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カルロッテ・ベンヤミンはこうして作られた。4(番外編)
父にアントンに言われた事の全てを打ち明けた。
婚約前に恋人が居るのは良くある事で、複数居る事も無い訳ではない。
「婚約中は外聞が宜しくないから全員と別れて貰って、身辺整理後に正式に婚約する。
しかるべき期間を設けた後、婚姻。
正妻のカルロッテが妊娠出産後にならば、愛人として囲うのだろう。
同じ相手が待っていてくれるかまでは知らないが。貴族相手はそうだと納得出来ない平民なら、
どのみち問題を起こす女なのだから切り捨てる。
どうだ? 問題ないではないか」
何をそんなに嫌がる必要が?と父は言う。
「お父様、アントン様は私には愛人を持たせないって言うのよ。
自分は二人も愛人をお持ちになるというのに。
おまけに愛人の女二人が自分以外の恋人を持つのは構わないって…
私ばかり損な役回りじゃないの!
我慢するのが私だけなんて許せないし耐えられそうもないわ。
そんな殿方と婚約なんてムリよムリ!」
真面目なマルクスの方がまだマシだった。
愛人も恋人も持たずに互いだけの夫婦というのが理想なのだという。
穏やかな人だったから、物足りなかった。
刺激的なアントンに惹かれてしまった私は、マルクスがいうような関係など望めぬ女なのだろう。
だって、同じ人とずーっとなんてつまんない人生だわ。
「カルロッテ、人の気持ちは変わるかもしれないではないか。
お前が一生懸命努力して立派な男爵夫人になれば、アントン殿だって許してくれるかもしれない。」
かもしれないじゃ困るのよ。
私の人生なんだから。
「お父様、アントン様は本当にもういいの。
お姉さまがね、公爵家嫡男の婚約者候補に選ばれるよう取り計らってくれるんですって!
両家の両親同士が懇意にしている関係で相談されたんですって。
私の他に五名いらっしゃるらしいのだけど、負けないわ!
お願いお父様、このお話受けてもいいでしょう?」
伯爵は唸る。
末娘にこういう風に甘えられると弱かった。
そういう所が娘を駄目にしてるのだと分かってはいるのだが。
「取り敢えず、詳細が何も分かっていない。
マルガリータ(長女)に訊いてみないことには検討も出来ないではないか。
手紙を出そう。直接会って話が訊きたい。」
「そうよ! 私も何も訊いていませんでしたわ! どんな方なのかしら…」
カルロッテは夢見るように瞳を潤ませる。
アントンの事などもうどうでもよくなっていた。
後日、長女に婚約者候補を探している相手先の詳細を訊いて、父とカルロッテは驚く。
高位貴族の中でも、特に力のあるヘルグレーン公爵家の嫡男が相手だったからだ。
お相手のアンドレ・ヘルグレーンは見目の良さで有名な子息だった。
見目ばかり注視されるが、能力も高いという話だ。
婚約者候補が既に何名か居るようだ。伯爵家の候補が1名いたのだが愚かな行いをする娘だったようで脱落したのだという。
向こうの方が家格の高かったが、同等でなくともいいとの事で候補に立候補させて頂いた。
カルロッテの方が2~3歳年上なのだが、それくらいは問題無いと公爵夫人に言われホッとしたのだった。
カルロッテはアンドレに夢中になる。
アントンなど足元にすら及ばない、美しい男の子。
優しくて気さくで、話しやすい男の子。
甘い言葉や態度は一切してくれないが、顔を見るだけで胸が高鳴る。
夢中だった。
この子の婚約者に私は絶対になる!と決意した。
他の令嬢は貴族子息の男心というのが分かっていない。
堅苦しい関係ばかりの生活に居て、婚約者候補だというのに同じ態度であれば友人扱いしかされない。
楚々とし過ぎても駄目、慣れ慣れしすぎても駄目、アンドレが望む女の子を演じた。
笑顔で無邪気に、アンドレを立てて会話をする。
するとアンドレも満更ではないのか「次にお会いするのが待ちきれません。」と言ってくれるようになってきた。
婚約者になるのは私よ。
脱落する令嬢達に心の中でほくそ笑んだ。
カルロッテはデビュタントを迎え成人した。
アンドレはまだ成人していない為、夜会には参加出来ず、エスコートはして貰えなかった。
残念に思うも顔には出さない。
明るい笑顔で「成人されたら、たくさんエスコートしてくださいね!楽しみにしていますから。」と話した。
デビュタント後、数回夜会に参加する機会があった。
その夜会の一つで、カルロッテは運命の男と出逢った。
その男の見目はアンドレには叶わないが、過去の男のアントンのように妖艶な男だった。
一国の姫を相手にするように恭しく扱われ、言葉巧みに好意を囁かれる。
慣れぬお酒を勧められ、それを口にするうちに、カルロッテは気が大きくなっていく。
頭がフワフワとし、体が熱いと訴えれば、
「落ち着ける場所を知っています。少しお休みになってから馬車でお戻りになれば宜しい。」
と、休憩室なるものにエスコートされた。
そして、そのまま体の関係を結んでしまった。
一度過ちを犯してしまったカルロッテ。
早朝、横に眠る美しい男を見てカルロッテは青褪める。
お酒の飲み過ぎで痛む頭を押さえながら導き出した答えは、婚約者候補を辞退すればいいだけだとなった。
男は目覚めたのか、カルロッテの体を胸に引き寄せ抱きしめてきた。
額に口付けを受けて頬を染めるカルロッテ。
愛を交わすというのは、何て心地の良いのか。カルロッテは夢中になった。
美しい男と甘い夢の中をたゆううち、カルロッテはどうでもよくなった。
そのままなし崩し的に関係が続く事となる。
婚約前に恋人が居るのは良くある事で、複数居る事も無い訳ではない。
「婚約中は外聞が宜しくないから全員と別れて貰って、身辺整理後に正式に婚約する。
しかるべき期間を設けた後、婚姻。
正妻のカルロッテが妊娠出産後にならば、愛人として囲うのだろう。
同じ相手が待っていてくれるかまでは知らないが。貴族相手はそうだと納得出来ない平民なら、
どのみち問題を起こす女なのだから切り捨てる。
どうだ? 問題ないではないか」
何をそんなに嫌がる必要が?と父は言う。
「お父様、アントン様は私には愛人を持たせないって言うのよ。
自分は二人も愛人をお持ちになるというのに。
おまけに愛人の女二人が自分以外の恋人を持つのは構わないって…
私ばかり損な役回りじゃないの!
