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第五章〜ディフォン〜
本当の自分
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鳥になったカナちゃんは、先ほどまでの苦しさもなく眠りについた。
ノアくんは優しく、カナちゃんの頭を撫でる。
「ノアくん、これはどういうこと?」
今でも信じられず、説明を求めた。
「それは本人に直接聞いてください。その方がきっと本心を聞けるはずですから……」
「でも、カナちゃんは鳥に……」
「しっ」
みんな気になることを聞こうとしたが、ノアくんは人差し指を口の前に持っていき、こう言った。
「カナが起きます。今はそっとしてあげたいんです」
「……それもそうだね」
寝息を立てながら寝ているカナちゃん。
今はゆっくり休んでもらうためにも、ノアくんとオリヴィアちゃん、そしてしばを残してそれ以外は退散した。
「もっと、周りを頼っていいのに……」
ノアくんの小さな呟きが聞こたが、聞こえたのは私だけのようだった。
~カナside~
『……ん』
「カナちゃん、起きたの?」
目を覚ますと、隣にはオリ姉としばがいた。
『おはよう、オリ姉、しば』
「おはよう。まる3日も起きないから心配したよ」
『えー!? 3日も? ってこの姿……』
自分の姿は色鮮やかな毛で覆われていた。
それを見て自分がみんなの前で鳥に変身したのを思い出す。
『そっか、私……。みんな怖がってたよね……急に人間が鳥になったりして』
あの時はノア兄の言葉に安心して変身してしまったけど、実際怖がられていたらと思うととても辛い。
ゆいさん達ならきっと……そう思うこともあるが、もしものことが会った時を想像するとやはり変身しなければ良かったと後悔する。
「まあまあ、とりあえずみんなと話してみよう」
そう言ってみんながいるという広間に連れて行かれた。
部屋につくと、武田軍、更には上杉軍の人達が勢揃いしていた。
「カナちゃん! 目が覚めたんだね!」
最初に声をかけてくれたのはゆいさん。
すぐに立ち上がり、私の方に駆け寄ってくる。
私はオリ姉に抱えられたまま話した。
『ゆいさん、怖くないの?』
「怖いって何が?」
『人間の私が、鳥になったこと』
「怖くないよ。だって、カナちゃんはカナちゃんでしょ? 皆さんもそうですよね」
ゆいさんの問いかけに、部屋にいた皆さんが頷いた。
そう言われて気づく。
(そっか、やっぱりこの人達は大丈夫だったんだ……)
『ごめんなさい……皆さんには、こんなに優しくしてもらっているのに、私は……』
信用していなかった。
申し訳なさでいっぱいになり、涙が出てくる。
するとゆいさんは優しく頭を撫でてくれた。
「これから1人で抱え込まないでちゃんと話すこと! カナちゃんの味方はいっぱいいるんだから。わかった?」
『うん……』
「なっ、大丈夫だっただろ?」
ノア兄が隣に来て言う。
『そうだね』
「よし、じゃあご飯食べよ!」
ゆいさんの言葉でご飯が運ばれてきた。
寝ていただけだが、3日ぶりのご飯はとても美味しく感じる。
食べ終わったあとは私の口から、本当のことを伝えた。
ちなみにこの時はずっとゆいさんのお膝の上でずっと頭を撫でられている。
離してと言っても離してくれなかった。
『まず、私の本当の姿は鳥なの。これまでは魔法で人間の姿に変身してたんだ。ただこの世界では上手く魔力を供給できないみたいで、何とか姿を保とうと頑張ってたら倒れちゃった』
「ん? この世界ということは……」
『私はゆいさんと同じ異世界人、いや、鳥? まあどっちでもいいか。あとノア兄とオリ姉、豊臣軍にお世話になってるイリスも異世界からきたの』
私が鳥だと話した時は驚かなかったのに、異世界人だと言うことを明かすとみんな驚いた。
「そうだったのか……」
「こんな近くに異世界人がいたなんて、驚きですね」
皆口々に感想を言っているが、しばらくすると信玄さんが言った。
「ということは帰る方法を探すんだろ? 俺達も協力するぞ」
「ああ、これも何かの縁。我が上杉軍も協力しよう」
それに続いて謙信さんも言ってくれる。
『ありがとうございます!』
『そういえば上杉軍の皆さんはなぜここに?』
ノア兄の付き添いとして総大将が来るのはさすがに不味くないかと思い、聞いてみた。
「ああ、話したいことがあってな。だが、カナが起きてからの方がいいとノアに言われて待っていた」
『それは……すみませんでした』
どうやら大切な話があったらしい。
3日も待たせてしまったことを本当に申し訳なく思った。
「それで、話とは?」
「何やら徳川の方で戦の準備が進められているという情報が入ってな。ここはお互いのことも考えて同盟を結びたいと思い参った次第だ」
「戦か……」
話が掴めずにいると、ゆいさんが小声で説明してくれた。
「この世界では、徳川軍が1番力を持っているの。とは言っても、織田も豊臣も同じくらいの強さなんだけどね」
『へぇ』
「確かに、ここは同盟を結んだ方が得策かもしれないな」
どうやら交渉は成立したらしい。
すると信玄さんの視線が私に向けられる。
「カナ、少し徳川の様子を探って来てくれないか?」
『任せて!』
「もちろん体力が回復してからでいい」
『もう完全復活したから大丈夫だよ!』
先程ステータスを確認した時には、魔力も∞の表記に戻っていた。
ほかの異変があった魔法も、特に不自由なく使えるようになっている。
