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05.真夜中のお呼び出し
レイとの生活は、根本的にリズムが合わない。意図的にお互いを避けている部分もあるかもしれないが、そもそも性格や行動パターンが真逆すぎるのだ。
レイは授業を終えると早々に食堂へ行く。そこまではリックも同じだが、問題はそのあとだ。
レイは食事を終えるとすぐに大浴場へ行き、風呂を出たあとは部屋で課題をしているらしい。
一方のリックは食事を終えたあと談話室で過ごしたり、ノエルの部屋で遊んだりしていることが多い。たっぷり遊んだあとは風呂に入り、脳を休めるためにそのまま寝る。逆に課題や勉強は授業前、図書室や部屋にこもってやることが多かった。
必然的にレイとは夜の時間が合わず、だからと言って朝も合うのかというとそういうわけでもない。リックが起きる頃には既にレイが部屋にいないのだ。女生徒たちからの質問攻めを受けていたとき、家業の都合で転校してきたと言っていたから、もしかしたら日中はそちらの方に顔を出しているのかもしれない。
レイとは出会いこそ最悪だったものの、顔を合わせなければ特に気になることもなかった。初日以降、部屋を荒らすこともなければ、騒がしくすることもない。教室でもレイはリックから離れて座っていた。相変わらずモテモテなところを見ると、レイの性格の悪さを明かしたくなるが、そんなことをすれば自分の心証が悪くなるためリックはだんまりを貫いている。
レイは最初こそ女生徒たちの存在を疎ましく思っていたようだが、それなりに人が群がる状況になれたのか、最近では色んな人と交流していた。
「しっかし、なーんであんなのがモテるんだか……」
今日も今日とて、女生徒に群がられている男を見てリックが頬杖をつきながらぼやく。隣にいたノエルは呆れた顔で苦笑いを零した。
「リックだってモテるじゃない」
「俺がぁ? それを言うならノエルの方がモテるだろ」
「僕のは若干違うような気もするけど……」
ノエルは自分の可愛さを自覚している。レイのように整った容姿ではあるが、人形のような可愛さがあり、マスコット的な可愛がられ方をしている部分も確かにある。だとしても、リックとしてはレイに負けていると思いたくなかった。
「いや、お前でも十分勝てる」
「なにと張り合ってるのさ……」
女生徒と共に席を立ち、教室を出るレイを睨む。
リックたちも教科書をまとめると、部屋には戻らず、食堂へ向かった。
寮がある棟は校舎と繋がっており、自由に行き来することができる。
校内は歴史を感じさせる内装で、長い廊下には大きく縦に切り取られたアーチ型の窓が並ぶ。消灯後に月明かりが差し込むと、廊下を青白く照らした。いまはまだ消灯時間ではないため、天井から吊り下げられたシャンデリアが館内を煌々と照らす。
ウェルズではほとんどの生徒が寮生活を選ぶため、校舎よりも生活スペースが詰まった建物の方が広かった。そのため、リックがいる寮とノエルがいる寮は棟自体が離れている。一度、部屋に戻ってから落ち合うのは面倒だということで、特別荷物が多くない限りは授業後すぐに食堂へ直行だ。ちなみに、ノエルの棟に談話室と食堂が、リックの棟に大浴場がある。
「今日はなに食べようかなぁ」
「俺はいつものやつにする」
「日替わりメニュー好きだねぇ」
「毎回、メニュー変わるから飽きねぇじゃん」
「そうだけど……僕はシチューにしようかなぁ」
「暑いのに?」
「暑いからこそだよ」
ノエルがアイドル顔負けのウィンクする。それにはリックの心も撃ち抜かれた。
(あぁ~~好き!)
