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03話
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「今日、陛下にアリアとアルフィアス殿下の婚約解消を申し込んで来る。
陛下にも以前“アルフィアス殿下が100回約束を反故にしましたら婚約解消を了承して頂きたい”と伝えてあるから、
言質は取ってある。断られる事はない。」
朝の光が差し込む朝食の席でお父様が仰った。
清々したと言わんばかりの爽やかな微笑みを浮かべながら、公爵家当主でアリアの父であるランベルトは宣う。
100回もの約束の日を迎えるまでに無駄に消費した年月は2年と少し。
2年もの間、愛娘は蔑ろにされ続けて来たという事だ。
こんなに素晴らしい我が娘が、2年もの間……
王家が是非にと望んだ婚約だったというのに……この仕打ちは赦し難い。
王が第一王子を叱り飛ばしてでも約束を守らせればいいものを、息子1人も御せずに2年。
一国の王の手腕がこんなものでは、この国の未来は暗いな。
こんな国など捨て置いて、隣国へ亡命するというのも……
頭の欠陥が切れそうな程の激しい怒りをランベルトは覚える。
アリアがどうしても100回まで待ちたいなどと必死にお願いされた事を振り切る事が出来ず、
約束の通りにおとなしく我慢していた。
夫が赤黒い魔力をドロドロと垂れ流し始めた事に気付いた妻が諌める。
「ランベルト、魔力が暴走しかけてますわ。
今日で縁の切れる相手の事はもういいではないですか。
しつこい王家の虫に纏わり憑かれた2年だったですけれど、まだアリアは十四才ですわ。
私達の娘はとても素敵に成長しました。
元王太子の婚約者だったからといっても、破棄ではなく何ら傷のない解消ですわ。
アリアのお相手は引く手数多になるでしょう。恐ろしい数が来る事をご覚悟下さいましね。
領地で半年程静かにして、噂が落ち着いた頃にでも、ゆっくりと次のお相手を決めればいい事です。」
妻に長々と語られてる間に冷静になり、ドロドロした怒りが静まったランベルト。
確かに言われてみれば。である。
素晴らしい愛娘には数多の良縁が舞い込むであろう。
王太子妃教育も7割は修得済みな上に、立ち居振る舞いも完璧で気立ても良く、親の欲目を抜きにしてもランベルトの曾祖母似の滅多に見ない美貌の令嬢なのだ。
貴族とか公爵家とか婚約とかのしがらみを脱ぎ捨てて、快適な領地でゆっくり穏やかに過ごして貰い、憶測の噂が落ち着いた頃にでも……
そう思った所で、ある男の顔が浮かびランベルトは急に頭を抱えた。
その時、アリアと第一王子の婚約が結ばれたばかりだったが、その男は言ったのだ。
「とても可能性の低い話ではあるが、世の中に絶対は無いと私は思っている。万が一この婚約が白紙になった場合には…」
と、約束をしていたのだった。
約束も強制的に結ばされたのではあるが。
契約書まで作らされそうになり、それだは断って這々の体で帰国したのだ。
あそこは曾祖母に軒並み傾倒して、おかしいくらい執着していたらしいからな…面倒な相手だ。
一方は無関心にほったらかしにされ、もう一方には激しく関心を寄せられる。
0か100ではなく、50くらいの重さの好意で十分なのたが…
人の心とはままならないものである。
目の前の父と母のやり取りを聞きながら、無心を心がけつつ朝食を食べ続けるアリア。
(領地でゆっくりするのも悪くないわ……今は何も考えられないし考えたくない。何もかも忘れたいもの。)
これから元婚約者になる第一王子とは、アリアが十歳でアルフィアスが十一歳の時に婚約を結んだ。
婚約を結んだ当初は、とても良好な関係を築けていたと思う。
元々優秀であるのに努力を怠らず、とてつもない期待を背負っているのに関わらず、その期待以上を上回ろうと頑張る姿に、この人を支えたいと思う程に尊敬していた。
そして王子もアリアを尊重し大切に扱ってくれた。
時折、厳しすぎる王太子教育に情緒不安定になる所もあり、怒ったり泣いたりころころ感情が変わる時もあったけれど。
それでも唇を噛み締めて、アリアが知らないと思って影で努力し頑張っているのを知っていたので、怒ったら宥めるし、泣いたらいつまでも傍にいて慰めていた。
むしろ、素の感情をぶつけられるこの時間は、アリアにとってはとても嬉しかったのだ。
