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21話 夜明け前
夜明け前まで抱かれて、『身体はしずまったから休みたい』 …と懇願して、ようやくナシオは渋々僕を抱くのを止めた。
本当はナシオの身体が心配だったからだけど。
朝になり小鳥たちがチュンチョンと大騒ぎをしながら朝食を探している頃、ナシオがこっそりと僕の隣から出て行く気配がして目覚めた。
「おやよう、ジェレミー… 行って来るよ。 良い子で待っていてくれ」
ヒソヒソと囁かれ頬にキスをされたけど、僕は眠ったフリをしてやり過ごす。
僕をベッドに残してナシオが寝室を出る瞬間に、少しだけまぶたを開きナシオの大きな背中を見送った。
「行ってらっしゃい。 気を付けてね」
ナシオの背中が扉の向こうに消えた瞬間… 急にさびしくなり、僕の胸はギュッと締め付けられて痛んだ。
「こういう気持ちになるのって… 発情期だから? それとも強いアルファに対するオメガの本能が、影響しているのかな? 僕にはわからないよ」
…でもナシオと別れて離れることを考えると辛くて堪らなくなる。
「これまで僕はどうやって生きて来たのかわからないよ… ナシオがいない人生をどう生きれば良いのか? …でも僕にはマウリシオ様という婚約者がいる」
悩みに悩むけど… その悩みをナシオに話すことはできない。
「期待して裏切られるのが怖い。 舞踏会の夜、マウリシオ様にやられたし」
一夜限りの関係のつもりで『初めて』の相手をしたのにと、ナシオに拒絶されたら… それほど辛いことはないから。
…ぜんぜん一夜限りで終わってないけど。
「僕はナシオを………」
深く愛している。
口に出してそのコトを言う気は無い。 …ただ、心の中に秘めておくだけ。
ベッドの中からナシオが出て行った扉をジッと見つめ続けた。
「自分のことは何も語らず僕を抱き続けるナシオの態度は…… もしかすると僕を愛人にして囲う気なのかな? でも僕にはマウリシオ様という婚約者がいると、ナシオも知っているし」
こんなに愛してしまうと、別れるぐらいなら僕は愛人でも良いと思ってしまう。 惨めで情けなくてもそれが僕の本音だ。
「そんな贅沢はできないよね」
僕とマウリシオ様はお互い家のために契約した婚約者だから、僕だけの問題ではないし。
やっぱり… どう考えてもナシオと僕には未来が無い。
「ソレならソレで割り切って、貪れるだけこの愛欲の時間を堪能して……」
異国のことわざに倣って『立つ鳥跡を濁さず』で、ナシオから潔く綺麗に去った方が良い。
だってナシオも僕を『素晴らしい恋人だった』 …と、いつまでも記憶に残してくれるかもしれない。
「たぶん… そうなるだろうなぁ」
ハァ―――ッ…… と大きなため息をついた。
僕はベッドから出て椅子の背に掛けてあったローブを羽織ると、分厚いカーテンを寄せて窓を開き、朝の清らかな空気を胸にいっぱい吸い込んだ。
発情期で熱っぽくなった淫らな身体が少しだけ… 浄化された気がする。
「ずっと… ここに来てから僕は明るい昼間は疲れて眠って、真っ暗な夜しか起きていなかったから… 考え方がだんだん暗くなるのかも?」
今日はせっかく朝のうちに目覚めたから日光浴をしようと、ナシオが出て行った扉から居間へ行きベランダに出た。
発情期の終わりが近づき、僕にそんな余裕ができたから。
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