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第十話 あっという間に
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「お兄さん達はギルドから来たんですか? それともハリーさんのお使い?」
「たまたま通りかかった冒険者だよ」
待っている間少し話をするが、どうやらシラを切るつもりらしい。
敵意はないようだから安心していいだろう。
「そうですか」
「今は何をしているんだ?」
「この洞窟内の酸素をなくしているところです」
「サンソ?」
「あー、要するに息ができなくなるように塞いでいるんです。そうしたら苦しくなって倒れるので」
「 へえ、あんた面白いことするな」
しばらくして、反応が全て黄色になった。
私は入口の塞いでいる岩を魔法で粉々にする。
「黄色の状態がどのレベルなのか……。様子を見てきますね」
「まて、俺たちも行く」
「では一緒に」
今度は4人で洞窟に入った。
中で倒れている盗賊を見つける。
どうやら意識を失っているが、死んではないようだ。
「うん、やっぱり完璧だ。あとはこの人たちを衛兵に引き渡さないと」
「それなら俺に任せてくれ」
そう言って何かを取り出す。
それはただの石のように見えたが、魔力を流すと電話みたいに声が聞こえてきた。
「馬車を持ってきてくれるそうだ」
「それは魔道具ですか?」
「ああそうだよ、初めて見るのか?」
「はい、いや~面白そうですね」
連絡手段がない私からしたらとても興味深い。
まあ、連絡する相手もいないが。
『連絡なら魔法でできるぞ』
「えっ、じゃあなんで魔道具があるの?」
『普通のやつが魔法を使おうとするとまず魔力切れで倒れるな』
「へぇー」
『魔法の範囲が広がるほど消費魔力量が多い。だから空間移動も距離によっては使えないこともある。覚えておけ』
「うん」
するとお兄さん達が不思議そうにこちらを見つめているのに気づいた。
「ん? どうかしたんですか?」
「あっいや、その従魔と話していたのかい?」
「はい」
「へぇ、すごいな」
従魔と話すことのどこにすごい要素があるのか。
そう思っていると説明してくれた。
「従魔とは、意思疎通はできるけど、言葉は交わせないんだ。その従魔はとても知能が高いんだね」
『何せ俺はフェニックスだからな!』
「ただの鳥なんですけどね、悪知恵だけは働くようです」
『それはすずだけだ!』
「いやいやダイスもでしょ?!」
「あはは、君たち面白いね」
盗賊たちが逃げないように見張りながら、そんな話をしていると、呼んでいた馬車が到着した。
馬車は格子状になっていて、どうやら犯罪者専用の馬車なのだそうだ。
「あとはこちらにお任せ下さい」
「はい、よろしくお願いします。一応意識を失っていますが、全員ではないかもしれません。盗賊の攻撃に気をつけてください」
「はい」
それから衛兵に任せて私と3人は街へ戻った。
街に入った時に3人と別れた私は早速ギルドに来ていた。
既に日は沈みかけていて、空は夕焼け色に染まっている。
ギルドもちょうどラッシュの時間帯で、カウンターには行列ができていた。
「依頼完了の報告に来ました」
長い列に並ぶこと数分。
ようやく自分の出番になる。
カウンターにいたのは最初にお世話になったお姉さんだった。
「リンさん、もう完了されたのですか?」
「はい」
「す、すごいですね。ではカードをお預かりします。また伯爵がお待ちですので、お部屋に案内しますね」
ずっとギルドにいたのだろうか。
まあ、直接報告できるならありがたいが。
ちなみにお姉さんはミリーというらしい。
移動しながら軽く自己紹介をしてくれた。
「失礼します」
「おお、思ったより早かったね」
またハリーさんとデクスターさんがいた。
視線で着席を促される。
朝のように向かい合うように座った。
「盗賊は2グループとも倒して、衛兵に任せました」
盗賊が言っていたとおり手を組んだのは本当のようで、気配探知で探ったが他の気配はなかった。
「報告は衛兵から聞いている」
「これで終わりですか?」
「ああ、どうもありがとう。まさかこんな簡単に捕まえてしまうとは……。やっぱり君に頼んで良かったよ」
「お役に立てて良かったです」
「さて、これが報酬の白金貨9枚と、金貨100枚だ」
そう言って渡される金貨の山。
白金貨9枚と金貨100枚だと、日本円にして価値は一千万円になる。
