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「アンドレ様!このリモっていう果物美味しいですわ!」
イルヴァが喜びに輝く笑顔でアンドレを手招きする。
たくさんの人で賑わう広場。
通りすがる人に自分達の商品を売る為に、商売人の呼び込みの大きな声が行き交う。
様々な露天がずらりと並び、通る人々の目を楽しませる。
カットした果物を入れ物に入れて売る露天の前に、イルヴァとアンドレは居た。
試食に渡されたリモというフルーツを頬張り、とても美味しかったらしくイルヴァはご機嫌だ。
まだ食べていないアンドレにしきりに薦めている。
「そんなに美味しかったなら、イルヴァにあげる。数個購入して夕食のデザートにでも出して貰うか。」
「アンドレ様にも食べて欲しいのです。」
美味しさを共有したい女心が分からないのね!とイルヴァは頬を膨らませる。
――――これなら絶対食べざるを得ないわね。
前世の爪楊枝の様な、木製の細いピックの様な物にリモを突き刺しアンドレの口許に持っていく。
「アンドレ様、あ~ん…」
イルヴァが頬を染め上目遣いで伺う様にフルーツを差し出してくる。
アンドレは思った。イルヴァ可愛い…どうしてくれよう…と。
「あ、あーーん」
アンドレは人前での気恥ずかしさを感じつつ、パクリとリモを頬張った。
果肉は柔らかく果汁の甘さが口の中で広がる。
イルヴァに食べさせて貰ったのも相まって、とても美味しく感じた。
「若い恋人達っていいねぇ…おじちゃんからリモ2個サービスしといたよ!」
「わあ!おじさん有難う!」
「いやいや、随分当てられちまったよ。仲良くなお二人さん」
二人は頬を染め微笑み合う。
平民の様な格好をしているが、どうみたって貴族のお嬢さんとお坊ちゃんって感じの二人。
二人とも、中々見ない様な綺麗な顔をしている。
平民服を着ていても、その容姿と滲み出る気品の様なもので、とても目立っていた。
婚約者同士のお忍びデートだと店主は思った。
手を繋ぎながら色んな露天を見て回る二人。
たくさんの髪飾りやリボンなどの雑貨を扱う露天で、アンドレの瞳と同じ色の髪飾りを買って貰った。
買ったその場で付けて貰い、イルヴァは喜び、花が綻ぶ様に笑った。
周りのチラチラとした視線に気付かないイルヴァは次はどの店にしようかと目線が落ち着かない。
逆にアンドレは周囲の視線にはとっくに気付いて、牽制を込めた視線で男達をジロリと見る。
甘辛いタレを絡めて焼いた肉のいい匂いを嗅ぎつけたアンドレが、串焼きを二本買ってイルヴァに一本渡す。
流石に歩きながら食べるのはと悩むイルヴァの手を引いて、片手は繋いだまま近くの空いてたベンチに腰掛け頬張る。
「美味しい!!」
「ああ…美味しいな。」
タレの味に懐かしさを感じる。
破顔して肉に齧りつくイルヴァを、甘い眼差しで見守るアンドレ。
イルヴァの口の端についた串焼きのタレを指で拭いぺろりと舐める。
口の端を拭った指の行く先を眺めていたイルヴァは、ポカンとした顔をしていた。
「イルヴァの口の端についていたからか、特に美味しく感じる」
「アンドレ様、破廉恥な事をおっしゃらないで!」
ここ最近のアンドレの押しにタジタジのイルヴァ。
今ここに居てイルヴァに甘い眼差しを向けるこの男は、あのアンドレと同一人物かと疑いたくなる。
生き別れた双子の弟とかではないのか?と妄想するくらいガラリと変わった。
あの硬派で堅物で奥手のアンドレは何処に行ったのか。
新生アンドレのたらしスキルに翻弄されている。
アンドレは、あの別離を感じさせた出来事が胸を未だ疼かせている。
イルヴァが戻ってきてくれたあの日に誓ったのだ。言葉や態度を出し惜しみはしないと。
言葉や態度が足りずに誤解を与えた為、二度と誤解されない様に思ったままに行動しているのだ。
「破廉恥とは…?私はもうイルヴァに関しては何も我慢はしない。
態度でも言葉でも、愛しいと思う気持ちを出し惜しみしないつもりだよ。
