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第五章〜ディフォン〜
武田軍
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ゆいさんと一緒にいた時、ある程度のことは聞いていた。
ある時話してくれたのはこの世界の武将達の関係。
このディフォンの中で力を持っている軍は5つ。
織田、豊臣、徳川、武田、そして上杉。
ゆいさんがこの世界に来るまでは戦ばかりだったそうだが、ラウスという共通の敵ができてからは一時休戦というふうになっているらしい。
しかし、ここである疑問が生じた。
「ゆいさんは戦はないって言ってたのに、なんで戦っているんだろう……」
知らないうちに口に出ていたようで、私の呟きを聞いた昌信さんが驚いた。
「ゆいを知ってるの?」
「はい、ついこの間まで一緒にいました。まあ事情があって別れましたけど」
「へぇ、事情ね。それは話してくれたりは」
「話したくはないですね」
「……ゆいがいる軍には攻めない、そう決めたんだよ。だから彼女は戦がないと思っているんじゃないかな」
昌信さんは私の疑問に答えてくれた。
確かにこの世界の敵であるラウスを討伐するためにはゆいがいないといけない。
戦で怪我でもさせたら大変なことになるだろう。
だから彼女の周りでは休戦ということにしていたのか。
「今はどこの軍と戦っているの?」
「上杉軍だよ。なかなか手強い相手で苦戦しているんだ」
(それなら私を捕まえるより昌信さん達も戦った方がいいんじゃ……)
そんなことを話しているうちに武田軍の本陣に着いてしまう。
「信玄様、ただいま戻りました」
「ああ、見ていたのは子供だったか」
「はい、どうやら体術の心得があるようです。それにゆいと知り合いだそうで、間者ではないかと思われます」
「ゆいと知り合い? それはどういうことだ?」
信玄さんの視線が私に向けられる。
昌信さんに説明しろと言われたため、異世界から迷い込んだということは隠してこれまであったことを話した。
「そうだったんだな。お前、行くあてがないんだろう? しばらく俺の城にくるといい」
「対価を払えないので大丈夫です」
「それはできることをしてくれればいいさ」
「できること……ラウス討伐くらいですかね」
どうやら間者の疑いは晴れたようだ。
こんな怪しい子供でもゆいさんの知り合いと言うだけで面倒を見てくれるらしい。
ゆいさんがこの世界の人達にとってどれほど大切な存在なのか、改めてわかった気がした。
「そういえば体術の心得があると言っていたが本当なのか?」
見た目は6歳の子供。
それに全く鍛えている様子もないため疑われるのも当然だろう。
実際私には体術の心得がない。
全て魔法で補っているだけである。
「少し戦い慣れているってだけです。体術とかそんな大したことじゃないですよ」
「まっ、それは実際に見てからだな」
横に視線を移すとラウスが見えた。
数は少ないため、すぐに討伐できそうである。
しかし誰も動こうとしない。
(私が討伐しろってことか)
適当に剣を作り、一瞬で間合いを詰めてすぐさま討伐する。
自分の力を隠すためにも、しばらくは魔法を使わないことにした。
「おお、さすがだな。なんならそこらの兵よりも強いぞ」
「そんなことないです」
「……だが、いい戦力になりそうだ」
(戦力? それは戦のことかな)
「ラウス討伐以外はしませんよ」
「そうか、それは残念だ」
やはり戦のことだったらしい。
先に断ると、信玄さんはわかりやすく残念そうな顔をした。
どうやら戦の中心にもラウスが現れたらしい。
今日の戦はお互い引くようだった。
私は信玄さんについて行って、城の一室を貸してもらえることになった。
ある時話してくれたのはこの世界の武将達の関係。
このディフォンの中で力を持っている軍は5つ。
織田、豊臣、徳川、武田、そして上杉。
ゆいさんがこの世界に来るまでは戦ばかりだったそうだが、ラウスという共通の敵ができてからは一時休戦というふうになっているらしい。
しかし、ここである疑問が生じた。
「ゆいさんは戦はないって言ってたのに、なんで戦っているんだろう……」
知らないうちに口に出ていたようで、私の呟きを聞いた昌信さんが驚いた。
「ゆいを知ってるの?」
「はい、ついこの間まで一緒にいました。まあ事情があって別れましたけど」
「へぇ、事情ね。それは話してくれたりは」
「話したくはないですね」
「……ゆいがいる軍には攻めない、そう決めたんだよ。だから彼女は戦がないと思っているんじゃないかな」
昌信さんは私の疑問に答えてくれた。
確かにこの世界の敵であるラウスを討伐するためにはゆいがいないといけない。
戦で怪我でもさせたら大変なことになるだろう。
だから彼女の周りでは休戦ということにしていたのか。
「今はどこの軍と戦っているの?」
「上杉軍だよ。なかなか手強い相手で苦戦しているんだ」
(それなら私を捕まえるより昌信さん達も戦った方がいいんじゃ……)
そんなことを話しているうちに武田軍の本陣に着いてしまう。
「信玄様、ただいま戻りました」
「ああ、見ていたのは子供だったか」
「はい、どうやら体術の心得があるようです。それにゆいと知り合いだそうで、間者ではないかと思われます」
「ゆいと知り合い? それはどういうことだ?」
信玄さんの視線が私に向けられる。
昌信さんに説明しろと言われたため、異世界から迷い込んだということは隠してこれまであったことを話した。
「そうだったんだな。お前、行くあてがないんだろう? しばらく俺の城にくるといい」
「対価を払えないので大丈夫です」
「それはできることをしてくれればいいさ」
「できること……ラウス討伐くらいですかね」
どうやら間者の疑いは晴れたようだ。
こんな怪しい子供でもゆいさんの知り合いと言うだけで面倒を見てくれるらしい。
ゆいさんがこの世界の人達にとってどれほど大切な存在なのか、改めてわかった気がした。
「そういえば体術の心得があると言っていたが本当なのか?」
見た目は6歳の子供。
それに全く鍛えている様子もないため疑われるのも当然だろう。
実際私には体術の心得がない。
全て魔法で補っているだけである。
「少し戦い慣れているってだけです。体術とかそんな大したことじゃないですよ」
「まっ、それは実際に見てからだな」
横に視線を移すとラウスが見えた。
数は少ないため、すぐに討伐できそうである。
しかし誰も動こうとしない。
(私が討伐しろってことか)
適当に剣を作り、一瞬で間合いを詰めてすぐさま討伐する。
自分の力を隠すためにも、しばらくは魔法を使わないことにした。
「おお、さすがだな。なんならそこらの兵よりも強いぞ」
「そんなことないです」
「……だが、いい戦力になりそうだ」
(戦力? それは戦のことかな)
「ラウス討伐以外はしませんよ」
「そうか、それは残念だ」
やはり戦のことだったらしい。
先に断ると、信玄さんはわかりやすく残念そうな顔をした。
どうやら戦の中心にもラウスが現れたらしい。
今日の戦はお互い引くようだった。
私は信玄さんについて行って、城の一室を貸してもらえることになった。
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