「え、金貨100枚……白金貨?」
「ああ、使いにくいと思ってわけたが、もしかして少なかったか?」
「いやいや、むしろ盗賊を捕まえただけでこんなに貰っていいのでしょうか?」
最初から金目的で受けた依頼だが、いざ大量の報酬を渡されると戸惑ってしまった。
「実はかなり昔から問題の盗賊たちだったんだよ。しかしなかなかに手強くて捕まえられなかったんだ」
「へ、へぇ……」
「そんな奴らをあっさり捕まえることができて嬉しいよ。まさに君は街の救世主だね」
「いや~、まさかそんな厄介な奴らだったなんて……」
盗賊たちの警戒心の薄さといい、あんな奴らに手こずるとは思えなかったが、どうやら違うらしい。
「とりあえず、報酬は事前から設定していたものだ。遠慮なく受け取って欲しい」
そう言われてしまえば断る理由がない。
遠慮なく、全ての報酬を受け取った。
「さて、実はもう1つ言いたいことがあってね」
「また依頼ですか?」
「いや、今後のことなんだけど」
ハリーさんは改まって言った。
「私の護衛として働かないか?」
「……護衛、ですか?」
「ああ、もしくはこの街の衛兵としてでもいい。ここは隣国と接している街でね、荒れくれ者が多い街なんだ。だから是非とも君の能力を活かして欲しいと思ったんだが、どうだろうか」
これから冒険者として生活していこうと考えていたため、突然の話に少し困惑する。
「……少し考えさせて貰ってもいいですか?」
「ああ、いつでも返事は待っているよ」
「はい、では失礼します。あっ、あの3人にありがとうございましたと伝えておいてください」
そう言って部屋を出た。
~その他side~
リンが部屋を出ていったのを確認すると、ハリーは普段見せないような笑いを見せた。
「はははは、いや~面白い。やはりつけていたのを気づかれていたか」
「あんな実力があるのに、よく今まで名前が上がらなかったな」
「そうだね、やはりただの冒険者としておくのには惜しい」
「俺からしたら強いやつは大歓迎だがな」
「逃がすつもりは無いよ。彼女の扱いはわかってきた」
小さい頃から一緒にいた幼なじみの不敵な笑みにデクスターは顔を引き攣らせた。
(小さな頃から天才と言われ、実力で平民から伯爵家まで上り詰めた男。おそらくまだまだこの男の功績は止まらないだろう)
「敵に回すようなことはするなよ」
彼女がこの天才とどう渡り合うか、楽しみだ。
「たまたま通りかかった冒険者だよ」
待っている間少し話をするが、どうやらシラを切るつもりらしい。
敵意はないようだから安心していいだろう。
「そうですか」
「今は何をしているんだ?」
「この洞窟内の酸素をなくしているところです」
「サンソ?」
「あー、要するに息ができなくなるように塞いでいるんです。そうしたら苦しくなって倒れるので」
「 へえ、あんた面白いことするな」
しばらくして、反応が全て黄色になった。
私は入口の塞いでいる岩を魔法で粉々にする。
「黄色の状態がどのレベルなのか……。様子を見てきますね」
「まて、俺たちも行く」
「では一緒に」
今度は4人で洞窟に入った。
中で倒れている盗賊を見つける。
どうやら意識を失っているが、死んではないようだ。
「うん、やっぱり完璧だ。あとはこの人たちを衛兵に引き渡さないと」
「それなら俺に任せてくれ」
そう言って何かを取り出す。
それはただの石のように見えたが、魔力を流すと電話みたいに声が聞こえてきた。
「馬車を持ってきてくれるそうだ」
「それは魔道具ですか?」
「ああそうだよ、初めて見るのか?」
「はい、いや~面白そうですね」
連絡手段がない私からしたらとても興味深い。
まあ、連絡する相手もいないが。
『連絡なら魔法でできるぞ』
「えっ、じゃあなんで魔道具があるの?」
『普通のやつが魔法を使おうとするとまず魔力切れで倒れるな』
「へぇー」
『魔法の範囲が広がるほど消費魔力量が多い。だから空間移動も距離によっては使えないこともある。覚えておけ』
「うん」
するとお兄さん達が不思議そうにこちらを見つめているのに気づいた。
「ん? どうかしたんですか?」
「あっいや、その従魔と話していたのかい?」
「はい」
「へぇ、すごいな」
従魔と話すことのどこにすごい要素があるのか。
そう思っていると説明してくれた。
「従魔とは、意思疎通はできるけど、言葉は交わせないんだ。その従魔はとても知能が高いんだね」
『何せ俺はフェニックスだからな!』
「ただの鳥なんですけどね、悪知恵だけは働くようです」