ある日突然態度が変わり、会えなくなった。
淡い好意の様な気持ちをお互いに抱いていた筈が、気付けばアリアはひとりぼっちだった。
陛下にも以前“アルフィアス殿下が100回約束を反故にしましたら婚約解消を了承して頂きたい”と伝えてあるから、
言質は取ってある。断られる事はない。」
朝の光が差し込む朝食の席でお父様が仰った。
清々したと言わんばかりの爽やかな微笑みを浮かべながら、公爵家当主でアリアの父であるランベルトは宣う。
100回もの約束の日を迎えるまでに無駄に消費した年月は2年と少し。
2年もの間、愛娘は蔑ろにされ続けて来たという事だ。
こんなに素晴らしい我が娘が、2年もの間……
王家が是非にと望んだ婚約だったというのに……この仕打ちは赦し難い。
王が第一王子を叱り飛ばしてでも約束を守らせればいいものを、息子1人も御せずに2年。
一国の王の手腕がこんなものでは、この国の未来は暗いな。
こんな国など捨て置いて、隣国へ亡命するというのも……
頭の欠陥が切れそうな程の激しい怒りをランベルトは覚える。
アリアがどうしても100回まで待ちたいなどと必死にお願いされた事を振り切る事が出来ず、
約束の通りにおとなしく我慢していた。
夫が赤黒い魔力をドロドロと垂れ流し始めた事に気付いた妻が諌める。
「ランベルト、魔力が暴走しかけてますわ。
今日で縁の切れる相手の事はもういいではないですか。
しつこい王家の虫に纏わり憑かれた2年だったですけれど、まだアリアは十四才ですわ。
私達の娘はとても素敵に成長しました。
元王太子の婚約者だったからといっても、破棄ではなく何ら傷のない解消ですわ。
アリアのお相手は引く手数多になるでしょう。恐ろしい数が来る事をご覚悟下さいましね。
領地で半年程静かにして、噂が落ち着いた頃にでも、ゆっくりと次のお相手を決めればいい事です。」
妻に長々と語られてる間に冷静になり、ドロドロした怒りが静まったランベルト。
確かに言われてみれば。である。
素晴らしい愛娘には数多の良縁が舞い込むであろう。
王太子妃教育も7割は修得済みな上に、立ち居振る舞いも完璧で気立ても良く、親の欲目を抜きにしてもランベルトの曾祖母似の滅多に見ない美貌の令嬢なのだ。
貴族とか公爵家とか婚約とかのしがらみを脱ぎ捨てて、快適な領地でゆっくり穏やかに過ごして貰い、憶測の噂が落ち着いた頃にでも……
そう思った所で、ある男の顔が浮かびランベルトは急に頭を抱えた。
その時、アリアと第一王子の婚約が結ばれたばかりだったが、その男は言ったのだ。
「とても可能性の低い話ではあるが、世の中に絶対は無いと私は思っている。万が一この婚約が白紙になった場合には…」
と、約束をしていたのだった。
約束も強制的に結ばされたのではあるが。
契約書まで作らされそうになり、それだは断って這々の体で帰国したのだ。
あそこは曾祖母に軒並み傾倒して、おかしいくらい執着していたらしいからな…面倒な相手だ。
一方は無関心にほったらかしにされ、もう一方には激しく関心を寄せられる。
0か100ではなく、50くらいの重さの好意で十分なのたが…
人の心とはままならないものである。
目の前の父と母のやり取りを聞きながら、無心を心がけつつ朝食を食べ続けるアリア。
(領地でゆっくりするのも悪くないわ……今は何も考えられないし考えたくない。何もかも忘れたいもの。)
これから元婚約者になる第一王子とは、アリアが十歳でアルフィアスが十一歳の時に婚約を結んだ。
婚約を結んだ当初は、とても良好な関係を築けていたと思う。
元々優秀であるのに努力を怠らず、とてつもない期待を背負っているのに関わらず、その期待以上を上回ろうと頑張る姿に、この人を支えたいと思う程に尊敬していた。
そして王子もアリアを尊重し大切に扱ってくれた。
時折、厳しすぎる王太子教育に情緒不安定になる所もあり、怒ったり泣いたりころころ感情が変わる時もあったけれど。
それでも唇を噛み締めて、アリアが知らないと思って影で努力し頑張っているのを知っていたので、怒ったら宥めるし、泣いたらいつまでも傍にいて慰めていた。
むしろ、素の感情をぶつけられるこの時間は、アリアにとってはとても嬉しかったのだ。
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