浮気な婚約者を忘れ、一夜の恋に僕を捧げる

金剛@キット

文字の大きさ
38 / 68

37話 朝のひととき

しおりを挟む



 誘拐事件から救出されて1週間ほどでめまいやき気、頭がグラグラすることも無くなった。 

 足の方は王宮医の診断通り、完治するまでもっと時間がかかりそう。


「体調はどうだ?」
「元気だよ。 そろそろ両親と面会しても大丈夫だと思うけど?」
 
 一緒に朝食をとりながらナシオにすごく心配そうな顔でたずねられ、僕は希望を込めて答えた。

「そうか。 …実はなジェレミー、誘拐事件の当日のことを軍本部で調書に取りたいんだ。 大丈夫か?」

 さらりと両親との面会については流されてしまったけど、過保護なナシオにしては大きな1歩をみ出せそうな感じだ。

「ああ、いつまでたってもその話をしないから、被害者の話は必要無いのかと思ってた」
「いや、そういう訳ではないよ」

 僕を過保護にしすぎるナシオにチクッ… と嫌味を言うと、ナシオはしぶい顔でそっぽを向く。

「ふふふっ…」
 今までも気になってケンプトン男爵家のことを、ナシオからいろいろ聞きだそうとした。
 でもナシオは『頭の安静が大事だ! 面倒なことは考えるな』 …と言って一切、話してもらえなかった。

 確かに僕も頭がフラフラして調子が悪かったから、素直に安静にしていたけれど。 ナシオが折れ始めたのなら、これからは遠慮しないで何でも聞きだすつもり。


「それで… 僕はいつ軍の本部に行けば良いの?」
「調子が良ければ、この後オレと一緒に行こう」

 だから今朝は珍しくナシオは、ゆっくりと食事をとっていたのだ。
 僕は食後のお茶を飲みながら答えた。

「それなら、僕は着替えないとね」
「オレも手伝う」
「は? いいよ、ナシオ~ 僕は手伝い無しでも着れるから!」

 王宮医の先生につえを作ってもらったし。 

「ダメだ、1人の時に転んだらどうする気だ?!」

 伯爵家が貧乏になった時、僕の侍従はいなくなったから。 …それ以来、自分のことは自分でするようになった。

「もう… 過保護すぎるよ! 毎朝、僕が1人で着替えるの見ているでしょう?」
 そう言えば、ナシオは王子様なのに侍従がいないよね? 何でだろう?
 王子様でなくとも高位の軍人にはちゃんと1人ずつ、軍から侍従がつけられるとお兄様の手紙に書いてあった気がするけど。

 最近は軍が忙しいらしく、夜明けとともに起きてナシオは、自分で軍服に着替えて出て行く。

 だから僕も一緒に起きて朝食をとり『行ってらっしゃい、気を付けてね』 …と毎朝、食後のお茶を飲みながら見送るのが日課になった。


「とにかく手伝う! オレが選んだ服を着たジェレミーを1番最初に見たいからな」

 ナシオは僕を部屋に閉じ込めているのに、僕の外出用の服や夜会用の礼服まで、大量に買い込んで衣装戸棚ワードローブにかけてある。

「ナシオにそう言われたら受け入れるしかないね」
 外に連れ出してもらえないのに、あんなにお洒落しゃれな服をたくさん見せられたら、本当に目の毒だよ! ナシオったら、やってることがすごく矛盾むじゅんしているんだから。

「そうだ、オレの言うことは受け入れろ!」
「もう… わかったよ」

 ニヤニヤと嬉しそうに笑いながら、ナシオはお茶を飲み終わった僕の唇に熱烈ねつれつなキスをした。
 
 そして僕を椅子から抱っこして衣装戸棚ワードローブがある寝室の奥へ連れて行く。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻本作品(オリジナル)の結末をif(運命の番)ルートに入れ替えて、他サイトでの投稿を始めました。タイトルは「一度目の結婚で愛も希望も失くした僕が、移住先で運命と出逢い、二度目の結婚で愛されるまで」に変えてます。 オリジナルの本編結末は完全なハッピーエンドとはいえないかもしれませんが、「一度目の〜…」は琳が幸せな結婚をするハッピーエンド一択です。

【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話

降魔 鬼灯
BL
 ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。  両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。  しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。  コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。  

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

あなたの家族にしてください

秋月真鳥
BL
 ヒート事故で番ってしまったサイモンとティエリー。  情報部所属のサイモン・ジュネはアルファで、優秀な警察官だ。  闇オークションでオメガが売りに出されるという情報を得たサイモンは、チームの一員としてオークション会場に潜入捜査に行く。  そこで出会った長身で逞しくも美しいオメガ、ティエリー・クルーゾーのヒートにあてられて、サイモンはティエリーと番ってしまう。  サイモンはオメガのフェロモンに強い体質で、強い抑制剤も服用していたし、緊急用の抑制剤も打っていた。  対するティエリーはフェロモンがほとんど感じられないくらいフェロモンの薄いオメガだった。  それなのに、なぜ。  番にしてしまった責任を取ってサイモンはティエリーと結婚する。  一緒に過ごすうちにサイモンはティエリーの物静かで寂しげな様子に惹かれて愛してしまう。  ティエリーの方も誠実で優しいサイモンを愛してしまう。しかし、サイモンは責任感だけで自分と結婚したとティエリーは思い込んで苦悩する。  すれ違う運命の番が家族になるまでの海外ドラマ風オメガバースBLストーリー。 ※奇数話が攻め視点で、偶数話が受け視点です。 ※エブリスタ、ムーンライトノベルズ、ネオページにも掲載しています。

長年の恋に終止符を

mahiro
BL
あの人が大の女好きであることは有名です。 そんな人に恋をしてしまった私は何と哀れなことでしょうか。 男性など眼中になく、女性がいればすぐにでも口説く。 それがあの人のモットーというやつでしょう。 どれだけあの人を思っても、無駄だと分かっていながらなかなか終止符を打てない私についにチャンスがやってきました。 これで終らせることが出来る、そう思っていました。

処理中です...