人間の姿の時だけ異変が生じていたようだ。
早速次の日、私は徳川の領地に向け飛び立った。
ノアくんは優しく、カナちゃんの頭を撫でる。
「ノアくん、これはどういうこと?」
今でも信じられず、説明を求めた。
「それは本人に直接聞いてください。その方がきっと本心を聞けるはずですから……」
「でも、カナちゃんは鳥に……」
「しっ」
みんな気になることを聞こうとしたが、ノアくんは人差し指を口の前に持っていき、こう言った。
「カナが起きます。今はそっとしてあげたいんです」
「……それもそうだね」
寝息を立てながら寝ているカナちゃん。
今はゆっくり休んでもらうためにも、ノアくんとオリヴィアちゃん、そしてしばを残してそれ以外は退散した。
「もっと、周りを頼っていいのに……」
ノアくんの小さな呟きが聞こたが、聞こえたのは私だけのようだった。
~カナside~
『……ん』
「カナちゃん、起きたの?」
目を覚ますと、隣にはオリ姉としばがいた。
『おはよう、オリ姉、しば』
「おはよう。まる3日も起きないから心配したよ」
『えー!? 3日も? ってこの姿……』
自分の姿は色鮮やかな毛で覆われていた。
それを見て自分がみんなの前で鳥に変身したのを思い出す。
『そっか、私……。みんな怖がってたよね……急に人間が鳥になったりして』
あの時はノア兄の言葉に安心して変身してしまったけど、実際怖がられていたらと思うととても辛い。
ゆいさん達ならきっと……そう思うこともあるが、もしものことが会った時を想像するとやはり変身しなければ良かったと後悔する。
「まあまあ、とりあえずみんなと話してみよう」
そう言ってみんながいるという広間に連れて行かれた。
部屋につくと、武田軍、更には上杉軍の人達が勢揃いしていた。
「カナちゃん! 目が覚めたんだね!」
最初に声をかけてくれたのはゆいさん。
すぐに立ち上がり、私の方に駆け寄ってくる。
私はオリ姉に抱えられたまま話した。
『ゆいさん、怖くないの?』
「怖いって何が?」
『人間の私が、鳥になったこと』
「怖くないよ。だって、カナちゃんはカナちゃんでしょ? 皆さんもそうですよね」
ゆいさんの問いかけに、部屋にいた皆さんが頷いた。
そう言われて気づく。
(そっか、やっぱりこの人達は大丈夫だったんだ……)
『ごめんなさい……皆さんには、こんなに優しくしてもらっているのに、私は……』
信用していなかった。
申し訳なさでいっぱいになり、涙が出てくる。
するとゆいさんは優しく頭を撫でてくれた。
「これから1人で抱え込まないでちゃんと話すこと! カナちゃんの味方はいっぱいいるんだから。わかった?」
『うん……』
「なっ、大丈夫だっただろ?」
ノア兄が隣に来て言う。
『そうだね』
「よし、じゃあご飯食べよ!」
ゆいさんの言葉でご飯が運ばれてきた。
寝ていただけだが、3日ぶりのご飯はとても美味しく感じる。
食べ終わったあとは私の口から、本当のことを伝えた。
ちなみにこの時はずっとゆいさんのお膝の上でずっと頭を撫でられている。
離してと言っても離してくれなかった。
『まず、私の本当の姿は鳥なの。これまでは魔法で人間の姿に変身してたんだ。ただこの世界では上手く魔力を供給できないみたいで、何とか姿を保とうと頑張ってたら倒れちゃった』
「ん? この世界ということは……」
『私はゆいさんと同じ異世界人、いや、鳥? まあどっちでもいいか。あとノア兄とオリ姉、豊臣軍にお世話になってるイリスも異世界からきたの』
私が鳥だと話した時は驚かなかったのに、異世界人だと言うことを明かすとみんな驚いた。
「そうだったのか……」
「こんな近くに異世界人がいたなんて、驚きですね」
皆口々に感想を言っているが、しばらくすると信玄さんが言った。
「ということは帰る方法を探すんだろ? 俺達も協力するぞ」
「ああ、これも何かの縁。我が上杉軍も協力しよう」
それに続いて謙信さんも言ってくれる。
『ありがとうございます!』
『そういえば上杉軍の皆さんはなぜここに?』
ノア兄の付き添いとして総大将が来るのはさすがに不味くないかと思い、聞いてみた。
「ああ、話したいことがあってな。だが、カナが起きてからの方がいいとノアに言われて待っていた」
『それは……すみませんでした』
どうやら大切な話があったらしい。
3日も待たせてしまったことを本当に申し訳なく思った。
「それで、話とは?」
「何やら徳川の方で戦の準備が進められているという情報が入ってな。ここはお互いのことも考えて同盟を結びたいと思い参った次第だ」
「戦か……」
話が掴めずにいると、ゆいさんが小声で説明してくれた。
「この世界では、徳川軍が1番力を持っているの。とは言っても、織田も豊臣も同じくらいの強さなんだけどね」
『へぇ』
「確かに、ここは同盟を結んだ方が得策かもしれないな」
どうやら交渉は成立したらしい。
すると信玄さんの視線が私に向けられる。
「カナ、少し徳川の様子を探って来てくれないか?」
『任せて!』
「もちろん体力が回復してからでいい」
『もう完全復活したから大丈夫だよ!』
先程ステータスを確認した時には、魔力も∞の表記に戻っていた。
ほかの異変があった魔法も、特に不自由なく使えるようになっている。
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早速次の日、私は徳川の領地に向け飛び立った。
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