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52話 大奥様
ムーズィカ叔母様に買い物は長くかかりそうだと聞き、ヴィトーリアはその前に少し時間を貰う。
食後はいつも眠くなる大奥様は、朝食後の今は普段ならお休みの時間で…
この間に新しい付添人にいくつか、引き続き大奥様にしてもらいたいコトを伝えるのに良いと思ったからだ。
大奥様は我儘な人ではないが、何しろご高齢なので色々と付添人が気遣わなければならないコトが多い。
いつもは夜にするのだが… 眠る前の準備をする油を持って隣室の大奥様の部屋へ向かう。
「夜眠る前の準備? 足が痛まないように? 私も見たいけど良い?」
「本当に熱心ですね、そんな工夫をしているの? 私も見学しても良いですか?」
「大奥様がよろしければ… 私は構いませんが…」
ムーズィカ叔母様と公爵夫人がなぜか興味津々で付いて来た。
大奥様は眠そうにしていたが快く許してくれた。
「ホホホホホッ… 枯れた足をお見せするのは、恥ずかしいけれどねトーリアがしてくれるコレはとても気持ちが良いのですよ」
<私が突然付き添いを辞めてしまったから、きっと、夜になって足が痛くて眠れなかったのではないかな?>
恩の有る大奥様に辛い思いをさせて、ヴィトーリアは罪悪感でいっぱいになる。
ヴィトーリアは元々オージ伯爵家に、小さな子供たちの世話係兼養育係として雇われた。
子供たちが家庭教師を付けられる年頃になると、次の職を見付けなけらばならなくなり…
発情期が頻繁に来る若いオメガが、働き口を見つけるのはとても難しく、そんなヴィトーリアを大奥様は… 次の職が見つかるまで、付き添いにならないかと救いの手を差し伸べてくれたのだ。
それがヴィトーリアにとってどれだけ有り難いことだったか… いくら感謝してもしきれない。
ヴィトーリアが手に油を付けて、足のつま先から膝まで優しく撫で摩るうちに、大奥様はスヤスヤと眠ってしまった。
「あぁ… こうすれば良かったのですね、昨夜はとてもお辛そうでしたから」
新しい付添人は、ヴィトーリアの母親世代の男性オメガで、未亡人だと聞いた。
良く気が付く優しそうな人でヴィトーリアはホッとした。
「コレは気持ち良さそうだね… 私も早速、試してみよう」
「本当に…良いコトを教わりました」
ムーズィカ叔母様と公爵夫人も気に入ったようだ。
余談ではあるが…
オエスチ侯爵夫妻が西方へ旅立った後、公爵邸に招かれた奥方たちの間で、足が綺麗になって気持ちよく眠れると、"オエスチ侯爵夫人流、眠る前の準備" が流行り…
ソレを見ていた公爵夫人は、薬草を混ぜた足用の油を開発して、貴族向けに売ればかなりの利益が出るかも? と…
公爵夫人が新しい商売を始め、アーヴィも妻の考案だからと喜んで投資し、ガッポリ儲けるようになるのはここから更に1年後の話である。
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