我慢するのが私だけなんて許せないし耐えられそうもないわ。
そんな殿方と婚約なんてムリよムリ!」
真面目なマルクスの方がまだマシだった。
愛人も恋人も持たずに互いだけの夫婦というのが理想なのだという。
穏やかな人だったから、物足りなかった。
刺激的なアントンに惹かれてしまった私は、マルクスがいうような関係など望めぬ女なのだろう。
だって、同じ人とずーっとなんてつまんない人生だわ。
「カルロッテ、人の気持ちは変わるかもしれないではないか。
お前が一生懸命努力して立派な男爵夫人になれば、アントン殿だって許してくれるかもしれない。」
かもしれないじゃ困るのよ。
私の人生なんだから。
「お父様、アントン様は本当にもういいの。
お姉さまがね、公爵家嫡男の婚約者候補に選ばれるよう取り計らってくれるんですって!
両家の両親同士が懇意にしている関係で相談されたんですって。
私の他に五名いらっしゃるらしいのだけど、負けないわ!
お願いお父様、このお話受けてもいいでしょう?」
伯爵は唸る。
末娘にこういう風に甘えられると弱かった。
そういう所が娘を駄目にしてるのだと分かってはいるのだが。
「取り敢えず、詳細が何も分かっていない。
マルガリータ(長女)に訊いてみないことには検討も出来ないではないか。
手紙を出そう。直接会って話が訊きたい。」
「そうよ! 私も何も訊いていませんでしたわ! どんな方なのかしら…」
カルロッテは夢見るように瞳を潤ませる。
アントンの事などもうどうでもよくなっていた。
後日、長女に婚約者候補を探している相手先の詳細を訊いて、父とカルロッテは驚く。
高位貴族の中でも、特に力のあるヘルグレーン公爵家の嫡男が相手だったからだ。
お相手のアンドレ・ヘルグレーンは見目の良さで有名な子息だった。
見目ばかり注視されるが、能力も高いという話だ。
婚約者候補が既に何名か居るようだ。伯爵家の候補が1名いたのだが愚かな行いをする娘だったようで脱落したのだという。
向こうの方が家格の高かったが、同等でなくともいいとの事で候補に立候補させて頂いた。
カルロッテの方が2~3歳年上なのだが、それくらいは問題無いと公爵夫人に言われホッとしたのだった。
カルロッテはアンドレに夢中になる。
アントンなど足元にすら及ばない、美しい男の子。
優しくて気さくで、話しやすい男の子。
甘い言葉や態度は一切してくれないが、顔を見るだけで胸が高鳴る。
夢中だった。
この子の婚約者に私は絶対になる!と決意した。
他の令嬢は貴族子息の男心というのが分かっていない。
堅苦しい関係ばかりの生活に居て、婚約者候補だというのに同じ態度であれば友人扱いしかされない。
楚々とし過ぎても駄目、慣れ慣れしすぎても駄目、アンドレが望む女の子を演じた。
笑顔で無邪気に、アンドレを立てて会話をする。
するとアンドレも満更ではないのか「次にお会いするのが待ちきれません。」と言ってくれるようになってきた。
婚約者になるのは私よ。
脱落する令嬢達に心の中でほくそ笑んだ。
カルロッテはデビュタントを迎え成人した。
アンドレはまだ成人していない為、夜会には参加出来ず、エスコートはして貰えなかった。
残念に思うも顔には出さない。
明るい笑顔で「成人されたら、たくさんエスコートしてくださいね!楽しみにしていますから。」と話した。
デビュタント後、数回夜会に参加する機会があった。
その夜会の一つで、カルロッテは運命の男と出逢った。
その男の見目はアンドレには叶わないが、過去の男のアントンのように妖艶な男だった。
一国の姫を相手にするように恭しく扱われ、言葉巧みに好意を囁かれる。
慣れぬお酒を勧められ、それを口にするうちに、カルロッテは気が大きくなっていく。
頭がフワフワとし、体が熱いと訴えれば、
「落ち着ける場所を知っています。少しお休みになってから馬車でお戻りになれば宜しい。」
と、休憩室なるものにエスコートされた。
そして、そのまま体の関係を結んでしまった。
一度過ちを犯してしまったカルロッテ。
早朝、横に眠る美しい男を見てカルロッテは青褪める。
お酒の飲み過ぎで痛む頭を押さえながら導き出した答えは、婚約者候補を辞退すればいいだけだとなった。
男は目覚めたのか、カルロッテの体を胸に引き寄せ抱きしめてきた。
額に口付けを受けて頬を染めるカルロッテ。
愛を交わすというのは、何て心地の良いのか。カルロッテは夢中になった。
美しい男と甘い夢の中をたゆううち、カルロッテはどうでもよくなった。
そのままなし崩し的に関係が続く事となる。
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