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アンドレ様の私室へと向かう。
昨夜は「離縁してくださいませ」と言うつもりで歩いた廊下。
今度はアンドレ様と別れたくなくて向かっているなんて。
まだ一日も経っていないというのに、コロコロ変わるものだ。
一度、自分の私室へ戻り身支度を整えようかとも思ったけれど、
一刻も早くアンドレ様に会う方を優先した。
昨夜とは違い、プリメラではなく家令が付き添って向かう。
家令が扉を数度ノックし「アンドレ様」と呼び掛けた。
長い間があったので、室内に居ないのかな?と思った所で、
「………入れ」
と、しゃがれた低い声がした。
アンドレ様、お風邪でも…?と心配になり、家令が扉を開いたと同時に中に入る。
入った瞬間、強いアルコールの匂いに鼻を抑えたくなった。
カーテンが引かれ、照明が落とされた室内は薄暗い。
――――何かあったの?
薄暗い室内を見回して、ソファにだらしなく体を横たえるアンドレ様を見つけた。
そばのテーブルに転がる数本の酒瓶。
愕然とした顔で見つめていると、家令が呆れた様に話しだした。
「おやおや、アンドレ様。貴方様の愛しの奥方様が帰られたというのに…
何ですかその見苦しい姿は。嘆く気もおきませんよ。
酒は一杯だけと申したのに、どこに隠し持ってたのか何本も……全く。」
大きな溜息をこぼす家令。
「それでは、私はこれで失礼します。夫婦の大事なお話です。今度こそしっかりと、
全て曝け出してお話してくださいね。では…失礼しますっ」
トン
と、家令に背中を押された後、扉がバタンと閉められた。
――――えっ!?
振り返ると既に閉まった扉。
「…………イル…イルヴァなのか?」
まだ閉じた扉を見ていたイルヴァは、慌てて掠れた声がした方へ振り返る。
アンドレ様は半身を起こして、こちらを驚愕した顔で見ていた。
「はい、イルヴァです。ただいま戻りました。」
微笑んで答える。
アンドレ様は物凄い勢いで傍に来ると、ぎゅぅぅぅっと抱き締めてきた。
「イルヴァ……イルヴァ!本物…?本物のイルヴァだ!」
「はい、本物の?イルヴァです。どうしたんですかアンドレ様。お酒なんてこんなに飲んで…」
縋り付く様にきつく背中に回された腕を意識しながら、イルヴァもアンドレの背に腕を回した。
宥める様に優しく背を擦った。
「どうしたんですかって…あんな置き手紙を残したイルヴァがいうの?」
アンドレ様は責めるように私に言った。
そう言えば、出る前に手紙を置いて出たのだった。
アンドレ様への感謝から始まり、離縁状を送ってくれればサインはすぐすること。
最後は、お元気で、旦那様。で締めくくった。
「お元気で、旦那様。…元気でいれるものか、イルヴァが居なくなるというのに!」
締め付ける腕の力がさらに増す。
「もう、イルヴァに二度と逢えない気がして……自分の不甲斐なさに心底ウンザリした。探しに行きたかったけど、昨夜のイルヴァの冷たい目を思い出すと怖くなって…。」
少しずつ囁く様になっていくアンドレ様の声に耳を澄ましながら、
イルヴァは「ああ、なんて可愛い人なんだろう。」と場違いな事を考えた。
「それで、お酒に溺れた…ということですね?
アンドレ様ったら……飲みすぎはお体に良くありません。
ましてアンドレ様はまだ十八歳ですよ?成人してるとはいえ、二十歳までは控えて下さい。」
「何故、二十歳…?」
アンドレは縋り付く様に回した腕の力を緩め、そっと腕の中に居るイルヴァを見下ろす。
私の前世ではお酒は二十歳からだ。
こちらの世界では、アンドレ様はもう成人だしお酒を嗜む事に問題はない。
けれど、前世の知識が二十歳までは良くない事が分かっている為、
あまりお酒を飲んで欲しくはない。
「私にもアンドレ様に秘密があるんです。今から全てお話します。
それから、アンドレ様が話したかった秘密も教えて下さい。」
アンドレの胸に頬を寄せ、背に回した腕に力を込めた。
「私は……転生者なんです。アンドレ様」
小さい頃からの事、前世の記憶。アンドレ様に嫁いで幸せを感じた事、その後の悲しみ。
アンドレ様と離縁になっても帰れる場所はないから、王宮に報告することにしたこと。
報告すれば、必ず囲われるであろう事。
今日出掛けたのは、転生者管理室室長に会う為で、もう帰るつもりは無かった事。
帰るつもりは無かったくだりで、アンドレ様は体を震わせていた。
また宥める様に背を撫でながら、囁く。
「でも、アンドレ様を愛しているから、行きの馬車の中で戻る事にしたのです。
室長をどう丸め込もうかと考えて王宮に行きました。」
アンドレ様へ語り終える。
全てを聞いて震えは止まった。
「良かった。戻ってきてくれて。イルヴァが転生者であろうとなかろうと、
私の妻はイルヴァ以外を娶るつもりはない。イルヴァだけだ。
王家と争ってでも、イルヴァを守る。
イルヴァ、言うのが遅くなってごめん。愛しているよ……」
「アンドレ……様。私もお慕いしております。愛しています。」
二人ともまた強く抱き締め合う。
互いの鼓動が同じリズムで刻まれるのを感じた。
「次は、情けない私の番だ。全てを話そう。イルヴァが不安に思う事なんて何もない。
私の心の中はいつだってイルヴァだけだ。
それ以外が入る余地も予定もない。私の心は君のものだ。」
そう言ってアンドレ様は全てを語ってくれた。
昨夜は「離縁してくださいませ」と言うつもりで歩いた廊下。
今度はアンドレ様と別れたくなくて向かっているなんて。
まだ一日も経っていないというのに、コロコロ変わるものだ。
一度、自分の私室へ戻り身支度を整えようかとも思ったけれど、
一刻も早くアンドレ様に会う方を優先した。
昨夜とは違い、プリメラではなく家令が付き添って向かう。
家令が扉を数度ノックし「アンドレ様」と呼び掛けた。
長い間があったので、室内に居ないのかな?と思った所で、
「………入れ」
と、しゃがれた低い声がした。
アンドレ様、お風邪でも…?と心配になり、家令が扉を開いたと同時に中に入る。
入った瞬間、強いアルコールの匂いに鼻を抑えたくなった。
カーテンが引かれ、照明が落とされた室内は薄暗い。
――――何かあったの?
