16 / 31
第十六話
しおりを挟む終業式を兼ねた学院でのパーティー。準備をしている段階で既に帰りたいです。ドレスはシグニが毎度のことながらくれたものです。夜空をイメージした深い青色に、ごちゃごちゃとしていないフリル。目立つ程ではありませんが、小さな宝石を散りばめ、星のようになっています。
……まぁ、ルーチェのドレスも似たようなものなのですが。ヴェルメリオ様がドレスを用意するという婚約者として当たり前のこともしないため、ルーチェは基本自分でドレスを用意しています。ですがたまに、シグニがルーチェにもドレスを用意しているんです。婚約者の姉だから。そう考えるのは簡単です。私も少し前まではそう考えていましたから。けど、今はシグニがルーチェにドレスを贈るのは好きだからなのではとか、二人は恋仲なんじゃないかとか、そういう風に思ってしまうのです。
「来たか」
「お兄様?」
会場の入り口まで今では当たり前となっている四人で行くと、お兄様とオルコス卿、アイト卿がいました。何故? お兄様は毎年忙しいからと新入生歓迎会以外のパーティーは欠席していると聞いたのですが。
「エルピス嬢、パートナーがいないならオルコスにエスコートしてもらうといい。ルーチェは私とだ」
「アイトは?」
「護衛だ。以前より悪質な輩がいるかもしれないからな」
オルコス卿にはエルピス伯爵令嬢の護衛をしてもらうということですね。私たちと親しくしているためか、上級者から絡まれることが増えているそうです。アイト卿はご令嬢のエスコートをするには、その、少し軽いと言いますか……。いい人なんですけどね。
「セフィド公子は両手に花だったのにな」
「私の可愛い花は両手で持たないと落ちてしまいますから」
「シグニ、あんた最近アイトに似てきたわね」
確かに、アイト卿が女性を口説くときのセリフと似てますね。前に聞いたことがありますが、そのとき言ってたことと似ている気がします。確かそのときは「可愛い花を両手で支えたい」とかでしたかね?
「ルーチェは分かるけどなんで第二皇女様も知ってるんすか」
「お忍びで街に行ったときに見ました」
ルーチェに言われて二人で行ったんですよね。そのときに見つけて、ルーチェが面白半分で尾行しようって。なので私も知ってます。ルーチェがお腹を抱えて笑ってた覚えがありますよ。
「俺の話はいいから、入りましょうよ……」
「逃げたわね」
パーティーもそろそろ始まってしまいますから、入りましょう。話に花を咲かせるのは入ってからでもできますから。 中に入れば好奇と嫌悪の視線を向けられます。分かってはいましたが、居心地が悪いですね。皇族相手にそんなことをすれば、本来ならば不敬だと言われてもおかしくありません。学院内では皆平等、などと言うつもりでしょうか。そんなもの建前。ここは小さな社交場です。ルールに従えない者を置いておく程優しい場所ではありません。学院を出てからもその様子なら、考えなければいけませんね。
「ルシア、大丈夫?」
「少し緊張はしますが、前よりは大丈夫です」
学院に入学してから早三ヶ月。前までは人前に出ることすら怖かったのに、今では多少なら問題ありません。学院に来てよかったです。このまま少しずつ、苦手意識を克服していけたら、迷惑をかけなくてすみます。それに、学院に来たおかげで、シグニとルーチェのことも知れました。
「……私が、ルーチェだったらな」
お兄様と一緒に前を歩くルーチェ。いつも堂々としていて、自分の意思をはっきりと伝えられる。私もルーチェみたいだったら、何か変わったんでしょうかね。
ルーチェの着る深海をイメージした深い青色のドレスには、白波が波打つようにレースが付けられています。深海のイメージのルーチェと夜空のイメージの私。双子なのに、どうしてこうも違うのでしょうか。
1
あなたにおすすめの小説
一途に愛した1周目は殺されて終わったので、2周目は王子様を嫌いたいのに、なぜか婚約者がヤンデレ化して離してくれません!
夢咲 アメ
恋愛
「君の愛が煩わしいんだ」
婚約者である王太子の冷たい言葉に、私の心は砕け散った。
それから間もなく、私は謎の襲撃者に命を奪われ死んだ――はずだった。
死の間際に見えたのは、絶望に顔を歪ませ、私の名を叫びながら駆け寄る彼の姿。
……けれど、次に目を覚ました時、私は18歳の自分に戻っていた。
「今世こそ、彼を愛するのを辞めよう」
そう決意して距離を置く私。しかし、1周目であれほど冷酷だった彼は、なぜか焦ったように私を追いかけ、甘い言葉で縛り付けようとしてきて……?
「どこへ行くつもり? 君が愛してくれるまで、僕は君を離さないよ」
不器用すぎて愛を間違えたヤンデレ王子×今世こそ静かに暮らしたい令嬢。
死から始まる、執着愛の二周目が幕を開ける!
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで。
倉桐ぱきぽ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私は、ざまぁ回避のため、まじめに生きていた。
でも、ヒロイン(転生者)がひどい!
彼女の嘘を信じた推しから嫌われるし。無実の罪を着せられるし。そのうえ「ちゃんと悪役やりなさい」⁉
シナリオ通りに進めたいヒロインからのハラスメントは、もう、うんざり!
私は私の望むままに生きます!!
本編+番外編3作で、40000文字くらいです。
⚠途中、視点が変わります。サブタイトルをご覧下さい。
悪役令嬢に転生したけど、知らぬ間にバッドエンド回避してました
神村結美
恋愛
クローデット・アルトー公爵令嬢は、お菓子が大好きで、他の令嬢達のように宝石やドレスに興味はない。
5歳の第一王子の婚約者選定のお茶会に参加した時も目的は王子ではなく、お菓子だった。そんな彼女は肌荒れや体型から人々に醜いと思われていた。
お茶会後に、第一王子の婚約者が侯爵令嬢が決まり、クローデットは幼馴染のエルネスト・ジュリオ公爵子息との婚約が決まる。
その後、クローデットは体調を崩して寝込み、目覚めた時には前世の記憶を思い出し、前世でハマった乙女ゲームの世界の悪役令嬢に転生している事に気づく。
でも、クローデットは第一王子の婚約者ではない。
すでにゲームの設定とは違う状況である。それならゲームの事は気にしなくても大丈夫……?
悪役令嬢が気付かない内にバッドエンドを回避していたお話しです。
※溺れるような描写がありますので、苦手な方はご注意ください。
※少し設定が緩いところがあるかもしれません。
ナイスミドルな国王に生まれ変わったことを利用してヒロインを成敗する
ぴぴみ
恋愛
少し前まで普通のアラサーOLだった莉乃。ある時目を覚ますとなんだか身体が重いことに気がついて…。声は低いバリトン。鏡に写るはナイスミドルなおじ様。
皆畏れるような眼差しで私を陛下と呼ぶ。
ヒロインが悪役令嬢からの被害を訴える。元女として前世の記憶持ちとしてこの状況違和感しかないのですが…。
なんとか成敗してみたい。
シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした
黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)
逆ハーレムエンド? 現実を見て下さいませ
朝霞 花純@電子書籍発売中
恋愛
エリザベート・ラガルド公爵令嬢は溜息を吐く。
理由はとある男爵令嬢による逆ハーレム。
逆ハーレムのメンバーは彼女の婚約者のアレックス王太子殿下とその側近一同だ。
エリザベートは男爵令嬢に注意する為に逆ハーレムの元へ向かう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる