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64話 新婚生活?
波乱に満ちた初夜を終えて… しばらくの間は静かに暮らせるのではないかとホッ… としたのも束の間。
初夜の翌日も僕はナシオにベッドから出してもらえず、明け方まで抱かれてようやく目覚めた時には昼過ぎになっていた。
「ジェレミー様、お食事はどうされますが?」
ニコニコとほほ笑む侍女にたずねられたけど…
「お茶と… 何か軽めのものが良いなぁ…」
「アフタヌーン・ティーのセットでよろしいでしょうか?」
「うん。 それが良い」
絶倫のナシオに昨夜も抱きつぶされてヨレヨレになっていた僕は、しっかり食事をとるだけの気力がわかず… 侍女が用意してくれたお茶とサンドイッチ、スコーンとケーキのセットでお腹を満たすことにした。
「あとナシオがどこにいるかわかる? やっぱり軍本部?」
「いいえ、旦那様は書斎におられます」
「書斎…?」
「はい」
「そう。 ありがとう」
読書でもしているのかなぁ? そう言えば僕は、一度も書斎には入ったことが無いんだよね。
骨折の療養中に暇だから読書をしようと思っても、マウリシオに殴られて頭を打っていたから、脳に負担をかけることは王宮医の先生とナシオに禁止されていた。
だから本がいっぱい置いてある図書室と書斎の扉には、僕が勝手に読書をしないよう、鍵まで掛けられていたんだ。
お腹がいっぱいになり、のんびりとナシオに会いに1階の書斎へ行くと… 予想外の光景が僕の目に飛び込んで来た。
新婚生活をおくる離宮の書斎に、なぜかナシオの部下だと思われる軍服を来た人たちが、忙しそうに出入りしているのを見つけ、僕は首を傾げる。
扉を開けっぱなしにされて広々とした書斎の中をのぞくと、中央に置かれた執務机で山のように積み上げられた書類と、ナシオが格闘しているのを見つけた。
「……!」
僕はてっきり、ナシオは読書でもしてのんびりしているのかと思っていたけれど… お仕事していたの?!
すぐ近くまで僕が行っても気づかないようすだから… 興味津々でしばらく仕事中のナシオを観察した。
眉間にしわを寄せた険しい表情で、ナシオは書類を端から端まで読み、ペンをインク壺に浸す。
大雑把で丁寧とは言い難いが、ナシオらしい力強さのある筆跡でガリガリとサインすると、机の端にある木箱の中にポイッ…! と放り込んでいた。
「ナシオ…… コレはいったい何ごと?!」
まだ新婚2日目だよ? ナシオが忙しい人なのは知っているけど… なんで僕たちの家に、こんなにたくさんの軍人さんが出入りしているの?!
離宮…って、僕たちの愛の巣だよね?
パッ…! と書類から顔を上げて僕の姿を見つけると、ナシオの険しかった表情が一瞬で崩れ、満面の笑みが浮かんだ。
手に持っていた書類とペンを放り出し、ナシオはいそいそと僕の元へやって来てギュウッ… と抱きしめた。
「起きたのかジェレミー!」
「うん」
「オレが隣にいなくて寂しかったか?」
「うん… 新婚だからね。 寂しかった」
僕は意地は張らず素直に答えた。
ナシオがいない広いベッドで、1人で目覚めるのは… 結構、さびしいのだ。 起きなかった僕が悪いんだけど。
「ジェレミー…… オレをこんなに骨抜きに出来るのは、この世でジェレミーだけだ」
「んん……っ…」
蕩けそうな甘い声でナシオは僕の耳もとで囁き、熱烈なキスをした。
僕は両手にある杖の支えで立っているから、抵抗出来ないのをいいことに、ナシオは舌まで使って僕を貪る。
「んん……」
ダメだよ。 こんなに濃いキスされたら発情しちゃうよ!
ナシオから顔を引き離そうとしても、ガッチリ僕のうなじをつかまれて、身動きが取れない。
「んくぅ…っ…」
それどころかキスだけでなく、つかんだ僕のうなじをナシオが指先でヤワヤワと揉むから、スゴク気持ちが良くて…… 発情する一歩手前まで僕の身体は追い詰められた。
カツッ… カツッ… と背後で足音が聞こえ、僕はギョッとする。 誰かが書斎に入って来たのだ。
「んんっ! …ん~っ! んん~っ!!」
誰か来たよ? ねぇナシオ、気づいてよ―――っ!!
