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58話 愛される身体4 エスパーダside
しおりを挟む幸せそうに食事をするアルセを見つめ、ゴブレットでワインを飲みながら、エスパーダはふと考える。
「・・・・・・」
“番の契り”を交わしてから… 私はアルセを抱き続けた。
発情期に入ったアルセの体調も考えて、今夜も朝まで抱くつもりだが……
アルセを抱いた時から、異常に体調が良い。
父をグラーシア城の地下に幽閉し公爵位を継いでからは、自分の性欲を満たすことを禁じ、おさえることを続けてきたせいか…?
それとも私はアルセを抱きながら、アルセの命を吸い取っているのだろうか?
心臓を串刺しにされて、普通なら致命傷となるケガをしたのに、回復が早かった… 先月腹を刺された時は、ティエーラの竜が傷を修復するまで4日はかかったのに?
アルセに受け入れられ、“番”となった喜びに浮かれて、忘れていたが… ティエーラの竜に支配された私は、アルセから命を吸い取ろうとしたのに… なぜアルセは無事なんだ?!
その前に、私が襲撃犯7人分の命を吸ったからか?!
わからないことだらけだ!!
「あっ! 飲まないと……」
いつの間にか食事を終えていたアルセが、ぽつりとつぶやいた。
「ん?」
考えごとに夢中になっていたエスパーダは、顔を上げてアルセを見ると、パチリッ… と紅玉色の瞳と視線が合う。
「ええっとぉ…」
ぽぅ―――っ… とアルセは頬を染めて、エスパーダから視線をそらした。
席を立とうとして腰がよろけてしまい、アルセはあわててテーブルにつかまり身体を支える。
「…危ない!」
エスパーダもあわてて、ゴブレットをテーブルに置いて立ち上がり、向かい側の席についていたアルセの隣に行き、支えようと細い腰を引きよせた。
ふわりと甘い、オメガの誘惑フェロモンが立ちのぼり… 細い腰を支えるエスパーダに、アルセは身体をあずける。
「すみません… エスパーダ様ぁ… そろそろ、避妊薬を飲まないと…」
フェロモンだけでなく、アルセは視線でもエスパーダを誘惑するよに、潤んだ紅玉色の瞳で見あげた。
「アルセ…?」
本格的な発情期のオメガを抱くのは、アルセが初めてだけど… 強いアルファ用の抑制剤を飲んだ後なのに… 本当にすごいなぁ… とてもこのフェロモンを拒むことは、私には出来そうにない!
ドクンッ… とエスパーダの心臓が跳ね、血が沸騰しそうなほど… いっきに下腹が熱くなり… ジワリと汗が身体じゅうからにじみ出る。
「お願いです、エスパーダ様ぁ…? お腹の中が熱くて、上手く歩けないから… 避妊薬がある寝室まで、僕を連れて行って下さい」
遠回しに、エスパーダを誘うアルセ。
睡眠をじゅうぶんとり、食事もとり… 目の前には、魅力的な番のアルファがいるのだから… 発情期のアルセに我慢しろと言う方が無理な話である。
キスをしようと、エスパーダが身体をかがめると… アルセはキスを受けやすいように、上を向いて顔を傾ける。
「アルセの願いごとは、寝室へ連れて行くだけで良いのか? 他には?」
唇が唇に触れるギリギリで、エスパーダはたずねた。
「僕の熱くなったお腹の中も… 何とかして下さい!」
「熱いのはお腹だけか?」
「エスパーダ様ぁ! っ…! っ…! っ…!」
遠回しに誘うだけでも、精一杯だったアルセは、顔を真っ赤にして、口をパクパクする。
「ははははっ…!」
いけない! あんまりアルセが可愛いから… つい意地悪をしてしまった!
すばやく唇にキスを落とし、エスパーダはサッ… とアルセを抱き上げると、急いで寝室へ向かう。
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