25 / 51
24話 落胆
しおりを挟む「一体、これは何事だ?」
「?!」
背後から聞き覚えのある声がして、フユメが振り向くと… 予想通り、そこにはビジネスバックを下げたカイリが立っていた。
<あ! カイリさん!! 良かったぁ~…!>
カイリの顔を見て、ホッ… とフユメは安堵のため息をもらす。
そんなフユメにチラリと視線を寄こしたが… カイリはすぐにヒロキへと視線を移した。
「お帰りなさいカイリさん、お疲れ様です」
「何かあったのか、ヒロキ?」
ヒロキが声をかけると…
カイリはフユメではなく、ヒロキにたずねた。
「センリが初対面の平沢さんに、過剰反応したのです… 偶然近くにいた朝日君が巻き込まれて、それで気分が悪くなって」
「ああ、それは弟が失礼なことをして悪かったね朝日君… それでヒロキは大丈夫なのか?」
他人に対するような態度で、カイリはフユメに雇用主らしい謝罪をし… ヒロキに対しては、心配そうに気ずかう言葉をかけた。
「ええ、僕は慣れているので、大丈夫ですけど…」
ヒロキは気まずそうに、フユメをチラリと見た。
「まったくセンリの奴! 自分の妻が妊娠中だと忘れたのか?! いつまで経っても子供っぽくて困る!」
イライラと怒りをあらわにし、カイリはオフィスのスミで睨み合う、センリと平沢の所へと行く。
「・・・っ?!」
<あれ? カイリさん…?! 僕の心配はしてくれないの?! ええええ~?!>
ホッ… としたのも束の間、カイリの素っ気ない態度に、フユメはショックを受け、大きく落胆することになった。
「参ったな… 妊娠してからカイリさんまで、僕に過保護な態度をとるんだよ、気ずかってくれるのはありがたいけど、妊娠は病気では無いし、もっと気楽にとらえてくれると良いのに…」
困った顔でヒロキはカイリの後ろ姿をながめた。
「・・・・・・」
<確かに、妊娠中のヒロキさんを一番に心配するのは、人として当たり前かもしれないけど… 具合が悪くなったのは僕の方なのに、カイリさんは少しも、婚約者の僕を心配してくれなかった… 何か寂しい!>
こんなことで、すねるなんて子供っぽいと思いつつ、カイリに無視された気がして、フユメは地味に傷ついた。
その後すぐに、カイリは神田グループの関連で、料亭で夕食をとりながらの会合があるらしく、再び会社を出て行った。
つまり今夜はフユメと夕食はとらないという意味だ。
そこでフユメは、再び大きく落胆した。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
130
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる