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金の王子と銀の王子2

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銀の王子と金の王子 2





俺は心底、彼を恐ろしいと感じた。

俺の腹違いの兄弟、ガブリエルを――







俺がガブリエルのモノとなる事を承諾してしまってから、生活は目まぐるしい程に変わっていった。

ガブリエルは、先ず跡目争いを鎮静化するために、自分は王位を返還し、俺に継承権を与え、自ら時期国王補佐として仕えると宣言した。
もしも、その望みが叶えられない場合は自害も辞さないと脅迫紛いのものだった。
更には俺以外の人間が継承権を与えられないように、神聖なる儀式として最高位司祭の元、真名を受けとらされた。
この儀式を唯一出来るのは時期国王一人のみで、それ以外の人間は何であろうと受ける事は出来ないしきたりだった。
また、反乱分子が持つ大臣達を適当な罪状で処刑し、ガブリエルは自分の腹心に地位を与え、俺の周りを囲んでいった。
スムーズに話がまとまっていく中で、俺はガブリエルが前々からこの計画を考えていたのかと、どこか寒々しい思いだった。
すべてがガブリエルの思惑通りに事が運んでいく。






「これで、ミカエルと僕はずっと一緒だよ」

でも、とガブリエルは妖しく目を光らせた。
俺はガブリエルのものとなると言ってから、特殊な腕輪を、左手と右足につけられた。
城から逃げられないように魔術的な紋章が彫られ、さらにその居場所をガブリエルがいつでも把握出来るようになっていた。
すべてがガブリエルの手の中で転がされていく。

新たに俺に与えられた部屋は前にいた所より、遥かに立派で、広かった。
白と緑を貴重とした部屋は、俺好みだった。
白のソファーに、俺とガブリエルは座った。
ガブリエルは俺を引き寄せて顎を掴むと、何処か残酷な光を宿したままにこりと笑った。

「ねえ、ミカエル。これで僕らの仲を邪魔をする奴は殆どいなくなったね…………後は、」

ひそりと楽しそうにガブリエルは囁いた。

ルシフェルを殺すだけだ――――…


「……ルシフェルはもういない」

「いいや、ミカエル。ごまかしたって無駄だよ?」

笑顔が怖いとミカエルから離れようとしたが、しっかりと腰を捕らえられ、逆にさらに接近させてしまった。
頬をゆっくりと撫でながらガブリエルは俺をうっとりと見つめた。

「……憎らしいことに君と正真正銘の双子として生まれ、災厄の兆しを無くすために殺されるはずであったルシフェルは……ああ、今はリエルだったっけ?何故か生きている」 

「ど……して……」

ガブリエルは気付いていたということに、身体が震えた。
俺とルシフェルは幸い二卵性。
外見は似ておらず、当時赤子を殺そうとした人物は気の毒だと、俺の乳母になる女の子供として匿ったのだ。
幸運だったのは、その乳母の赤子がちょうど風邪を引き、それを悪化させてしまい死んでいたことだ。
リエルという名で育ち、俺達は、秘密を共有して生きてきたのだ。
誰にもこの秘密がばれないように気をつけていた。
でないと、今度こそリエルが殺されてしまう。
俺はそんなことにならないために、ガブリエルに縋った。

「誰にも言わないでくれ……何でもする、だからルシフェルのことは……!」

「そんなにミカエルに思われているなんて……羨ましい限りだよ」

穏やかな口調とはうらはらに、険しい表情のガブリエルに、息を飲んだ。
掴んでいた手に力が入り、痛みに顔を歪めた。
それにすぐに気がつき、ガブリエルは力を緩めてくれた。

「彼を見逃してもいいけれど、約束して?ルシフェルに生涯二度と会わないと」

「それで本当にルシフェルを助けてくれるのか?」

「ああ、約束しよう」

「なら、俺はもう二度とルシフェルには会わない」

片割れに会えないのはつらいけど、殺されてしまうより、何処かで幸せに暮らして欲しい。
俺の答えに満足したのか、ガブリエルは優しく抱きしめてきた。

「これでミカエルは僕のものだ」

嬉しそうに囁くガブリエルに、俺はどうしてこんなに自分に執着してくるのだろうかと疑問に思った。
別にガブリエルが嫌いなわけではない。しかし、彼を怖いと思うのは事実で、こうして彼に囲われる事を不快に思う。

「ガブリエル……俺はお前の気持ちには応えられない」

ガブリエルが俺に求めるものは分かっている。
しかし、俺には彼の欲しいものを与えられない。
俺の心は愛情というものが、信じられないから。
愛は奪うものでも与えるものでも与えられるものでもなく、願うものなんだと思う。
恋い焦がれて、その感情が愛だと錯覚しているだけだ。
現に俺を産んだ母親がそうだった。プライドの高い貴族の女は道楽に現をぬかし、王妃としての贅沢に焦がれた。
王という金づるを愛し、何の見込もない息子達を見捨てた。

「……分かってる。それでもいいから僕のものになってくれ。その美しい金の髪に、暗い紫紺の瞳。いつも明るい笑顔を振り撒くその裏で、実はすべてを否定している眼差しが僕の心を離さないんだ」

「……そっか、俺達もしかして似た者同士なのか……?」

「…………」

嘲笑うように言うが、ガブリエルの返答はなかった。
俺も、こいつも、月の明かりを浴びて育って来た。
温かい太陽の日差しなど俺達にはキツすぎる。
ようやくガブリエルの言っている意味が理解できた。
俺達は似ているのだ。
外見でも性格でもなく、根本的な歪み方が。
同じ環境で育ったからだろうか。

不快に思うのは同族嫌悪か。

「きっと、俺のことはお前にしか、お前のことは俺にしか理解出来ないんだろうな」

「僕たちは、ただのコマ。所詮は人形だからね。だからこそ、誰かの手の上で躍らされるのはご免だ」

ガブリエルは妖しく笑う。それに俺も同じように笑った。
そうだ、確かに俺達は同じ運命を辿る存在なのかもしれない。

「ねぇ、ミカエル。二人でこの国を統べろう?」

「……あぁ」

「僕らでこの国を支配するんだ」

頷きながらも、それでも俺は心の隅で何が訴えていた。
ガブリエルの思考に染まってはいけないと。
ぞっとするような綺麗な表情を浮かべながら次の獲物を狙うガブリエルに、甘く誘う彼が怖かった。


首筋に顔を埋めて痕をつけてくるガブリエルを受け入れながら、俺はすべてを彼と共にあることを決めた。


きっと、ガブリエルがいうように俺達は、双子のように運命が絡んでいるんだろう。
まるで蜘蛛の糸に捕まった虫のように、俺はただ食べられるのを待つだけだった。



俺の運命は、ガブリエルと誰よりも深く、繋がってしまった。







END



時間があればリエルもきちんと出したいです。


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