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1章 ~この世界の現状~

6 ウザイやつは唐突に

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……は?

今なんて言った?


俺は、見えもしない声の主に問いかける。


«大変申シ訳ナイノデスガ前ノ世界へ帰ル方法ハアリマセン、ト言イマシタ»


嘘つけ。
ひゅーひゅー口笛鳴らしても無理だ。 てかどんな誤魔化し方だよ。

姿は見えないが、相手が視線を反らして明後日の方向に向かって口笛を吹いてるのが見えた。
いや、見えてないか。 想像出来た、か。

声の主を馬鹿にしていると、ぼそっと気になる言葉が聞こえた。


«ドチラニシロ、アソコハ、システムノ範囲外デスシ、何モデキマセン»


はえ?
システム?

そんなメカメカしいものがあるのか?


«……サア?»


なんか、重要そうな単語な気がするんだが……?
お前、これ言って良いことだったのか?


«……»


あーあ。

なるほど、口を滑らせたんだな。
大丈夫だ、誰にも言わないよ。

口止め料として前の世界に返せ。


その瞬間、俺とあいつの間に、沈黙が広がった。

あいつがガチで考え込んでいるのが想像できる、ざまあ見ろだ。
あいつは絶対何かしらの情報を持っているはず、だから、どんどん口を開かせなければならない。

さあ、次は何ていってくれるんだ? この俺が! 華麗に論破してやるぜ!


そう意気込み、やつの口から次の言葉が出てくるのを待つ。

そして、長い長い沈黙の末、やつの口から出た言葉は――





«……コレニテ、異世界転移者用チュートリアルヲ終了シマス»


――完全に逃げの体勢に入った言葉だった。


«異世界ライフヲオ楽シミクダサイ!»

ちょ、おま…!

待てって! 逃げるなって! おい!

くそったれえぇえぇええ! (ヒーロー志望者)


®®®®®


さて、どうしたものか……。

探して縛り上げたい所だが、やつの姿は見えないし、探しようがない。

特にする事もないので、辺りを見渡す。

ここは、あの白髪の老人が言ってた島だろう。
あの言い方からして罪人を閉じ込めておく刑務所のようなものなんだろう。

だが、日本のような刑務所とは違い、いたって自由だ。
独房に入れられる訳でもないし、看守もいない。冤罪になったのを疑いそうだ。
恐らくこの島事態が檻の役目を担っているのだろう。

この島に来る前、俺は裁判所で白髪の老人と喧嘩したいたはずだ。
いきなり床が光って気がつけば見知らぬ島……。

恐らくここは魔法と剣の世界なのだろう。
さっきの、声もなんかやってたし。

ヒーローに憧れて、俺tueeeものを読み漁った俺が言うのだ、間違いない。 

けど、異世界かぁ……。
なんか、感慨深いなぁ……。

……感慨深いの意味知らないけど。

俺、ちゃんと元の世界に帰れるのかな。


……いいや、ここでくよくよしていたらあのクソウザボイスに笑われる。
あいつを楽しませてなるものか!


よーし、まずはステータス確認だ!
異世界に来たらまず、ステータスやろ。

さてと、ステータスはどうやって確認するんだ? まあ、時間はあるし、綺麗な海を眺めながら考えるか。

……念じるとか? ステータス表示!!

……だめか。


叫ぶとか? 
いや、恥ずかしいからやめよ。

……。


仕方ない……。
恥ずかしいが、試さない訳には行かない。

ま、まあ誰も見てないし?
やってみようかなー?

y、よーし。 いくぞ!

「す、ステータス表示ー!」


……やっぱり駄目なのか。


俺が落ち込んでいると、優しい慰めの声が聞こえた。



«……ププッ、ソンナノデ出ルワケ無イデショウ? ゲームジャアルマイシ»

「死ね」

優しい声ではなく、ウザイ声でした。


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