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77話 暗闇の中の声 ボルカンside
しおりを挟む深い暗闇の中でカナルの姿は見えないが…
ボルカンは夢の中でカナルの悲痛な叫び声を聞いた。
『夜の精霊よ、どうか僕のお腹の子をお守り下さい!! こんな卑劣な奴らに殺させないで下さい! ボルカン様、助けて!! ボルカン様、助けて下さい!!』
何度も、何度も… 何度も…!!
『助けて―――っ!! 助けて―――っ!! 助けて―――っ!!』
「ううっ…!! うぐっ…!! ううううっ…!!!!」
<カナル!! カナル―――ッ!! 今すぐ助けてやる!!!>
ボルカンは必死でカナルに答えようとするが、夢の中のせいか声を上手く発することが出来なかった。
その間にも、ボルカンには絶え間なくカナルの助けを求める叫び声が聞こえた。
ボルカンに… 夜の精霊に…
何度も、何度も、カナルはお腹の子を救って欲しいと、助けを求めていた。
『ボルカン様―――ッ!! 夜の精霊!! 赤ちゃんを助けて!! 嫌ッ!! 嫌ッ!! ボルカン様―――ッ!!』
「ううっ…ぐっううっ…!! う゛うっ!! う゛ううっ!! う゛う゛…!!!」
<カナル!! カナル!! 今、助けに行く!! 必ず助けてやる!! クソッ!!!>
叫び声は聞こえるのに深い暗闇に包まれ、カナル自身の姿が何処にも見えず、それどころかボルカンは自分が盲目になったのかと思うほど、自分の手さえ見ることが出来なかった。
「ぐうっ…!! ぐっ… ぐっ…うっ!!」
<これはただの夢ではない!! カナルに何かあったに違いない!! この闇は… もしかすると、カナルに加護を与えた夜の精霊の力ではないのか?! クソッ…!! どうすれば良い?!>
それでもボルカンは深い闇の中で、必至でカナルを呼ぼうとするが… うめき声しか発せず、気が狂いそうになっていた。
『ああっ!! 嫌ッ!!! 赤ちゃんが!! 凌辱などされたら、赤ちゃんが死んでしまう―――っ!! 僕が守らないと!! ああっ…ボルカン様!!!』
番以外の体液を体内に受け入れれば、オメガの身体は激しい拒絶反応を起こし、生死を彷徨うほどの危険な状態におちいる。
そうなれば、妊娠初期の不安定な時期にある胎児には、致命的となる。
「は…っ! くくぅ…?!」
<凌辱?! 凌辱だと―――ッ?!! クソッ!! クソッ!!! カナル、何処だ?! 何処にいるのだ?!>
上手く出ない声を発するよりも、暗闇の中でカナルの声をもっと感じ取ろうとボルカンは五感に集中する。
(※五感→ 視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)
少しずつボルカンの視界の闇が薄れ、ぼんやりと誰かが見えた。
次第に焦点が合い、その誰かの顔がはっきりと分かった。
<パラグアス?!!!>
『・・・な・・に、怖がらないで下さいカナル様! クッ… クッ… クッ… 私はボルカンなどよりずっと優しい男ですから、可愛がってあげますよ!』
『僕に触れるな!! 僕はボルカン様のものだ―――っ!!』
パラグアスがボルカンの足? を掴み大きく開きながらニヤニヤと卑しい笑みを浮かべていた。
<いや、違う!!! このスラリと美しい足は、間違いなくカナルの足だ!! パラグアスがつかんでいるのか?! もしや、私はカナルの目を通してこの光景を見ているのか?! そうか、だから私にはカナルの姿が見えないのか?!>
カナルの願いを聞き届け、夜の精霊がボルカンへと助けを求める声を届けているのだ。
『この野蛮人―――っ!! 僕に触れるな!! 放せ反逆者!!!』
辺り一面に、カナルの悲痛な叫び声が反響する。
<カナルの見ているものが見えるだけではない!! クソッ!! カナルが感じる痛みまで分かる!>
背中で縛られた腕がひどく痛み、上手く抵抗出来ず、それでも身体をねじり必死で暴れた。
<腕の強い痛み… それに首筋に掛かる生暖かい、パラグアスの息が気持ち悪い!! クソッ…!! 本当にカナルは凌辱されそうになっているのだ!! 何処だ?! カナルは何処にいるのだ?!>
叫び声の反響する聞こえ方から考えても、カナルがいる場所は、明らかに後宮の自室では無かった。
『止めろ―――っ!!!』
パラグアスに頬をべろりと嘗められ、カナルが顔をそむけた瞬間、石床が見えその先には…
無数の石棺が並んでいる。
<霊廟だ!!!>
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