モブキャラ男子の恋愛事情

大吉祭り

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モブキャラ男子に試練

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 「えっと、桜さん? この本は一体」


 翌日の昼休み、桜さんに声をかけると一冊の本を渡される。
 授業で使うノートなんだけど、その表紙には脱モブキャラの文字が。

 周りから見えないよう、必死で隠してはいるが見つかりでもしたら、僕は恥ずかしさのあまり倒れるかも。


 「佐藤君、そのノートはモブキャラを卒業するために大切なものです」

 「そうなんですか。でも何に?」

 「そこには最初、現状をありのまま書いて欲しいんです。自分がどういった人なのかを」


 いわゆる自己分析というものなのか。


 「自分がわかっていなければ、変えることはできません。だから大事なことなんですよ」

 「わかりました。桜さんが考えてくれた作戦だし、しっかりやってみますよ」


 そう言うと桜さんは少しだけ、笑ったような気がした。



 う~ん、難しいなぁ。
 学校が終わり帰宅後、桜さんからの課題でもある自己分析を始める。

 恐らく、ある程度は具体的でなければいけないんだろう。
 ただ単に、モブキャラです、だけでは意味もないだろうし。

 悩みながらも、いくつかは書けている。
 向上心が足りないとか、積極性に欠けるとか。

 場の空気を読むのが得意とかも、書いておこう。
 僕はとにかく、絞り出したことを全て書いてみた。



 翌朝。
 桜さんに早くノートを見て欲しくなり、いつもより少しだけ早く起床。

 学校へ行くのが、こんなにも楽しみになるなんて何年振りだろう。
 少しは成長してるのかも。


 「あれ? 今日は休みなのに早起きね~。何かあったの?」


 ん?
 今なにか聞いてはいけないような言葉が。


 「母さん、今日何曜日?」

 「土曜日だけど、どうしたの」


 訂正。
 まだまだ成長が足りないようだ。


 「母さん、もう一回寝てくるね」


 そう言い残し、自分の部屋へ戻るのだった。
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