イルヴァにも、もっと積極的になって欲しいけど、それについては、まだ待てるから大丈夫。
イルヴァはイルヴァのペースで私の気持ちに追いついて欲しい。」
――――私達、離縁するかもしれなかったから、アンドレ様は変わられたのだわ。
あの時、芯かから凍る様な冷たい怒りと、ほろ苦い絶望を味わった。
出し惜しみをしていた訳ではないけれど、私だってアントレ様に急速に惹かれて行く気持ちを伝えなかった。
「出来るなら、こんな人目のある場所では止めて頂きたいですけれど…
もう少し人目がない場所では積極的になれる様努力しますわ。
だって、私もアンドレ様の事をこの世の誰よりも……」
「…誰よりも……?」
「だ、誰よりも…ですね…」
「うん」
「あ、あい……し…」
「あいし?」
「愛しており…ます…わ…」
「ああ!イルヴァ。僕も同じ気持ちだ!愛してる愛してるよ、イルヴァ!」
――――アンドレ様、また僕呼びになってますね…
感情が昂ぶると僕呼びなることで、アンドレ様の喜びようが伝わります。
「………連呼しないで下さいませ……!」
イルヴァは片手に串焼き、片手はアンドレと手を繋いでいるので顔を覆えず俯くしかない。
「ごめん、イルヴァ。恥ずかしがらせた謝罪はするけど、実は悪いとちっとも思っていない。ごめんね。
ああ!何故ここは外なのだろうか。早く家に帰りたい!
――――イルヴァを抱きしめたい。」
「早く食べて帰りましょう、アンドレ様。
私しばらくこの露天市場に足を運べなくなります。」
イルヴァは、傍目にも分かる程に真っ赤な顔で串焼きを口にした。
「早く食べてしまおう。イルヴァのそんな可愛い顔を他の男達に、これ以上見せたくない。」
少しムスッとした顔で串焼きにかぶりつくアンドレ。
実はこのお出掛けは作戦のひとつであった。
カルロッテとの噂を真っ向から否定する為、仲睦まじい姿を色んな場所で見せる。
人の噂は噂で払拭するのが早い。
勿論、公爵家の手の者が積極的に吹聴して回るのだが、目で見た者が増えれば信憑性が増す。
その為のひとつではあるが、二人にとっては楽しいデートの一幕である。
イルヴァが喜びに輝く笑顔でアンドレを手招きする。
たくさんの人で賑わう広場。
通りすがる人に自分達の商品を売る為に、商売人の呼び込みの大きな声が行き交う。
様々な露天がずらりと並び、通る人々の目を楽しませる。
カットした果物を入れ物に入れて売る露天の前に、イルヴァとアンドレは居た。
試食に渡されたリモというフルーツを頬張り、とても美味しかったらしくイルヴァはご機嫌だ。
まだ食べていないアンドレにしきりに薦めている。
「そんなに美味しかったなら、イルヴァにあげる。数個購入して夕食のデザートにでも出して貰うか。」
「アンドレ様にも食べて欲しいのです。」
美味しさを共有したい女心が分からないのね!とイルヴァは頬を膨らませる。
――――これなら絶対食べざるを得ないわね。
前世の爪楊枝の様な、木製の細いピックの様な物にリモを突き刺しアンドレの口許に持っていく。
「アンドレ様、あ~ん…」
イルヴァが頬を染め上目遣いで伺う様にフルーツを差し出してくる。
アンドレは思った。イルヴァ可愛い…どうしてくれよう…と。
「あ、あーーん」
アンドレは人前での気恥ずかしさを感じつつ、パクリとリモを頬張った。
果肉は柔らかく果汁の甘さが口の中で広がる。
イルヴァに食べさせて貰ったのも相まって、とても美味しく感じた。
「若い恋人達っていいねぇ…おじちゃんからリモ2個サービスしといたよ!」
「わあ!おじさん有難う!」
「いやいや、随分当てられちまったよ。仲良くなお二人さん」
二人は頬を染め微笑み合う。
平民の様な格好をしているが、どうみたって貴族のお嬢さんとお坊ちゃんって感じの二人。
二人とも、中々見ない様な綺麗な顔をしている。
平民服を着ていても、その容姿と滲み出る気品の様なもので、とても目立っていた。
婚約者同士のお忍びデートだと店主は思った。
手を繋ぎながら色んな露天を見て回る二人。
