晒したばかりだというのに、欲望を帯びて急激に燃え上がっていく体に、トオルの心が追いつかない。
「やだっ、なんで、なんでぇっ」
筋肉が強張ってもう動かせないと思っていた腰が、うねうねと粘るように揺れ始める。再び固さを得た肉茎が、コスチュームの股間に溜まった白濁をかき混ぜ、ぷちゅぷちゅと濡れた音を立てる。粘液にまみれた尻穴は、もう一度口いっぱい頬張らせてくれとでも言うかのように、綻んでひくひくと蠢いている。
トオルの体は既に、男を求め誘う淫らな肉塊へと変貌していた。

「これはすごいな」
熱っぽい溜息をついた勝者の男は、「汚れますよ」という『バトラー』の忠告も聞かず、ウィンナーのように太い指を三本一気にトオルの尻穴に突っ込んだ。
「あああんっ」
信じられないほど甘ったるい声がトオルの口から迸る。男は指をばらばらに動かして、弛んで蕩けきった肉壺の感触を味わった。やわやわと絡みつく濡れた熱い粘膜が、もっと擦ってくれ、もっと深くまで突っ込んでくれと雄弁に強請っている。
「ああっ、ああんっ、やだあぁ、おかしい、おかしいよぉっ」
自分自身の体で得ている快感が信じられず、トオルは指を咥え込んだ尻を嬉しげに振りながらも、顔を歪めて涙を流す。
心と体がバラバラになってしまったようだった。

「コレは、どう処分するのかね?まさか殺したりはしないだろうな?」
急に惜しくなったのか、トオルの中を指で楽しみながら、男が『バトラー』に問いかける。
「地上の元いた場所に放してもいいのですが、職も無い借金まみれのギャンブル狂ですから、碌な死に方をしないでしょうね。かといって、当店では穀潰しのペットを飼えるような余裕はございません。第一、薬の効果により、もうアヌスへの快感無しには生きていけなくなっていますから、飼育に手間がかかりすぎます」

トオルに使用した媚薬は、それ自体には常習性もなく、健康への被害もない優秀な薬だ。だが、使用中に受けた刺激を快感だと認識させ、さらにその快感を脳と肉体に強力に刷り込むという特色があった。しかも、刷り込まれた快感には強い常習性があり、その快感無しでは一日たりとも過ごせなくなるという。下ル下ル商店街で薬局を営む、ろくでもないはぐれ薬剤師の自信作だ。
つまり、長時間に渡って尻の中をパンパンにされ、玉で内壁を擦られ続けたトオルは、もう尻の中を満たされ擦られる快感無しでは生きていけない体になってしまったのだ。射精に関しては、おそらく尻からの噴出無しでは果たせなくなっただろう。

自ら身を落とした人間からは、命以外は何でも奪い、その心も体も生活も全てを改変してしまう。それが下ル下ル商店街のやり方だった。

言外に、このままだとトオルはのたれ死にだと仄めかした『バトラー』の言葉に、勝者の男はううむと考え込む。面倒をみる気は無いが、見殺しにするのも後味が悪い。地上の多くの人間がもつのと同様のエゴだ。
「客を取らせてはどうだ?尻も満足させてやれるし、飼育費用も手に入るだろう?」
名案だとばかりに男が手の平を打つ。だが『バトラー』は冷たい声で言下に否定した。
「当店では男娼の斡旋はいたしておりませんし、この町には尻を犯されたいだけのウサギを雇ってくれる男娼館などございません」
切り捨てる物言いに多少怯みつつ、勝者の男は「だがなぁ」と手慰みにトオルの肉壺を探る。

そのトオルはというと、自分の処遇が話し合われているというのに、媚肉のじれったさに悶えるばかりで碌に話を聞いていない。もっといっぱいになるまで入れて、もっと激しく擦ってと、口に出さずにいるので精一杯だ。男の指を尻で貪り、泣きながら喘いでいる。
そんなトオルに勝者の男が未練たらたらなのは明らかだった。

だから『バトラー』はタイミングを見計らい、声の表情を和ませて、さも今思いついたかのように提案した。
「あぁ、そういえば、広場に当店の看板を立てたいと考えていたんでした。『キッチュ』の名にふさわしい看板です。お客様が投資してくださるというのなら、この子は当店の看板ウサギとして雇用しましょう」
「広告費が必要なのか?それくらいならわけもない」
すぐにでも財布を取り出そうとする男の手に、『バトラー』は白手袋に包まれた大きな手を重ね、意味深に押し留めた。
「いいえ、広告費ではございません。製作費、です」
『バトラー』は唇に薄く笑みを刷き、男の耳元にトオルを幸せにする呪文を囁いた。

「――ですよ」
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