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7話 美しい花嫁
しおりを挟む元々決まっていたエリダとフィエブレの結婚を、少しぐらい早めても何の問題も無いと、エレヒルはカナルの要望を受け入れ…
エンペサル侯爵領内にある、小さな神殿で2人の婚姻は速やかに行われることとなった。
前の年から、エリダ自身が何度もドレスメーカーのデザイナーと相談し注文した、表面に光沢のあるオフホワイトのシンプルなドレスを着て… 月光色の髪を綺麗に編み込んだ頭の上から、亡くなった母が父との婚姻の儀式で使った純白のレースをふわりと被り、真珠をはめ込んだティアラで留めて美しい花嫁に仕上がった。
「今日の君は本当に綺麗だよ、エリダ! こんなに美しい姉がいて僕は誇らしいよ!」
何度もあふれた涙を指先で拭いながら、カナルは姉の肩に綺麗に広がるように、レースを整える。
<もう一つの未来で、僕もドレスアップしたけれど… フィエブレも兄上も、参列者たちもみんなエリダを失くした傷が癒えてなくて… 婚姻の儀式というよりも、葬送の儀式のようだった>
口には出さなくても、当時のカナルは肌でひしひしと感じていた。
<祭壇前でフィエブレの隣りに立つのは、僕ではなく、エリダだったはずなのにと… 悲しみに暮れた参列者たちは、(特にフィエブレの家族)誰一人として僕の結婚を喜んではいなかった>
そのことを思い出すと、あまりにも複雑で、いまだにカナルは胸が潰れそうに痛むのだ。
「ありがとうカナル! 祝ってくれて」
「姉の結婚を、弟なら祝って当たり前じゃないか!」
「でも、カナルもずっと… フィエブレのことが好きだったでしょう?」
「もう、エリダには敵わないなぁ… どちらにしても当のフィエブレがエリダしか眼中に無いし、悔しいけど僕が入る隙間なんて、少しも無かっただろう? あったら僕が彼を奪ったけどね!」
ニヤリと笑ってエリダのために、カナルはおどけて見せた。
双子の姉と言うだけあり、エリダも子供の頃からカナルが、フィエブレを愛していたことを知っているのだ。
「本当にごめんね、カナル… 私が女性だから同じオメガでも、昔から私ばかりがいつも優遇されてしまって…」
「もう、謝るなよ! エリダが謝ることなんて、何も無いから!」
同じオメガでも女性は多産の傾向があり、貴族の間では特に長男の妻は女性のオメガとの婚姻が好まれた。
一方で男性のオメガは、不妊症であったり出産時に命を落とす例も多く、生殖能力が女性オメガに比べ弱いため、妻には不向きだと考える貴族が多い。
病弱であっても女性オメガのエリダを、双子の両親がフィエブレの婚約者にと選んだのもそのような理由からで…
国王陛下の側妃候補にと、カナルではなくエリダが選ばれたのも、やはり女性オメガだったからだ。
「でもねぇ… カナル! 私が結婚すれば次はあなたの番よ? あなたにピッタリの素敵なアルファを探してあげるから! ふふふっ… だから覚悟してね?」
「あははははっ! 僕よりも先に兄上に探してやらないと、エリダ!」
「だってぇ~ お兄様は我がままだから、自分で見つけなければきっと相手に満足しないわよ?!」
「それもそうかぁ~っ!」
神殿内の小さな控室で待つ間、エリダは子供の時のように、ギュッとカナルに抱き付いた。
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