「んんんん~~~~~っ! んん~~」
お願いだから離してよ! ナシオ、恥ずかしいよぉ!!
手が使えない僕はナシオに唸り声で抗議した。
チュパッ! と音を立てて、ようやく僕の唇を解放したナシオは、楽しそうに僕を見下ろしニヤリと笑う。
そして僕を揶揄った。
「ふふふっ… ジェレミーは本当に可愛いなぁ… キスだけで、こんなにたくさんフェロモンを出して…」
ボンッ! と僕の顔は、爆発しそうなほど激しく熱くなった。
「//////////////////…っ!!!」
ナシオの恥知らず!! ナシオの意地悪―――っ!!
コホンッ! と背後で咳払いがして、書斎にいるのは僕とナシオだけではないのだと思い出し、振り向くと… 気まずそうに頬を赤くしたアクセル卿が立っていた。
「………っ!!!」
チクショ―――ッ!!!
コホンッ! …ともう一度、アクセル卿は咳払いをしてから話し始めた。
「申し訳ない、ジェレミー君。 もうしばらく我々はお邪魔することになるけれど… あまり気にしないでくれるとありがたい」
「ア… アクセル卿?」
「ジェレミー…」
人前で恥ずかしい揶揄われ方をしてカンカンに怒っていた僕から、ナシオは杖を取り上げて側にいたアクセル卿に渡す。
「…え? わわっ! ナシオ?!」
ヒョイッ… と僕を抱き上げてナシオは執務机に戻り、僕を膝に乗せて椅子に腰をおろした。
「ナ… ナシオ?!」
ううっ… メチャクチャ恥ずかしいよぉ! 人前でナシオの膝に抱っこされるなんて… でも杖を奪われては、1人で動けないし。
執務机のすみで書類の下敷きになっていた新聞を引っぱり出して、ナシオに手渡された。
「今日の新聞だ。 そこに襲撃された時のケガが原因で、オレが軍を退役する記事が掲載されている」
「え?」
新聞を開いて見てみると、一面にナシオの記事が載っていた。
「ケガが原因で退役するオレが、ピンピンしている姿でいつも通り軍本部で仕事をするのはおかしいだろう?」
「ああ! …なるほど。 それでナシオはココでお仕事しているんだ」
「うん。 今やっている仕事は王太子への引継ぎ作業だから… これがひと段落したら、それで終わりだ」
「そうなんだ…」
こんなふうにバリバリと仕事が出来る人が、本当に軍を辞めちゃって大丈夫なのかな? ナシオは辛くないの?
「終わったら、公爵領に新婚旅行にでも行かないか?」
「え? うん」
それまでに僕の足が治って、杖無しで歩けるようになっていれば良いけどね。
「実はジェレミーに1つ頼みがある」
「何?」
「しばらく公爵領の面倒を見て欲しい」
「ああ… エスカデール公爵領?」
「うん。 頼めるか? 義父上にジェレミーはメアヴェール伯爵領の運営を手伝っていたと聞いて、思いついたんだけど… 嫌なら断わってくれて良い」
「もちろん、やるよ!」
だって正式にナシオと結婚出来たら、僕はエスカデール公爵夫人だもの。
仕事をおぼえるなら、何でも早い方が良い。
「陛下に爵位と一緒に賜って以来、オレは軍が忙し過ぎてずっと領地管理人に任せていたんだ… いつまでもそうしてはいられないからな」
「うん、そういうことなら… ナシオの言う通り早めに領地のことを把握しないとね」
「ジェレミー、頼りにしている」
「こちらこそ、ありがとう。 任せてくれて」
僕の実家のように親の教育方針や学園の選択科目で、領地の運営はオメガでもベータの女性でも、本人が望めば学ぶ機会を与えられる。
だが、実際は必要な知識は持っているのに貴族の体面や夫のプライドなどから、妻に任せてくれる家は少ない。
だから僕はナシオの器の大きさに感謝した。
「頼ってくれて、嬉しいよ。 ナシオの期待を裏切らないように頑張るよ!」
「あまり無理はしないでくれよ?」
「ふふふっ… ナシオ、愛してる!」
僕はナシオの首に腕をまわして唇にキスをした。
夢中で舌を使い熱烈に嬉しさを伝えていると… コホンッ! と咳払いが聞こえ、書斎に自分たち以外にアクセル卿がいることを思い出した。
「ご… ごめんな……」
自分の恥知らずな行動を謝罪しようと、アクセル卿をふり向くと……
アクセル卿の隣に護衛兵をつれた王太子殿下が立っていた。
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