浮気な婚約者を忘れ、一夜の恋に僕を捧げる

金剛@キット

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36話 過保護

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「ジェレミー… ジェレミー……」


 誰かに名前を呼ばれて、僕はふと… 目が覚めた。

 ゴツゴツとした大きな手のひらにのせられた僕の手に、チュッ… チュッ… と何度もキスが落ちる。


「オレがあんな場所で、ジェレミーを1人にしなければこんなことにはならなかったのに! ああ、クソッ…! オレはなんてマヌケなんだ… 王宮内だからと油断していた!」

 ブツブツと自分を責めるナシオの声が聞こえ、僕は声をかけようとしたが……

「…ナ…シオ…?」
 僕の声はひどくれていて、上手く言葉をつむげない。

 それでもナシオはすぐに僕が目覚めたことに気づき、ハッ…! と息をのみ僕の顔を凝視した。

「…ジェレミー? 気が付いたか?! ああ、良かった… 良かった…!」

 ナシオは僕のほほひたいにキスの雨を落とし、僕の目覚めを喜んだ。

「ナシオ…… どうし… ううっ…! 痛い……」

 手を伸ばして僕もナシオに触れようとしたけれど… 身体じゅうが痛くて、思わずうめき声をらした。

「無理をして動かない方が良い。 無事に目が覚めただけで十分だ… すぐに王宮医を呼ぶから!」

 ナシオは僕の手にキスをして、急いで部屋を出て行ってしまう。

「……あ」
 もっとそばにいて欲しいのに… 行かないでよ、ナシオ!

 そう言いたいのに身体中が痛いし… 特に頭の痛みがひどくて、きそうなほど気分が悪い。

 一ヶ月近くナシオと夜を過ごした、思い出深いベッドに僕は寝かされていて… 眠っている間に、王宮のナシオの部屋に連れ戻されたらしい。




 ナシオが連れて来た王宮医に診察結果を説明された。

「誘拐された時にジェレミー様はあごを強く殴られて倒れ、頭をぶつけて後頭部に大きなこぶができています。 めまいやき気は頭に衝撃を受けたからなのです」

「……っ」
 確かに頭の中がグラグラ揺れているような気がして、ずっと気分が悪い。 これはマウリシオ様に殴られたせいなのか… なるほど。

 ナシオたちに助けられたとたん、僕は気を失ってしまったから…
 長い時間、そのまま僕が目覚めなかったら、頭の中に深刻な損傷を受けた可能性があると王宮医に言われて、ナシオはずっと心配していたらしい。

「それと足のケガは当分の間は痛みますが… しっかりと固定して安静にしていれば、1~2ヶ月ほどで完治するでしょう」

「1~2ヶ月ですか?! ううっ… そんなにかかるの?」
 重傷じゃないか、痛いと思った! …というか、聞いたらもっと痛く感じる!!


 王宮医と僕のやり取りを側で見ていたナシオが、僕の手をギュッ… とにぎりしめ…

「かわいそうに! オレがジェレミーの手足になって、何でもしてやるから心配するな!」

「大… 大丈夫だよ… ナシオ。 そこまでしなくても平気だから…」
「平気だなんて言わないでくれ!」

「でもナシオはいつも忙しいでしょう? これ以上、あなたに迷惑をかけたくないよ」
 こうして近くにいると忘れそうになるけれど… ナシオは王弟殿下なんだよね。
 
 臣籍しんせきに下ったと言っても公爵閣下で、王位継承権を保持していて、それに王国軍の実質的トップだし。
 そんな大物を僕の手足代わりに使うなんて… ナシオ自身が許しても、他の人たちに殺されちゃうよ。 …特に執事のベネディクトさんとかに。


「オレはジェレミーに迷惑かけられたい」
「ナシオ………」


 誘拐から救出されてから、ナシオの強烈きょうれつな過保護が始まった。
 以前、ナシオ自身が言っていたアルファの執着心に火がついたのだろう。

「安静にするから家に帰りたい」
 本当に僕がここにいたら、ナシオがすごく気にしそうだから…

「ダメだ!」

 ナシオにものすごく怖い顔でにらまれた。

「ううっ… でもナシオ… 弟にも会いたいし?」
 舞踏会の夜から1度も弟のハビエルに会っていない。 それに両親と、晩餐ばんさん会でできなかった話の続きがしたい。 …めちゃくちゃ説教されるだろうけど。

「ダメだ! 何かあればすぐに王宮医を呼べるから、ジェレミーは王宮ここで安静にした方が良い。 メアヴェール伯爵夫妻にもそう伝えてある。 それに夜はオレが隣にいてやれる」

「でもナシオ…」
「ダメだ!」

 それから僕は安静を理由に家族との面会を禁止され、頭を打った時の脳の損傷のことも考えて、王宮医の指示で手紙を書くのも禁止された。


 やれやれ……




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