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75話 卒業試験
しおりを挟むアルセは『付いて来なくても大丈夫です』…と言ったのに…
『エスパーダは護衛だと思え!』…と言って、卒業試験を受けるアルセを学園まで送ってくれた。
「まさか、こんな昼間から襲撃されるようなことは無いでしょう?」
「今日はアルセの大切な日だから、私はできるだけ見届けたいのさ」
「ふふふっ… わかりました!」
もちろん… アルセとしては、何かと忙しいエスパーダに気をつかって断ったのだが……。
でも、自分が大切にされてることが、エスパーダからひしひしと伝わってきて、こうして甘やかされるのは、本当はとても… とても… 嬉しかった。
学園内にまで、エスパーダはついて来たそうな顔をしていたが…
(貴族の子息令嬢たちが集まる場所だから、警備の騎士が数人いる)
馬車の中でアルセは、珍しく自分からエスパーダの唇に、チュウーッ… と少し長めのキスをした。
最期にペロリとエスパーダの唇をなめ、キスの仕上げをすると… アルセはニヤリと笑った。
「ふふふっ… 行ってきます、エスパーダ様!」
「ああ、頑張れアルセ!」
「はい!」
久しぶりに学園の制服を着て、アルセは元気よく馬車を下りて、通いなれた学舎へ入る。
たくさんの視線を感じた。
その中には、僕の友人だった者たちの視線もある。
「・・・・・・」
驚いた顔をして… 僕に何か言いたそうだな? やっぱり… 退学したはずの僕が、学園の制服を着てこんなところにいるから、変だと思っているのだろうね? まぁ、そんなこと、僕には関係無いけれど… 今は卒業試験に集中しよう!!
アルセは、道に転がる石ころか、草ぐらいに… 視線を向けて来る者たちに興味を失くしていた。
以前はそういう視線に、救いをもとめたこともあったけれど、彼らは本当に、石ころか草のように… ただ、そこにあるだけの、存在でしか無いのだ。
廊下をまがったところで、視界のすみにコルティナ侯爵家の3男、ジャベと取りまきのメサとノチェの姿があった。
「・・・っ!」
クソッ… まさか、こんな大切な日に、朝からやつらに会うなんて! でも、今日は黙ってやられたりしないからな!! 何かやったら思いっきり、目立つように暴れてやる!!
ジャベたちもアルセに気がついたようだが… 以前のように、絡んでくることは無かった。
アルセはジャベたちも、石ころか草のように無視して… 卒業試験の会場へと入る。
指定された席につき、自分のまわりを見ると、元婚約者リブレの姿があり… アルセの顔に意地悪な笑みが浮かぶ。
リブレの方もアルセに気が付いたらしく、ギョッ… とした顔をするが、気まずそうに下を向く。
「・・・ふっ」
リブレは卒業試験を合格できるのかな? ここで受からなければ、もう1年学園で学ことになるけれど… でも、毎年この卒業試験で合格出来なかった学園生は、ほとんどが退学してしまうらしいし? その前に父親のマンディブラ伯爵が、学園に残ることを許さないかも知れないね?!
僕の記憶では… リブレの成績は、かなり危なかったおぼえがある。
まぁ、僕には関係ないけどね!! それで、恥をかくのはリブレ本人だし!
卒業試験といっても基本的なことばかりで、普通に勉強をしていれば… 不合格になる学園生は、ほとんどいないのだ。
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