ノエルと仲良くなったのは、たまたま最初に座った先が隣だったからだ。些細なきっかけではあるが、今はそのきっかけに感謝している。
「お前と友だちになれてよかったわ……」
「もう、なに言ってんのさ」
「お前と同室ならよかったのに……」
残念ながら部屋に戻ってもいるのはいけ好かない野郎である。レイの顔を思い浮かべるだけで気が滅入る。
「お前はずっとそのままでいてくれ……」
「はいはい」
リックもノエルもそれぞれ料理を注文し、トレイを受け取って席につく。ピーク時なのもあって、テーブルは何処も埋まっており、あまり席は選べなかった。
(アイツ、まだ女子と一緒にいやがる……)
ふと顔を上げると、同じテーブルの端にレイが座っている。よくよく見ると、クラスでもマドンナだと言われている女生徒と一緒に食事をとっていた。
「リック、声に出てるよ」
「うぉ、ワリィ……」
「そんなに目の敵にしなくてもいいんじゃない?」
「同室じゃないからそんなことが言えんだよ……」
「彼、こうして見る分にはいい人そうだけどね?」
「それは猫被ってるからだって……」
みんなはレイの性格を知らないからそんなことが言えるのだ。百歩譲ってイケメンであることは認めても、性格が終わっているから論外である。
「あっ……」
じっと負の念を送るように男のことを見ていたら、レイと目が合った。なんだと言わんばかりにこちらを凝視したのち、べ、っと舌を出される。思わず、衝動に任せて椅子から立ち上がった。
「リック!? どうしたの?」
「……いや、なんでもねぇ!」
イライラを押さえて、残りの食事を胃に収める。やけくそみたいにパンを口に詰め込んでいると、トントンと肩を叩かれた。
振り向けば、さっき舌を出して馬鹿にしてきたレイが立っている。なんだ? と睨めば、レイが呆れ混じりのため息をついた。
「口いっぱいに頬張るな。見苦しい」
「はぁ!?」
「飲み込んでから話せ。汚いだろ」
「……っ、で、なんだよ?」
ごくんと咀嚼していたものを飲み込み、レイを睨み上げる。レイはリックのささやかな抵抗など意にも返さず、涼しい顔でリックを見下ろした。
「このあと少し話がある。食べ終わったら部屋に来てくれ」
「は? 嫌だけど」
「お前に拒否権はない」
「あ゛?」
これには地獄の大魔王様もびっくりするほどの傍若無人っぷりである。向かい合って座っているノエルと目配せしたら、ノエルが苦笑いをしていた。なるほど、そういうことか……とノエルの顔にも描いてある。
「それが人にモノを頼む態度か?」
「とにかく食べ終わったら部屋に来い。待っている」
レイはこちらの返答などお構いなしにさっさと会話を切り上げると、ローブを翻して行ってしまった。たまらず、リックはレイの後ろ姿を指さす。
「見ただろ!? 今の嫌な感じ!!」
「これはリックも大変そうだね……。でも、ちゃんと行ってあげるんでしょ?」
ノエルに言われて、リックは深いため息を吐き出す。
こういうところが自分でも甘いと思う。頼まれたら断れないのは美点であり、リックの短所だ。それにレイの話とやらも気になる。
「悪いな、ノエル。今日、部屋に行くのパスで」
「うん」
リックは残りのパンとチキンを飲み込むと、レイが待つ自室へ戻ることにした。
レイは授業を終えると早々に食堂へ行く。そこまではリックも同じだが、問題はそのあとだ。
レイは食事を終えるとすぐに大浴場へ行き、風呂を出たあとは部屋で課題をしているらしい。
一方のリックは食事を終えたあと談話室で過ごしたり、ノエルの部屋で遊んだりしていることが多い。たっぷり遊んだあとは風呂に入り、脳を休めるためにそのまま寝る。逆に課題や勉強は授業前、図書室や部屋にこもってやることが多かった。
必然的にレイとは夜の時間が合わず、だからと言って朝も合うのかというとそういうわけでもない。リックが起きる頃には既にレイが部屋にいないのだ。女生徒たちからの質問攻めを受けていたとき、家業の都合で転校してきたと言っていたから、もしかしたら日中はそちらの方に顔を出しているのかもしれない。
レイとは出会いこそ最悪だったものの、顔を合わせなければ特に気になることもなかった。初日以降、部屋を荒らすこともなければ、騒がしくすることもない。教室でもレイはリックから離れて座っていた。相変わらずモテモテなところを見ると、レイの性格の悪さを明かしたくなるが、そんなことをすれば自分の心証が悪くなるためリックはだんまりを貫いている。
レイは最初こそ女生徒たちの存在を疎ましく思っていたようだが、それなりに人が群がる状況になれたのか、最近では色んな人と交流していた。
「しっかし、なーんであんなのがモテるんだか……」
今日も今日とて、女生徒に群がられている男を見てリックが頬杖をつきながらぼやく。隣にいたノエルは呆れた顔で苦笑いを零した。
「リックだってモテるじゃない」
「俺がぁ? それを言うならノエルの方がモテるだろ」
「僕のは若干違うような気もするけど……」
ノエルは自分の可愛さを自覚している。レイのように整った容姿ではあるが、人形のような可愛さがあり、マスコット的な可愛がられ方をしている部分も確かにある。だとしても、リックとしてはレイに負けていると思いたくなかった。
「いや、お前でも十分勝てる」
「なにと張り合ってるのさ……」
女生徒と共に席を立ち、教室を出るレイを睨む。
リックたちも教科書をまとめると、部屋には戻らず、食堂へ向かった。
寮がある棟は校舎と繋がっており、自由に行き来することができる。
校内は歴史を感じさせる内装で、長い廊下には大きく縦に切り取られたアーチ型の窓が並ぶ。消灯後に月明かりが差し込むと、廊下を青白く照らした。いまはまだ消灯時間ではないため、天井から吊り下げられたシャンデリアが館内を煌々と照らす。
ウェルズではほとんどの生徒が寮生活を選ぶため、校舎よりも生活スペースが詰まった建物の方が広かった。そのため、リックがいる寮とノエルがいる寮は棟自体が離れている。一度、部屋に戻ってから落ち合うのは面倒だということで、特別荷物が多くない限りは授業後すぐに食堂へ直行だ。ちなみに、ノエルの棟に談話室と食堂が、リックの棟に大浴場がある。
「今日はなに食べようかなぁ」
「俺はいつものやつにする」
「日替わりメニュー好きだねぇ」
「毎回、メニュー変わるから飽きねぇじゃん」
「そうだけど……僕はシチューにしようかなぁ」
「暑いのに?」
「暑いからこそだよ」
ノエルがアイドル顔負けのウィンクする。それにはリックの心も撃ち抜かれた。
(あぁ~~好き!)