『それはすずだけだ!』
「いやいやダイスもでしょ?!」
「あはは、君たち面白いね」
盗賊たちが逃げないように見張りながら、そんな話をしていると、呼んでいた馬車が到着した。
馬車は格子状になっていて、どうやら犯罪者専用の馬車なのだそうだ。
「あとはこちらにお任せ下さい」
「はい、よろしくお願いします。一応意識を失っていますが、全員ではないかもしれません。盗賊の攻撃に気をつけてください」
「はい」
それから衛兵に任せて私と3人は街へ戻った。
街に入った時に3人と別れた私は早速ギルドに来ていた。
既に日は沈みかけていて、空は夕焼け色に染まっている。
ギルドもちょうどラッシュの時間帯で、カウンターには行列ができていた。
「依頼完了の報告に来ました」
長い列に並ぶこと数分。
ようやく自分の出番になる。
カウンターにいたのは最初にお世話になったお姉さんだった。
「リンさん、もう完了されたのですか?」
「はい」
「す、すごいですね。ではカードをお預かりします。また伯爵がお待ちですので、お部屋に案内しますね」
ずっとギルドにいたのだろうか。
まあ、直接報告できるならありがたいが。
ちなみにお姉さんはミリーというらしい。
移動しながら軽く自己紹介をしてくれた。
「失礼します」
「おお、思ったより早かったね」
またハリーさんとデクスターさんがいた。
視線で着席を促される。
朝のように向かい合うように座った。
「盗賊は2グループとも倒して、衛兵に任せました」
盗賊が言っていたとおり手を組んだのは本当のようで、気配探知で探ったが他の気配はなかった。
「報告は衛兵から聞いている」
「これで終わりですか?」
「ああ、どうもありがとう。まさかこんな簡単に捕まえてしまうとは……。やっぱり君に頼んで良かったよ」
「お役に立てて良かったです」
「さて、これが報酬の白金貨9枚と、金貨100枚だ」
そう言って渡される金貨の山。
白金貨9枚と金貨100枚だと、日本円にして価値は一千万円になる。
「え、金貨100枚……白金貨?」
「ああ、使いにくいと思ってわけたが、もしかして少なかったか?」
「いやいや、むしろ盗賊を捕まえただけでこんなに貰っていいのでしょうか?」
最初から金目的で受けた依頼だが、いざ大量の報酬を渡されると戸惑ってしまった。
「実はかなり昔から問題の盗賊たちだったんだよ。しかしなかなかに手強くて捕まえられなかったんだ」
「へ、へぇ……」
「そんな奴らをあっさり捕まえることができて嬉しいよ。まさに君は街の救世主だね」
「いや~、まさかそんな厄介な奴らだったなんて……」
盗賊たちの警戒心の薄さといい、あんな奴らに手こずるとは思えなかったが、どうやら違うらしい。
「とりあえず、報酬は事前から設定していたものだ。遠慮なく受け取って欲しい」
そう言われてしまえば断る理由がない。
遠慮なく、全ての報酬を受け取った。
「さて、実はもう1つ言いたいことがあってね」
「また依頼ですか?」
「いや、今後のことなんだけど」
ハリーさんは改まって言った。
「私の護衛として働かないか?」
「……護衛、ですか?」
「ああ、もしくはこの街の衛兵としてでもいい。ここは隣国と接している街でね、荒れくれ者が多い街なんだ。だから是非とも君の能力を活かして欲しいと思ったんだが、どうだろうか」
これから冒険者として生活していこうと考えていたため、突然の話に少し困惑する。
「……少し考えさせて貰ってもいいですか?」
「ああ、いつでも返事は待っているよ」
「はい、では失礼します。あっ、あの3人にありがとうございましたと伝えておいてください」
そう言って部屋を出た。
~その他side~
リンが部屋を出ていったのを確認すると、ハリーは普段見せないような笑いを見せた。
「はははは、いや~面白い。やはりつけていたのを気づかれていたか」
「あんな実力があるのに、よく今まで名前が上がらなかったな」
「そうだね、やはりただの冒険者としておくのには惜しい」
「俺からしたら強いやつは大歓迎だがな」
「逃がすつもりは無いよ。彼女の扱いはわかってきた」
小さい頃から一緒にいた幼なじみの不敵な笑みにデクスターは顔を引き攣らせた。
(小さな頃から天才と言われ、実力で平民から伯爵家まで上り詰めた男。おそらくまだまだこの男の功績は止まらないだろう)
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