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20話 別れ
しおりを挟む「アイル… 私と一緒に来て欲しい、私の側に居て欲しい!」
「・・・・・っ!」
パダムに抱きしめられ、茫然とするアイル。
少ない荷物をまとめ終わり、パダムの部屋に挨拶に来たアイルは突然のコトで言葉を失う。
「君を妻にする… 色々と困難なことでもあるが、いざとなれば他国へ行けばいいダケだ!」
「パダム様…」
アイルの胸はいっぱいになり、逞しい胸に頬を寄せ、力強いパダムの心臓の鼓動を聞く。
ドキドキといつもよりずっと、早く脈打っている。
パダムも緊張しているのだ。
「婚約者のブラヌ様は素敵な人です…」
「だが、臆病だ! 怪我を負った私の前で、彼女は倒れ2度と会いには来なかった」
<気の毒に… そんなコトがあったなんて!>
アイルはパダムを見上げると、宥めるように頬を撫でた。
「穏やかで優しい女性なのですよ… 大怪我を見て驚いたのですよ、傷を負ったのが大切な人なら、尚更です」
「アイル! 私は君が良い!!」
「私は…何も出来ません、魔力も無いし、ふしだらな傷物ですから… パダム様のお役に立てるコトは、もう無いのです」
涙声になってしまい、慌てて目を拭い、アイルはパダムから一歩離れた。
「いいや、ある!! 君は私の側に居てくれるダケで良いのだ!」
「パダム様… アナタは王家に連なる方なのでしょう? 伯爵の娘では身分が低過ぎるのです」
瞳の色と兄の話で王族だとは知っていたが、王族の誰なのか、アイルは知らなかった。
「私の母は子爵の娘だ」
「え?」
「父は当時第2王子で、母は父の護衛騎士の任務に就いていた」
<…第2王子?!>
ハッと息を呑みアイルは掌で口を隠す。
「本当に、君は私を知らなかったのだな?」
「はい」
「カチャンの為に貴族社会から距離を置いていたのだから当然か…」
「申し訳ありません…」
「いや、だから私は君を愛したのだ」
アイルは王都の貴婦人たちとは違う。
貴族というより武人であるパダムは、王都の貴族たちにはウンザリしていたのだ。
「・・・・・っ」
アイルは真っ赤になり、言葉を失う。
「父は臣籍に下り、私を身籠った身分の低い母と結婚の約束をしていた… だが王太子が地方の視察中に魔獣に襲われ命を落とし、父が王太子になると、状況は一変した」
「ああ…!」
「そうだ! 私と母は父が王子時代の妾とその子供として扱われ王族とは認められず… 私の立場はカチャンと同じだった」
「ご苦労をされたのですね? お母様と共に…」
慰めるようにアイルはパダムの胸に手を置き、見上げると…
自分の胸に置かれてたアイルの細い手を取りパダムは唇に寄せ、そっとキスをする。
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