薄暗い室内を見回して、ソファにだらしなく体を横たえるアンドレ様を見つけた。
そばのテーブルに転がる数本の酒瓶。
愕然とした顔で見つめていると、家令が呆れた様に話しだした。
「おやおや、アンドレ様。貴方様の愛しの奥方様が帰られたというのに…
何ですかその見苦しい姿は。嘆く気もおきませんよ。
酒は一杯だけと申したのに、どこに隠し持ってたのか何本も……全く。」
大きな溜息をこぼす家令。
「それでは、私はこれで失礼します。夫婦の大事なお話です。今度こそしっかりと、
全て曝け出してお話してくださいね。では…失礼しますっ」
トン
と、家令に背中を押された後、扉がバタンと閉められた。
――――えっ!?
振り返ると既に閉まった扉。
「…………イル…イルヴァなのか?」
まだ閉じた扉を見ていたイルヴァは、慌てて掠れた声がした方へ振り返る。
アンドレ様は半身を起こして、こちらを驚愕した顔で見ていた。
「はい、イルヴァです。ただいま戻りました。」
微笑んで答える。
アンドレ様は物凄い勢いで傍に来ると、ぎゅぅぅぅっと抱き締めてきた。
「イルヴァ……イルヴァ!本物…?本物のイルヴァだ!」
「はい、本物の?イルヴァです。どうしたんですかアンドレ様。お酒なんてこんなに飲んで…」
縋り付く様にきつく背中に回された腕を意識しながら、イルヴァもアンドレの背に腕を回した。
宥める様に優しく背を擦った。
「どうしたんですかって…あんな置き手紙を残したイルヴァがいうの?」
アンドレ様は責めるように私に言った。
そう言えば、出る前に手紙を置いて出たのだった。
アンドレ様への感謝から始まり、離縁状を送ってくれればサインはすぐすること。
最後は、お元気で、旦那様。で締めくくった。
「お元気で、旦那様。…元気でいれるものか、イルヴァが居なくなるというのに!」
締め付ける腕の力がさらに増す。
「もう、イルヴァに二度と逢えない気がして……自分の不甲斐なさに心底ウンザリした。探しに行きたかったけど、昨夜のイルヴァの冷たい目を思い出すと怖くなって…。」
少しずつ囁く様になっていくアンドレ様の声に耳を澄ましながら、
イルヴァは「ああ、なんて可愛い人なんだろう。」と場違いな事を考えた。
「それで、お酒に溺れた…ということですね?
アンドレ様ったら……飲みすぎはお体に良くありません。
ましてアンドレ様はまだ十八歳ですよ?成人してるとはいえ、二十歳までは控えて下さい。」
「何故、二十歳…?」
アンドレは縋り付く様に回した腕の力を緩め、そっと腕の中に居るイルヴァを見下ろす。
私の前世ではお酒は二十歳からだ。
こちらの世界では、アンドレ様はもう成人だしお酒を嗜む事に問題はない。
けれど、前世の知識が二十歳までは良くない事が分かっている為、
あまりお酒を飲んで欲しくはない。
「私にもアンドレ様に秘密があるんです。今から全てお話します。
それから、アンドレ様が話したかった秘密も教えて下さい。」
アンドレの胸に頬を寄せ、背に回した腕に力を込めた。
「私は……転生者なんです。アンドレ様」
小さい頃からの事、前世の記憶。アンドレ様に嫁いで幸せを感じた事、その後の悲しみ。
アンドレ様と離縁になっても帰れる場所はないから、王宮に報告することにしたこと。
報告すれば、必ず囲われるであろう事。
今日出掛けたのは、転生者管理室室長に会う為で、もう帰るつもりは無かった事。
帰るつもりは無かったくだりで、アンドレ様は体を震わせていた。
また宥める様に背を撫でながら、囁く。
「でも、アンドレ様を愛しているから、行きの馬車の中で戻る事にしたのです。
室長をどう丸め込もうかと考えて王宮に行きました。」
アンドレ様へ語り終える。
全てを聞いて震えは止まった。
「良かった。戻ってきてくれて。イルヴァが転生者であろうとなかろうと、
私の妻はイルヴァ以外を娶るつもりはない。イルヴァだけだ。
王家と争ってでも、イルヴァを守る。
イルヴァ、言うのが遅くなってごめん。愛しているよ……」
「アンドレ……様。私もお慕いしております。愛しています。」
二人ともまた強く抱き締め合う。
互いの鼓動が同じリズムで刻まれるのを感じた。
「次は、情けない私の番だ。全てを話そう。イルヴァが不安に思う事なんて何もない。
私の心の中はいつだってイルヴァだけだ。
それ以外が入る余地も予定もない。私の心は君のものだ。」
そう言ってアンドレ様は全てを語ってくれた。
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