竜血公爵はオメガの膝で眠る~たとえ契約結婚でも…

金剛@キット

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77話 油断2

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 グラーシア公爵邸の執務室で、そろそろアルセが帰ってくる頃だと…  エスパーダはソワソワとしながらお茶を飲んでいた。

閣下かっか、少しは落ち着いて下さい… アルセ様を送って学園から帰って来てから、ほとんど仕事が進んでいませんよ?」
 エスパーダの向かいがわのソファーに座った、護衛騎士(と補佐役)のサングレが苦笑を浮かべた。

「ああ、わかっているさ! アルセは優秀だから、この機会を失敗に終わらせることなど無いと… 私だってわかっているが…」

「ふふふっ… まさか閣下かっかが、オメガにここまで動揺させられる日がやって来るとは、思いませんでしたよ?」

「うるさいぞ、サングレ! さぁ、仕事の続きをするぞ!!」
 エスパーダはムッ… としながら、カチャッ…! と乱暴にティーカップを皿の上にのせ、ローテーブルに置いて立ち上がった。

「クククッ… はい! はい!」
 子どもの頃から一緒だったサングレは、幼馴染おさななじみの気安さで、時々エスパーダを揶揄からかうのだ。 



 コンッ!!コンッ!!コンッ!! コンッ!!コンッ!!コンッ!!
 執務室の扉を廊下がわから、あらあらしく誰かがたたいた。

 サングレが扉を開けると… アルセにつけた護衛騎士が青い顔で飛び込んで来る。


「閣下! 申し訳ありません!! アルセ様が行方不明です!!」

「何だと?! どういうことだ?!!」

「はい、閣下!! 我々は学園の前で、馬車を止めてアルセ様を、待っていたのですが… 試験が終わり他の学園生たちが帰っても、アルセ様は来られなくて… 学園の警備騎士や教師たちにも伝えて、協力して学園中を捜索したのですが、見つからないのです!」

「クソッ―――!! やられた!!」
 こんな、グラーシア公爵の私にケンカを売るようなまねをするのは… 恐らくコルティナ侯爵だ!! 王弟殿下にあれだけ警告されたのに…!! 私はアルセを奪われた!! なんてマヌケなんだ私は?!
 だが、アルセは私と“つがいちぎり”を結んでしまっている… コルティナ侯爵がアルセを愛人にすることは不可能だ!

 
 アルファの“つがい”となったオメガの身体は、大きく体質が変化する。
 オメガの誘惑フェロモンが、“番”のアルファしか感じ取れない性質のモノへと変わり… 
 体質が変化したオメガは、“番”となったアルファのフェロモンにしか、反応しなくなる。

 そして“番”以外の体液を受け入れれば、身体が激しい拒絶反応をおこす。
 最悪の場合、死にいたる危険が出てくる。 

 …つまり“番”となったアルセは、エスパーダ以外のアルファを受け入れれば、死ぬかもしれないのだ。
 
「クソッ…!! クソッ…!!」
 愛人にできないアルセを、コルティナ侯爵がどうするかが問題だ!
 私の“番”でなければ、殺される危険は無かったのに… 
 強姦ごうかんでもされたら… アルセは死んでしまうかも知れない!!
 
 エスパーダは執務机のわきに立てかけてあった、自分の剣を取り、腰に巻いてある革製の剣帯ベルトに、すばやく装着する。

「閣下、どうされるのですか?!」

「とりあえず王弟殿下に、こちらの状況を伝えておこう! 私はコルティナ侯爵邸へ行く!」
 もし、侯爵邸にアルセがいれば… ティエーラの竜が反応するだろう! アルセがいるか、いないかぐらいはわかる!!
 
 護衛騎士のサングレは執事を呼び、王弟殿下の元へ使いを出す。


「やはり… この間の襲撃の後で、悪戯いたずらの代償を払わせるべきだったな!」
 
 身体中の血が、ザワザワとさわぎ… 熱くなる。 
 エスパーダはニヤリと笑う。
 金色の瞳を、獲物を狙う獣のように光らせた。


 
 ティエーラの竜が、敵の命を奪えると… 歓喜しているのだ。







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