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21話 別れ2

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 慰めるようにアイルはパダムの胸に手を置き、見上げると…

 自分の胸に置かれたアイルの細い手を取りパダムは唇に寄せ、そっとキスをする。


 家事で荒れてカサついているが、細く優美な暖かいアイルの手を握り締め、ポツポツと自分のコトを話し始めるパダム。


「母と私は、アンギヌ王国に王妃として嫁いだ、伯母の元へ送られ、使用人として暮らした」

「そんな…っ!使用人だなんて…」

「確かに母は苦労をしたが、わたしはアンギヌの王子たち… 従兄弟たちと仲良くなって、彼らの側近候補として教育されたから辛くは無かった、問題は国王に即位した後も、父には王子が一人しか生まれなかったコトだ」

「王太子は…確か、とても病弱だと聞いたコトがあります」

 アイルの言葉に、パダムは大きく頷いた。


「私と母を追い出した大臣たちは、危機感を持って私を呼び戻して王子に据えたのさ! 母に説得されなけれ戻るつもりは無かった」

 忌々しそうに吐き捨てるパダム。


「…他国へ行けば良いと先程… ソレはアンギヌ王国のコトなのですね?」


「ああ… 勿論、カチャンも連れてだが嫌か? アンギヌでなら将軍の花嫁になれるぞ?」

 ニヤリと笑うパダムに苦笑を浮かべるアイル。


「…ですが」

 窓の外では、楽し気な声を上げるカチャンと、別れを惜しむエナックとその子供たちの姿があり…


 パダムもアイルが見ているモノに気付き、顔を曇らせた。


「アナタは強い騎士です… アナタが居なければ、助けられない命がたくさんあります」

「君はこの国を、離れたくはないのだな?」


「・・・・・・」

 アイルは答えられなかった、本当に分からないからだ。

<パダムになら、何処へだって付いて行きたい… でも…>



 兄フジャヌが迎えに来た時…

「パナス・ダラム様、お急ぎください! また、隣国ティムルとの国境付近で、魔獣の大量発生が起きて、前回とは比べ物にならないほど死者が出ています! あまり猶予は、ありませんぞ!」


 <今も兄は馬車の前で、イライラと、パダム様を待っている>

 ソレだけ状況は、切迫しているのだ。


「私もパダム様と共に、戦場に行けたら良いのに!」
 
 自分の非力に我慢できず、涙が零れた。


「君も私に、魔獣と戦えと言うのだな?」

 穏やかに微笑むパダムに、痛む胸を押さえるアイル。


「いいえ、アナタを魔獣の前に、送り出したくなどありません!! でも…っ! でも… 私は!!」

「君は…優しい、私の聖女は勇敢だ」


「違います! …違います! 私は何も出来ない無能な女です…」

 今ほど魔法が使えないコトが、悔しくて歯がゆく感じたコトは無い。



 もう一度アイルを抱き締めて、パダムは熱烈にキスをした。


 アイルもパダムの熱いキスに答えた。



「君の分も私が戦おう」


「パダム様…!」




 アイルは茫然と、見送るコトしか出来なかった。







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