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43話 伯爵家への道
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衝撃的なナシオの告白を聞いた後、僕は動揺から立ち直れないまま… メアヴェール伯爵邸に向かう馬車に乗せられた。
どうやらナシオは最初から、僕の体調が良ければ事情聴取の後でメアヴェール伯爵家に帰宅させるつもりだったらしい。
「お父上に、これまでのコトはすべて話してある」
「…は?」
「さすがに… オレがジェレミーを番にした話をした時は、あまり良い反応ではなかったが… 全部オレが悪いからしかたない」
ナシオは苦笑いを浮かべた。
「お父様もお母様も、僕がナシオの番だと知っているの?」
「ああ」
「僕でさえ、さっき聞いたばかりなのに?!」
「すまない。 伯爵にはなるべく早くケンプトン男爵家と婚約破棄を進めて欲しかったから『オレが欲望を抑えられずジェレミーを番にした』 …と最初に伝えた」
ナシオも婚約破棄をさせるために番にしたとは、僕の両親に言えなかったようだ。
「それはいつの話?」
「ジェレミ―を始めて抱いた… 番にした翌日だ」
「いつもナシオは忙しそうにしていたから、気づかなかったけれど… 僕が疲れてベッドで眠っている間に、僕の両親と会っていたということ?」
「……」
ナシオは黙ってうなずいた。
「もうっ! 何だよソレ!」
つまり… ケンプトン男爵家と縁を切るために、僕が『初めて』の性体験を終えた翌日には、ナシオは早速、計画を進めていたのだ。
この話を知らなかったのは本人の僕だけだった。
「だからお父様は手紙でナシオの指示に従えと伝えて来ただけだったのか!」
あの時は両親が激怒して、僕を王宮まで迎えにくると思っていた。 でも、両親の反応は僕が思っていたより、ずっと薄かった。
それも、今考えると僕がナシオの番になったと、両親はすでに知っていたからなのか!
“ジェレミーは家のことは心配しなくても良いから、イグナシオ様の指示に従いなさい”
「うん。 晩餐会の後でそのことをオレは、ご両親を交えて話し合うつもりだったが…」
「ああ、そうだったね…… 僕はマウリシオ様に誘拐されてしまったから。 でも、その後も時間はいっぱいあったのに、もっと早く話してくれても良かったと思うけど?」
どうりで… マウリシオ様があんな近くにいたのに、フェロモンを感じなかったわけだよ。
ナシオよりもすごくマウリシオ様のフェロモンは弱くて薄いけど… ぜんぜん、感じないのは僕の側に原因があったわけだ!
執務室で話を聞いた衝撃がほんの少し治まると、僕の中に怒りが込みあげてきた。
「すまない、ジェレミー… 反省している」
ナシオは馬車の中で大きな背中を小さく丸めて、僕に何度目かの謝罪をした。
「執務室で僕に説明している時は… 『合理的』 …とか言って、ナシオが反省なんてしているようには見えなかったけど?」
「だから… あの時はオレが立てた最初の計画について話したんだ。 でも今は… オレは本当に傲慢だったと思っている。 だからジェレミーは、もっとオレに怒ってくれて良い」
「……」
そういえば、ナシオは僕に『泣きわめいて罵り責めて良い』 …と言っていた。
自分の執務室で話すナシオは… 普段の大らかで優しい話し方とは違っていた。
わざと冷酷で厳しい言葉を選んで、使って僕に話しているように見えた。
アレは『高位軍人イグナシオ』の話し方なのかな?
「いくらでもジェレミーはオレに怒りをぶつけて良い。 でも忘れないでくれ… いくら怒っていても、これからは番のオレが一生、ジェレミーについて回ると」
「今… ナシオは一生、僕の側にいると言ったの?!」
「当然だ。 番だから… その覚悟があったからオレはジェレミーのうなじを噛んだ」
「何だよ、もう! 卑怯者! 自分勝手すぎるよ!」
裏切られた! すごく傷ついた! …と思っているのに。 こんなふうに言われると僕の心は安堵感でホッ… として嬉しくなっちゃうじゃないか!
