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7話
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「ありがとう」
倒れているくまに近づくとゆっくり体を起こしながらそう言われる。
「大丈夫?」
「うん、お姉さんが助けてくれたから。
でも不思議だね、僕人間と話せるようになったんだ」
「多分それは私だけだと思うよ。
現に、私の友達はポカンとしてるから」
そう言いながら後ろを見ると、口を開けたまま動かない親友が立っていた。
「あい、大丈夫? だと思うけど、動物と話してんの?」
「そうだよ」
しばらくの間沈黙が流れる。
「えええええええぇぇぇぇぇぇ」
いやまて、長すぎだよえが。
「そんなに驚くこと?」
「そりゃそうだよ!
はぁーーー、なに、あいはこの世界に来てちょー強くなったってわけ?」
長いため息の後、とりあえず納得したのだろうか。
大雑把にまとめて、頭を抑えながらあいに聞く。
「まっ、そゆことー。
ね?この人あなたと話せないでしょ」
「本当だ。
お姉さんはすごいんだねぇ」
「それで、どうして暴れていたの?」
それからゆっくりと話し始めた。
まず、くまが大怪我をして、死ぬ間際だったこと。
そしてそこに知らない人が現れて、助けてあげると言われたこと。
まだ死にたくないと思ったくまは助けてと言ってしまい、それから急に力が湧いてきて体が勝手に動いたこと。
自分の意思では止めることができず、何か暗いところに落ちていくような感覚に陥り、最後の頼みであいに話しかけたこと。
「その大怪我したところは大丈夫なの?」
「うん、力を貰った時に治ったよ」
そしてくまは頭を下げる。
「ごめんなさい。
僕がよく考えずに行動しちゃったから、森も人間も動物も、たくさん傷つけた」
しゅん、という効果音が聞こえてくるような感じで、とてもわかりやすく落ち込んでいた。
「誰だって、死にたくないと思うことはあるよ。
あなたが悪いんじゃない。
1番悪いのは弱っているあなたに近づいたやつ。
それに、森は私が直したから大丈夫!!」
あいの言葉を聞いて安心したくまは涙を流しながら笑う。
「本当にありがとう」
そしてあいは立ち上がった。
「それじゃあ私は行くね」
「お姉さん、名前なんて言うの?」
「あい、加藤あいだよ。
元気でね、くまさん」
──────────
くまと別れたあいは、あやか達と合流する。
そこには最初に襲われていた3人の子供たちも一緒にいた。
「お姉さん大丈夫?」
「おー、大丈夫だよ。
心配かけちゃったかな?」
1番上の男の子はルーク、2番目の男の子はルート、1番小さな女の子はルーナというらしい。
少し会話するだけで懐いてくれた。
「とりあえず、この子達を家まで送ろう」
倒れているくまに近づくとゆっくり体を起こしながらそう言われる。
「大丈夫?」
「うん、お姉さんが助けてくれたから。
でも不思議だね、僕人間と話せるようになったんだ」
「多分それは私だけだと思うよ。
現に、私の友達はポカンとしてるから」
そう言いながら後ろを見ると、口を開けたまま動かない親友が立っていた。
「あい、大丈夫? だと思うけど、動物と話してんの?」
「そうだよ」
しばらくの間沈黙が流れる。
「えええええええぇぇぇぇぇぇ」
いやまて、長すぎだよえが。
「そんなに驚くこと?」
「そりゃそうだよ!
はぁーーー、なに、あいはこの世界に来てちょー強くなったってわけ?」
長いため息の後、とりあえず納得したのだろうか。
大雑把にまとめて、頭を抑えながらあいに聞く。
「まっ、そゆことー。
ね?この人あなたと話せないでしょ」
「本当だ。
お姉さんはすごいんだねぇ」
「それで、どうして暴れていたの?」
それからゆっくりと話し始めた。
まず、くまが大怪我をして、死ぬ間際だったこと。
そしてそこに知らない人が現れて、助けてあげると言われたこと。
まだ死にたくないと思ったくまは助けてと言ってしまい、それから急に力が湧いてきて体が勝手に動いたこと。
自分の意思では止めることができず、何か暗いところに落ちていくような感覚に陥り、最後の頼みであいに話しかけたこと。
「その大怪我したところは大丈夫なの?」
「うん、力を貰った時に治ったよ」
そしてくまは頭を下げる。
「ごめんなさい。
僕がよく考えずに行動しちゃったから、森も人間も動物も、たくさん傷つけた」
しゅん、という効果音が聞こえてくるような感じで、とてもわかりやすく落ち込んでいた。
「誰だって、死にたくないと思うことはあるよ。
あなたが悪いんじゃない。
1番悪いのは弱っているあなたに近づいたやつ。
それに、森は私が直したから大丈夫!!」
あいの言葉を聞いて安心したくまは涙を流しながら笑う。
「本当にありがとう」
そしてあいは立ち上がった。
「それじゃあ私は行くね」
「お姉さん、名前なんて言うの?」
「あい、加藤あいだよ。
元気でね、くまさん」
──────────
くまと別れたあいは、あやか達と合流する。
そこには最初に襲われていた3人の子供たちも一緒にいた。
「お姉さん大丈夫?」
「おー、大丈夫だよ。
心配かけちゃったかな?」
1番上の男の子はルーク、2番目の男の子はルート、1番小さな女の子はルーナというらしい。
少し会話するだけで懐いてくれた。
「とりあえず、この子達を家まで送ろう」
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