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10話
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―――どうなったらこうなるんですか…。
今、私は殿下と共に我が公爵家の自慢の庭園を案内させられています。
何だか殿下がおかしい。
先程からずっとおかしい。これではまるで……私に好意があるような態度をとり続けている。
◇◇◇◇◇
「ヴァレンタイン公爵家の庭は素晴らしいと聞く。せっかくの機会だ、少し見て周りたいのだが駄目だろうか。」
何の用があって来たの…?と内心首を傾げる内容の談話が一段落すると、殿下がお願いしてきた。
確かに我が公爵家の庭は素晴らしいと評価して頂いていた。
皇都の中心に居を構えるにはそれなりに財力が要る。
皇都は当然の事だが土地が高い、それも中心となれば想像できない程に凄い資金が必要になる。
まして我が家は屋敷というより小さな城のような建物と広い庭を有す程の土地。
となれば、莫大な資産を持っている上位貴族の中でも、さらに上の資産を持っていなければ買う事も難しい。
それをずっと所有し維持管理し続けているという事は、凄い事なのだ。
この広い庭を見れば、ヴァレンタイン公爵家が公爵であるだけで所有出来ているとは誰も思えないのだ。
領地をこれ以上ない程に発展させ続け、商売を繁盛させ続けていなければならないと。
素晴らしいセンスの庭師が管理しているのだから、庭自体も素晴らしい。
けれど、この皇都の中心にあるという事実が信じられない程の庭の広さを見て、その公爵家の力を感じるのが一番大きいのかもしれない。
庭が素晴らしいではなく、公爵家の力が素晴らしいに繋がっているのだ。
だから、お父様は必ず客人を庭に招待してから商談や、貴族間の派閥関係の取引や駆け引きしている気がする。
まずは軽く力を見せて、それでどうする?と物言わぬうちに示してる訳だ。
まぁ皇子には必要ないからお父様も最初に案内してなかったのだろう。
確かにウチは莫大な資産と力を持っているけれど、それでも皇家には叶わないのだから、わざわざ力を見せる意味も無いしね。
「アリア、お前はどうしたい?私が殿下を案内するでも全く問題ないのだから。好きな方を選びなさい。」
えっ? 何の話でしょうか。
つらつらと庭の事を考えていたら、お父様が殿下と話を進めていた。
「アリア嬢、出来れば貴方に案内して欲しい。」
いや、ほんと、誰? そんな表情初めて見ました。
眉を下げてせつなそうに懇願されちゃって……そんな方でしたっけ……?
無言・無表情・氷点下な対応が、私が知っている殿下だったような。
いつ子犬属性に目覚められましたの?
「……私で宜しければ承ります。」
いずれ婚約解消する相手であっても、一応皇族だしまだ婚約者だし、穏便な解消の為にも頑張りましょう。
「アリア嬢、君がいいんだ。」
急に何なのこの方…何か変な物でも食べたんじゃないでしょうね?
止めて下さいよ、食あたりおこすなら我が屋敷から出てからにしてくださいね。
皇子からスッとエスコートする為の手が私に差し伸べられる。
えー…触れ合うのは嫌ですわ。
殿下は忘れてるかもしれませんが、貴方が顔も見たくなくて100回ものドタキャンした相手ですよ私。
礼儀としてエスコートして下さるなら、それこそ非公式なのだから大丈夫です。
躊躇うアリアを皇子は見つめる。
「―――頼む。」
殿下の差し出された手にそっと手を乗せた。
私の見間違いではなかった。
殿下の手は微かに震えていた。
震えている気がしたから、手を乗せたのだ。
殿下は乗せられた私の手をじっと凝視すると、ホッとしたように吐息をこぼした。
(な、なんなの…震えてたなんて。どうしたのかしら…?)
今日の殿下は色々とおかしい。
庭へと案内しながらアリアは心の中で首を傾げ続けた。
今、私は殿下と共に我が公爵家の自慢の庭園を案内させられています。
何だか殿下がおかしい。
先程からずっとおかしい。これではまるで……私に好意があるような態度をとり続けている。
◇◇◇◇◇
「ヴァレンタイン公爵家の庭は素晴らしいと聞く。せっかくの機会だ、少し見て周りたいのだが駄目だろうか。」
何の用があって来たの…?と内心首を傾げる内容の談話が一段落すると、殿下がお願いしてきた。
確かに我が公爵家の庭は素晴らしいと評価して頂いていた。
皇都の中心に居を構えるにはそれなりに財力が要る。
皇都は当然の事だが土地が高い、それも中心となれば想像できない程に凄い資金が必要になる。
まして我が家は屋敷というより小さな城のような建物と広い庭を有す程の土地。
となれば、莫大な資産を持っている上位貴族の中でも、さらに上の資産を持っていなければ買う事も難しい。
それをずっと所有し維持管理し続けているという事は、凄い事なのだ。
この広い庭を見れば、ヴァレンタイン公爵家が公爵であるだけで所有出来ているとは誰も思えないのだ。
領地をこれ以上ない程に発展させ続け、商売を繁盛させ続けていなければならないと。
素晴らしいセンスの庭師が管理しているのだから、庭自体も素晴らしい。
けれど、この皇都の中心にあるという事実が信じられない程の庭の広さを見て、その公爵家の力を感じるのが一番大きいのかもしれない。
庭が素晴らしいではなく、公爵家の力が素晴らしいに繋がっているのだ。
だから、お父様は必ず客人を庭に招待してから商談や、貴族間の派閥関係の取引や駆け引きしている気がする。
まずは軽く力を見せて、それでどうする?と物言わぬうちに示してる訳だ。
まぁ皇子には必要ないからお父様も最初に案内してなかったのだろう。
確かにウチは莫大な資産と力を持っているけれど、それでも皇家には叶わないのだから、わざわざ力を見せる意味も無いしね。
「アリア、お前はどうしたい?私が殿下を案内するでも全く問題ないのだから。好きな方を選びなさい。」
えっ? 何の話でしょうか。
つらつらと庭の事を考えていたら、お父様が殿下と話を進めていた。
「アリア嬢、出来れば貴方に案内して欲しい。」
いや、ほんと、誰? そんな表情初めて見ました。
眉を下げてせつなそうに懇願されちゃって……そんな方でしたっけ……?
無言・無表情・氷点下な対応が、私が知っている殿下だったような。
いつ子犬属性に目覚められましたの?
「……私で宜しければ承ります。」
いずれ婚約解消する相手であっても、一応皇族だしまだ婚約者だし、穏便な解消の為にも頑張りましょう。
「アリア嬢、君がいいんだ。」
急に何なのこの方…何か変な物でも食べたんじゃないでしょうね?
止めて下さいよ、食あたりおこすなら我が屋敷から出てからにしてくださいね。
皇子からスッとエスコートする為の手が私に差し伸べられる。
えー…触れ合うのは嫌ですわ。
殿下は忘れてるかもしれませんが、貴方が顔も見たくなくて100回ものドタキャンした相手ですよ私。
礼儀としてエスコートして下さるなら、それこそ非公式なのだから大丈夫です。
躊躇うアリアを皇子は見つめる。
「―――頼む。」
殿下の差し出された手にそっと手を乗せた。
私の見間違いではなかった。
殿下の手は微かに震えていた。
震えている気がしたから、手を乗せたのだ。
殿下は乗せられた私の手をじっと凝視すると、ホッとしたように吐息をこぼした。
(な、なんなの…震えてたなんて。どうしたのかしら…?)
今日の殿下は色々とおかしい。
庭へと案内しながらアリアは心の中で首を傾げ続けた。
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