たくさんの髪飾りやリボンなどの雑貨を扱う露天で、アンドレの瞳と同じ色の髪飾りを買って貰った。
買ったその場で付けて貰い、イルヴァは喜び、花が綻ぶ様に笑った。
周りのチラチラとした視線に気付かないイルヴァは次はどの店にしようかと目線が落ち着かない。
逆にアンドレは周囲の視線にはとっくに気付いて、牽制を込めた視線で男達をジロリと見る。
甘辛いタレを絡めて焼いた肉のいい匂いを嗅ぎつけたアンドレが、串焼きを二本買ってイルヴァに一本渡す。
流石に歩きながら食べるのはと悩むイルヴァの手を引いて、片手は繋いだまま近くの空いてたベンチに腰掛け頬張る。
「美味しい!!」
「ああ…美味しいな。」
タレの味に懐かしさを感じる。
破顔して肉に齧りつくイルヴァを、甘い眼差しで見守るアンドレ。
イルヴァの口の端についた串焼きのタレを指で拭いぺろりと舐める。
口の端を拭った指の行く先を眺めていたイルヴァは、ポカンとした顔をしていた。
「イルヴァの口の端についていたからか、特に美味しく感じる」
「アンドレ様、破廉恥な事をおっしゃらないで!」
ここ最近のアンドレの押しにタジタジのイルヴァ。
今ここに居てイルヴァに甘い眼差しを向けるこの男は、あのアンドレと同一人物かと疑いたくなる。
生き別れた双子の弟とかではないのか?と妄想するくらいガラリと変わった。
あの硬派で堅物で奥手のアンドレは何処に行ったのか。
新生アンドレのたらしスキルに翻弄されている。
アンドレは、あの別離を感じさせた出来事が胸を未だ疼かせている。
イルヴァが戻ってきてくれたあの日に誓ったのだ。言葉や態度を出し惜しみはしないと。
言葉や態度が足りずに誤解を与えた為、二度と誤解されない様に思ったままに行動しているのだ。
「破廉恥とは…?私はもうイルヴァに関しては何も我慢はしない。
態度でも言葉でも、愛しいと思う気持ちを出し惜しみしないつもりだよ。
イルヴァにも、もっと積極的になって欲しいけど、それについては、まだ待てるから大丈夫。
イルヴァはイルヴァのペースで私の気持ちに追いついて欲しい。」
――――私達、離縁するかもしれなかったから、アンドレ様は変わられたのだわ。
あの時、芯かから凍る様な冷たい怒りと、ほろ苦い絶望を味わった。
出し惜しみをしていた訳ではないけれど、私だってアントレ様に急速に惹かれて行く気持ちを伝えなかった。
「出来るなら、こんな人目のある場所では止めて頂きたいですけれど…
もう少し人目がない場所では積極的になれる様努力しますわ。
だって、私もアンドレ様の事をこの世の誰よりも……」
「…誰よりも……?」
「だ、誰よりも…ですね…」
「うん」
「あ、あい……し…」
「あいし?」
「愛しており…ます…わ…」
「ああ!イルヴァ。僕も同じ気持ちだ!愛してる愛してるよ、イルヴァ!」
――――アンドレ様、また僕呼びになってますね…
感情が昂ぶると僕呼びなることで、アンドレ様の喜びようが伝わります。
「………連呼しないで下さいませ……!」
イルヴァは片手に串焼き、片手はアンドレと手を繋いでいるので顔を覆えず俯くしかない。
「ごめん、イルヴァ。恥ずかしがらせた謝罪はするけど、実は悪いとちっとも思っていない。ごめんね。
ああ!何故ここは外なのだろうか。早く家に帰りたい!
――――イルヴァを抱きしめたい。」
「早く食べて帰りましょう、アンドレ様。
私しばらくこの露天市場に足を運べなくなります。」
イルヴァは、傍目にも分かる程に真っ赤な顔で串焼きを口にした。
「早く食べてしまおう。イルヴァのそんな可愛い顔を他の男達に、これ以上見せたくない。」
少しムスッとした顔で串焼きにかぶりつくアンドレ。
実はこのお出掛けは作戦のひとつであった。
カルロッテとの噂を真っ向から否定する為、仲睦まじい姿を色んな場所で見せる。
人の噂は噂で払拭するのが早い。
勿論、公爵家の手の者が積極的に吹聴して回るのだが、目で見た者が増えれば信憑性が増す。
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