僕を愛妾にするつもりで番にしたと言っていたから、わかっていたことだけど。
…でもやっぱり、自分でアレコレ予想するよりも… 好きな人にハッキリと口に出して伝えてもらえて、嬉しいとか思っちゃうし!!
本当にもう!! 僕はすごく怒っているのに――っ!
「フンッ!」
僕は鼻を鳴らし腕組みをしてそっぽを向くと… ナシオのつぶやき声が聞こえた。
「ジェレミーは怒り方まで可愛い…」
「…なっ!!」
ナシオをジロリと睨みつけたけど、カァ~ッ… と顔が熱い。
「それと、ジェレミーが気にしていた金のことは、オレに任せて欲しい。 しっかりメアヴェール伯爵家を支援するから… こう見えてオレは金持ちなんだ」
そりゃそうだ。 だって王弟殿下だしね。
「僕… 僕をお金で黙らせるつもり?!」
そんなこと思ってもいないのに、僕は悔しくてナシオに憎まれ口をたたいてしまうけど、ナシオは少しも気にするようすは見せず。
「いや… ジェレミーを黙らせるなら、ベッドで可愛がって黙らせる方が良い」
「……なっ、なんて破廉恥なことをっ!!」
僕は言葉の代わりに拳をにぎり、向かい側に座るナシオの逞しい太ももをポカポカッ! とたたいた。
「コラ、ジェレミー! 危ないから馬車の中で暴れるな!」
ナシオはひょいっ… と僕を自分の膝に座らせると、長い腕でギュッ… と抱きしめる。
「もうっ! 僕は激怒しているんだ! すごくナシオに怒っているんだから!」
今度はナシオの広い背中に手を回して、バシッ…! バシッ…! とたたいた。
「わかっている。 好きなだけ怒ってくれ」
「もう、ニヤニヤ笑うな! ムカつくから!!」
どれだけ怒っていても、ナシオを愛している僕は… ナシオを嫌うコトなんてできない。
どうやらナシオは最初から、僕の体調が良ければ事情聴取の後でメアヴェール伯爵家に帰宅させるつもりだったらしい。
「お父上に、これまでのコトはすべて話してある」
「…は?」
「さすがに… オレがジェレミーを番にした話をした時は、あまり良い反応ではなかったが… 全部オレが悪いからしかたない」
ナシオは苦笑いを浮かべた。
「お父様もお母様も、僕がナシオの番だと知っているの?」
「ああ」
「僕でさえ、さっき聞いたばかりなのに?!」
「すまない。 伯爵にはなるべく早くケンプトン男爵家と婚約破棄を進めて欲しかったから『オレが欲望を抑えられずジェレミーを番にした』 …と最初に伝えた」
ナシオも婚約破棄をさせるために番にしたとは、僕の両親に言えなかったようだ。
「それはいつの話?」
「ジェレミ―を始めて抱いた… 番にした翌日だ」
「いつもナシオは忙しそうにしていたから、気づかなかったけれど… 僕が疲れてベッドで眠っている間に、僕の両親と会っていたということ?」
「……」
ナシオは黙ってうなずいた。
「もうっ! 何だよソレ!」
つまり… ケンプトン男爵家と縁を切るために、僕が『初めて』の性体験を終えた翌日には、ナシオは早速、計画を進めていたのだ。
この話を知らなかったのは本人の僕だけだった。
「だからお父様は手紙でナシオの指示に従えと伝えて来ただけだったのか!」
あの時は両親が激怒して、僕を王宮まで迎えにくると思っていた。 でも、両親の反応は僕が思っていたより、ずっと薄かった。
それも、今考えると僕がナシオの番になったと、両親はすでに知っていたからなのか!
