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37話 朝のひととき
しおりを挟む誘拐事件から救出されて1週間ほどでめまいや吐き気、頭がグラグラすることも無くなった。
足の方は王宮医の診断通り、完治するまでもっと時間がかかりそう。
「体調はどうだ?」
「元気だよ。 そろそろ両親と面会しても大丈夫だと思うけど?」
一緒に朝食をとりながらナシオにすごく心配そうな顔でたずねられ、僕は希望を込めて答えた。
「そうか。 …実はなジェレミー、誘拐事件の当日のことを軍本部で調書に取りたいんだ。 大丈夫か?」
さらりと両親との面会については流されてしまったけど、過保護なナシオにしては大きな1歩を踏み出せそうな感じだ。
「ああ、いつまでたってもその話をしないから、被害者の話は必要無いのかと思ってた」
「いや、そういう訳ではないよ」
僕を過保護にしすぎるナシオにチクッ… と嫌味を言うと、ナシオは渋い顔でそっぽを向く。
「ふふふっ…」
今までも気になってケンプトン男爵家のことを、ナシオからいろいろ聞きだそうとした。
でもナシオは『頭の安静が大事だ! 面倒なことは考えるな』 …と言って一切、話してもらえなかった。
確かに僕も頭がフラフラして調子が悪かったから、素直に安静にしていたけれど。 ナシオが折れ始めたのなら、これからは遠慮しないで何でも聞きだすつもり。
「それで… 僕はいつ軍の本部に行けば良いの?」
「調子が良ければ、この後オレと一緒に行こう」
だから今朝は珍しくナシオは、ゆっくりと食事をとっていたのだ。
僕は食後のお茶を飲みながら答えた。
「それなら、僕は着替えないとね」
「オレも手伝う」
「は? いいよ、ナシオ~ 僕は手伝い無しでも着れるから!」
王宮医の先生に杖を作ってもらったし。
「ダメだ、1人の時に転んだらどうする気だ?!」
伯爵家が貧乏になった時、僕の侍従はいなくなったから。 …それ以来、自分のことは自分でするようになった。
「もう… 過保護すぎるよ! 毎朝、僕が1人で着替えるの見ているでしょう?」
そう言えば、ナシオは王子様なのに侍従がいないよね? 何でだろう?
王子様でなくとも高位の軍人にはちゃんと1人ずつ、軍から侍従がつけられるとお兄様の手紙に書いてあった気がするけど。
最近は軍が忙しいらしく、夜明けとともに起きてナシオは、自分で軍服に着替えて出て行く。
だから僕も一緒に起きて朝食をとり『行ってらっしゃい、気を付けてね』 …と毎朝、食後のお茶を飲みながら見送るのが日課になった。
「とにかく手伝う! オレが選んだ服を着たジェレミーを1番最初に見たいからな」
ナシオは僕を部屋に閉じ込めているのに、僕の外出用の服や夜会用の礼服まで、大量に買い込んで衣装戸棚にかけてある。
「ナシオにそう言われたら受け入れるしかないね」
外に連れ出してもらえないのに、あんなにお洒落な服をたくさん見せられたら、本当に目の毒だよ! ナシオったら、やってることがすごく矛盾しているんだから。
「そうだ、オレの言うことは受け入れろ!」
「もう… わかったよ」
ニヤニヤと嬉しそうに笑いながら、ナシオはお茶を飲み終わった僕の唇に熱烈なキスをした。
そして僕を椅子から抱っこして衣装戸棚がある寝室の奥へ連れて行く。
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