59 / 80
57話 放蕩息子の里帰り
しおりを挟む西方地域で一番の大貴族、オエスチ侯爵家。
子供の頃、一度だけ来たコトがある、オエスチ侯爵邸をヴィトーリアは、大人になってからも、ぽか~んと口を開けて眺める。
外観は威風堂々と言った感じの石造りの建物だが…
<一歩中に入ると、豪華絢爛…? ケバケバの派手派手?>
王都で滞在していた、オウロ公爵邸も豪華ではあるが舞踏室や音楽室など華やかな、催しをする部屋は華美な内装で纏めていたが…
それ以外の場所は落ち着いた雰囲気で居心地よい空間が多かったのに比べて…
「ヴィトーリア… 口、閉じとけよ! 蠅が飛び込むぞ」
隣に立つアーヴィが、ヴィトーリアの顎に指を添え…
「う? うん?」
ヴィトーリアの口は、パクンッとアーヴィに閉じられる。
「まぁ! …私の大事な放蕩息子がやっと帰ってきたね!!」
先代のオエスチ侯爵夫人が涙ぐみながら、玄関ホールにやって来て、躊躇なく自分よりずっと大柄な息子を抱きしめる。
ヴィトーリアよりも小柄なオメガの男性だ。
「母上、申し訳ありません」
アーヴィは母の背中をキュッと抱き寄せ、両頬にキスをする。
「分かっていますよ、お父様とアナタが合わないのは… 離れていた方が上手くいくと言うコトもね」
目尻の涙をハンカチで拭いながら、息子から離れる母。
「母上、妻を連れて帰りました」
アーヴィがヴィトーリアに手を差し伸べる。
「奥様…お久しぶりです」
ヴィトーリアはアーヴィの手を取り、先代侯爵夫人に静かにお辞儀をする。
「あらあら! 増々、美しくなって… 瞳の色はお父様譲りだけれど、若い頃のお母様によく似ている」
ハッと顔を上げ、ヴィトーリアは先代侯爵夫人の顔を見た。
「アナタの義母になれてとても嬉しいですよ、私はコリーナが大好きでしたから」
コリーナとはヴィトーリアの亡き母の名前だ。
義父とヴィトーリアの父カルネイロはあまり交流は無かったようだが…
母親同士は年も近く、お互い他の地域から嫁いできたという似た境遇から、自然と仲が良くなったのだそうだ。
「お義母様… 私も嬉しいです」
久しぶりに母の名前を聞いて、嬉しくなった。
義母はヴィトーリアを抱きしめる。
ヴィトーリアもアーヴィと同じように、自分よりも小柄な義母を抱きしめる。
3人は家族用の居間へ移り、お茶を飲みながらお互いの近況を話し合った。
「ふふふふっ…いくら話しても尽きないから、明日にしましょう、2人とも長旅で疲れたでしょう? 少し休みなさいな」
「ありがとうございます、お義母様」
<良かった… お義母様とは仲良くなれそう!>
ホッと胸を撫で下ろすヴィトーリアをアーヴィは見守る。
3
あなたにおすすめの小説
身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される
秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました!
最終17位でした!応援ありがとうございます!
あらすじ
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。
ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。
死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――?
傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
神様は僕に笑ってくれない
一片澪
BL
――高宮 恭一は手料理が食べられない。
それは、幸せだった頃の記憶と直結するからだ。
過去のトラウマから地元を切り捨て、一人で暮らしていた恭一はある日体調を崩し道端でしゃがみ込んだ所を喫茶店のオーナー李壱に助けられる。
その事をきっかけに二人は知り合い、李壱の持つ独特の空気感に恭一はゆっくりと自覚無く惹かれ優しく癒されていく。
初期愛情度は見せていないだけで攻め→→→(←?)受けです。
※元外資系エリート現喫茶店オーナーの口調だけオネェ攻め×過去のトラウマから手料理が食べられなくなったちょっと卑屈な受けの恋から愛になるお話。
※最初だけシリアスぶっていますが必ずハッピーエンドになります。
※基本的に穏やかな流れでゆっくりと進む平和なお話です。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
聖者の愛はお前だけのもの
いちみりヒビキ
BL
スパダリ聖者とツンデレ王子の王道イチャラブファンタジー。
<あらすじ>
ツンデレ王子”ユリウス”の元に、希少な男性聖者”レオンハルト”がやってきた。
ユリウスは、魔法が使えないレオンハルトを偽聖者と罵るが、心の中ではレオンハルトのことが気になって仕方ない。
意地悪なのにとても優しいレオンハルト。そして、圧倒的な拳の破壊力で、数々の難題を解決していく姿に、ユリウスは惹かれ、次第に心を許していく……。
全年齢対象。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる