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76話 冷たい床の上4
しおりを挟む「僕はボルカン様の番だぞ?! 僕のフェロモンだって感じ取れ無いくせに!! お前の頭はおかしい!! 狂っている!!」
羞恥で赤かった顔から血の気が引き、カナルは青ざめていく。
「本当に残念ですよ… あなたを一目見た時から気に入っていたので、出来れば私の側妃にしたかった」
「側妃だって?! バカを言うな!!」
「ええ、まずは私が王女殿下と婚約し、殿下が女王となった時に私が王配として力を振るう、そして誰もが私こそ王だと認めるでしょうね! そこで女王陛下に王位を譲位させ、名実ともに私が国王になると言うわけですよ」
待ちに待ったこの時が来たと、パラグアスは自分が立てた計画をべらべらと語りたくて仕方がない様子だった。
「お前の頭は狂っているだけではなく、バカなのか?! ボルカン様が国王だ!! なぜそこに王女殿下が出てくるのだ?!」
「だからカナル様、あなたを無残に殺した残虐王ボルカンを、この国の防衛の要であるエンペサル侯爵… あなたの兄上が謀反を起こして殺すからですよ!」
「兄上はそんなに愚かではない!!」
「ボルカンの側近である私が罪悪感にかられて、エンペサル侯爵にあなたがどれだけボルカン陛下を恐れていたかを、教えてやれば大丈夫です… 正妃ディアレア様もきっと後押ししてくれるでしょうしね」
「エンペサル侯爵は、お前のような狂人の戯言に、耳を貸すような人では無い!!」
カナルの瞳から涙がこぼれそうになったが、眉間にグッ… と力を込めて涙を留めた。
パラグアス… 恐らくこの狂人こそが、諸悪の根源だったのだ。
<巻き戻る前の最悪の未来で、選定を任された大臣に婚約者がいるエリダを強引に側妃候補として選出させ、王宮に呼び寄せてエリダを焼き殺した! その後、ボルカン様に汚名を着せた!! それをやったのは間違いなくこのパラグアスだ!!>
自分に酔いながら話すパラグアスに、足をつかまれているため…
カナルは精霊の力を使い触れられた部分を通し、パラグアスがエリダを側妃候補にするのに、選定を任された大臣の弱みを握り、無理やり金を受け取らせて共犯者に仕立て、口封じをした… その時のやり取りを盗み見ることが出来た。
<全て、パラグラスの話は本当だった!>
「お前と… そしてお前の兄弟たちのような狂人が描いた、下らない妄想が本当に上手くゆくと思っているのか?!」
カナルは薄い寝衣を破られ裸をさらした、無様な姿にされていたが、国王の寵愛を一心に受ける妃の名に恥じない威厳を持って男たちに問い質した。
「ボルカン陛下も! エンペサル侯爵エレヒルも! お前たちのような卑劣な者たちに騙されるほど愚かだと、本気で信じているのか?!」
良く通る凛としたカナルの声が、石造りの冷たい霊廟に反響する。
霊廟で眠る歴代の国王たちが、まるでカナルの声を借りて、語り掛けてくるような… そんなおかしな感覚に男たちはおちいる。
黒に近い濃紺の瞳に力を込めて、カナルは男たちを睨みながら、心の中で祈った。
<夜の精霊よ、どうか僕のお腹の子をお守り下さい!! こんな卑劣な奴らに殺させないで下さい! ボルカン様、助けて!! ボルカン様、助けて下さい!!>
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