呪われた騎士に贈られた花嫁

金剛@キット

文字の大きさ
22 / 86

21話 別れ2

しおりを挟む
 慰めるようにアイルはパダムの胸に手を置き、見上げると…

 自分の胸に置かれたアイルの細い手を取りパダムは唇に寄せ、そっとキスをする。


 家事で荒れてカサついているが、細く優美な暖かいアイルの手を握り締め、ポツポツと自分のコトを話し始めるパダム。


「母と私は、アンギヌ王国に王妃として嫁いだ、伯母の元へ送られ、使用人として暮らした」

「そんな…っ!使用人だなんて…」

「確かに母は苦労をしたが、わたしはアンギヌの王子たち… 従兄弟たちと仲良くなって、彼らの側近候補として教育されたから辛くは無かった、問題は国王に即位した後も、父には王子が一人しか生まれなかったコトだ」

「王太子は…確か、とても病弱だと聞いたコトがあります」

 アイルの言葉に、パダムは大きく頷いた。


「私と母を追い出した大臣たちは、危機感を持って私を呼び戻して王子に据えたのさ! 母に説得されなけれ戻るつもりは無かった」

 忌々しそうに吐き捨てるパダム。


「…他国へ行けば良いと先程… ソレはアンギヌ王国のコトなのですね?」


「ああ… 勿論、カチャンも連れてだが嫌か? アンギヌでなら将軍の花嫁になれるぞ?」

 ニヤリと笑うパダムに苦笑を浮かべるアイル。


「…ですが」

 窓の外では、楽し気な声を上げるカチャンと、別れを惜しむエナックとその子供たちの姿があり…


 パダムもアイルが見ているモノに気付き、顔を曇らせた。


「アナタは強い騎士です… アナタが居なければ、助けられない命がたくさんあります」

「君はこの国を、離れたくはないのだな?」


「・・・・・・」

 アイルは答えられなかった、本当に分からないからだ。

<パダムになら、何処へだって付いて行きたい… でも…>



 兄フジャヌが迎えに来た時…

「パナス・ダラム様、お急ぎください! また、隣国ティムルとの国境付近で、魔獣の大量発生が起きて、前回とは比べ物にならないほど死者が出ています! あまり猶予は、ありませんぞ!」


 <今も兄は馬車の前で、イライラと、パダム様を待っている>

 ソレだけ状況は、切迫しているのだ。


「私もパダム様と共に、戦場に行けたら良いのに!」
 
 自分の非力に我慢できず、涙が零れた。


「君も私に、魔獣と戦えと言うのだな?」

 穏やかに微笑むパダムに、痛む胸を押さえるアイル。


「いいえ、アナタを魔獣の前に、送り出したくなどありません!! でも…っ! でも… 私は!!」

「君は…優しい、私の聖女は勇敢だ」


「違います! …違います! 私は何も出来ない無能な女です…」

 今ほど魔法が使えないコトが、悔しくて歯がゆく感じたコトは無い。



 もう一度アイルを抱き締めて、パダムは熱烈にキスをした。


 アイルもパダムの熱いキスに答えた。



「君の分も私が戦おう」


「パダム様…!」




 アイルは茫然と、見送るコトしか出来なかった。







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

第3皇子は妃よりも騎士団長の妹の私を溺愛している 【完結】

日下奈緒
恋愛
王家に仕える騎士の妹・リリアーナは、冷徹と噂される第3皇子アシュレイに密かに想いを寄せていた。戦の前夜、命を懸けた一戦を前に、彼のもとを訪ね純潔を捧げる。勝利の凱旋後も、皇子は毎夜彼女を呼び続け、やがてリリアーナは身籠る。正妃に拒まれていた皇子は離縁を決意し、すべてを捨ててリリアーナを正式な妃として迎える——これは、禁じられた愛が真実の絆へと変わる、激甘ロマンス。

美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ 

さら
恋愛
 会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。  ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。  けれど、測定された“能力値”は最低。  「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。  そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。  優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。  彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。  人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。  やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。  不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。

処理中です...