“ジェレミーは家のことは心配しなくても良いから、イグナシオ様の指示に従いなさい”
「うん。 晩餐会の後でそのことをオレは、ご両親を交えて話し合うつもりだったが…」
「ああ、そうだったね…… 僕はマウリシオ様に誘拐されてしまったから。 でも、その後も時間はいっぱいあったのに、もっと早く話してくれても良かったと思うけど?」
どうりで… マウリシオ様があんな近くにいたのに、フェロモンを感じなかったわけだよ。
ナシオよりもすごくマウリシオ様のフェロモンは弱くて薄いけど… ぜんぜん、感じないのは僕の側に原因があったわけだ!
執務室で話を聞いた衝撃がほんの少し治まると、僕の中に怒りが込みあげてきた。
「すまない、ジェレミー… 反省している」
ナシオは馬車の中で大きな背中を小さく丸めて、僕に何度目かの謝罪をした。
「執務室で僕に説明している時は… 『合理的』 …とか言って、ナシオが反省なんてしているようには見えなかったけど?」
「だから… あの時はオレが立てた最初の計画について話したんだ。 でも今は… オレは本当に傲慢だったと思っている。 だからジェレミーは、もっとオレに怒ってくれて良い」
「……」
そういえば、ナシオは僕に『泣きわめいて罵り責めて良い』 …と言っていた。
自分の執務室で話すナシオは… 普段の大らかで優しい話し方とは違っていた。
わざと冷酷で厳しい言葉を選んで、使って僕に話しているように見えた。
アレは『高位軍人イグナシオ』の話し方なのかな?
「いくらでもジェレミーはオレに怒りをぶつけて良い。 でも忘れないでくれ… いくら怒っていても、これからは番のオレが一生、ジェレミーについて回ると」
「今… ナシオは一生、僕の側にいると言ったの?!」
「当然だ。 番だから… その覚悟があったからオレはジェレミーのうなじを噛んだ」
「何だよ、もう! 卑怯者! 自分勝手すぎるよ!」
裏切られた! すごく傷ついた! …と思っているのに。 こんなふうに言われると僕の心は安堵感でホッ… として嬉しくなっちゃうじゃないか!
僕を愛妾にするつもりで番にしたと言っていたから、わかっていたことだけど。
…でもやっぱり、自分でアレコレ予想するよりも… 好きな人にハッキリと口に出して伝えてもらえて、嬉しいとか思っちゃうし!!
本当にもう!! 僕はすごく怒っているのに――っ!
「フンッ!」
僕は鼻を鳴らし腕組みをしてそっぽを向くと… ナシオのつぶやき声が聞こえた。
「ジェレミーは怒り方まで可愛い…」
「…なっ!!」
ナシオをジロリと睨みつけたけど、カァ~ッ… と顔が熱い。
「それと、ジェレミーが気にしていた金のことは、オレに任せて欲しい。 しっかりメアヴェール伯爵家を支援するから… こう見えてオレは金持ちなんだ」
そりゃそうだ。 だって王弟殿下だしね。
「僕… 僕をお金で黙らせるつもり?!」
そんなこと思ってもいないのに、僕は悔しくてナシオに憎まれ口をたたいてしまうけど、ナシオは少しも気にするようすは見せず。
「いや… ジェレミーを黙らせるなら、ベッドで可愛がって黙らせる方が良い」
「……なっ、なんて破廉恥なことをっ!!」
僕は言葉の代わりに拳をにぎり、向かい側に座るナシオの逞しい太ももをポカポカッ! とたたいた。
「コラ、ジェレミー! 危ないから馬車の中で暴れるな!」
ナシオはひょいっ… と僕を自分の膝に座らせると、長い腕でギュッ… と抱きしめる。
「もうっ! 僕は激怒しているんだ! すごくナシオに怒っているんだから!」
今度はナシオの広い背中に手を回して、バシッ…! バシッ…! とたたいた。
「わかっている。 好きなだけ怒ってくれ」
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どれだけ怒っていても、ナシオを愛している僕は… ナシオを嫌うコトなんてできない。
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