ノエルと仲良くなったのは、たまたま最初に座った先が隣だったからだ。些細なきっかけではあるが、今はそのきっかけに感謝している。
「お前と友だちになれてよかったわ……」
「もう、なに言ってんのさ」
「お前と同室ならよかったのに……」
残念ながら部屋に戻ってもいるのはいけ好かない野郎である。レイの顔を思い浮かべるだけで気が滅入る。
「お前はずっとそのままでいてくれ……」
「はいはい」
リックもノエルもそれぞれ料理を注文し、トレイを受け取って席につく。ピーク時なのもあって、テーブルは何処も埋まっており、あまり席は選べなかった。
(アイツ、まだ女子と一緒にいやがる……)
ふと顔を上げると、同じテーブルの端にレイが座っている。よくよく見ると、クラスでもマドンナだと言われている女生徒と一緒に食事をとっていた。
「リック、声に出てるよ」
「うぉ、ワリィ……」
「そんなに目の敵にしなくてもいいんじゃない?」
「同室じゃないからそんなことが言えんだよ……」
「彼、こうして見る分にはいい人そうだけどね?」
「それは猫被ってるからだって……」
みんなはレイの性格を知らないからそんなことが言えるのだ。百歩譲ってイケメンであることは認めても、性格が終わっているから論外である。
「あっ……」
じっと負の念を送るように男のことを見ていたら、レイと目が合った。なんだと言わんばかりにこちらを凝視したのち、べ、っと舌を出される。思わず、衝動に任せて椅子から立ち上がった。
「リック!? どうしたの?」
「……いや、なんでもねぇ!」
イライラを押さえて、残りの食事を胃に収める。やけくそみたいにパンを口に詰め込んでいると、トントンと肩を叩かれた。
振り向けば、さっき舌を出して馬鹿にしてきたレイが立っている。なんだ? と睨めば、レイが呆れ混じりのため息をついた。
「口いっぱいに頬張るな。見苦しい」
「はぁ!?」
「飲み込んでから話せ。汚いだろ」
「……っ、で、なんだよ?」
ごくんと咀嚼していたものを飲み込み、レイを睨み上げる。レイはリックのささやかな抵抗など意にも返さず、涼しい顔でリックを見下ろした。
「このあと少し話がある。食べ終わったら部屋に来てくれ」
「は? 嫌だけど」
「お前に拒否権はない」
「あ゛?」
これには地獄の大魔王様もびっくりするほどの傍若無人っぷりである。向かい合って座っているノエルと目配せしたら、ノエルが苦笑いをしていた。なるほど、そういうことか……とノエルの顔にも描いてある。
「それが人にモノを頼む態度か?」
「とにかく食べ終わったら部屋に来い。待っている」
レイはこちらの返答などお構いなしにさっさと会話を切り上げると、ローブを翻して行ってしまった。たまらず、リックはレイの後ろ姿を指さす。
「見ただろ!? 今の嫌な感じ!!」
「これはリックも大変そうだね……。でも、ちゃんと行ってあげるんでしょ?」
ノエルに言われて、リックは深いため息を吐き出す。
こういうところが自分でも甘いと思う。頼まれたら断れないのは美点であり、リックの短所だ。それにレイの話とやらも気になる。
「悪いな、ノエル。今日、部屋に行くのパスで」
「うん」
リックは残りのパンとチキンを飲み込むと、レイが待つ自室へ戻ることにした。
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