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25話 人違い
しおりを挟む良い香りがするふわふわのベッドに、ヒラソルは裸で寝転がっていた。
意識はぼんやりと目覚めているけど… 身体がだるくて目を開きたくない。
「たった1度の情交で、そんなに疲れたのか?! 仕方ないな…」
「んんん…?」
誰…?
うつら… うつら… と微睡んでいると、誰かがヒラソルに話しかけ、お腹にペタリと触れる。
「すぐに楽にしてやる!」
「え?」
ヒラソルのお腹がふわりっ… と温かくなったかと思うと、だるくて重かった身体が、急激に軽くなる。
今まで感じたことの無い感覚を身体に感じて… 驚いたヒラソルはパッ… と目を開くと、キラキラと輝く紫色の光が自分を包んでいた。
「うわああぁぁぁぁ――っ?!!!」
僕が光ってる?!
驚いたヒラソルはさけび声をあげながら、ガバッ…! と上半身をおこすと… 紫色の光はヒュンッ…! とヒラソルのお腹に吸い込まれて消える。
自分に何が起きたのか、まるで理解出来ず、ぼうぜんと口を開けて裸のお腹を見下ろした。
「終わりだ! どうだ? 私の回復魔法は、ビンビンになるだろう?」
ベッド脇から話しかけられ、ヒラソルは話しかけた人物を見あげると… 珍しい紫色の瞳に、うなじで短く切りそろえた鮮やかな赤い髪の、会ったこともない美形アルファがニヤリッ… と笑いながら立っていた。
「…ビンビン? はぁ?!」
誰?! 回復魔法…?! 何それ…?! んんんっ?!
「ふふふっ… ヒラソル… これで、もっと出来るだろう?」
美形アルファはヒラソルに覆いかぶさるように、ベッドにのる。
「ま、ま、ま… 待って下さい!」
こ… この美形アルファ、僕を抱こうとしているの?! その前に、ガロテ様はどこに行ったの?!
「嫌だね! お前が目覚めるまで、私は待ってやったのだから!」
キラキラとまぶしいほど、紫の瞳を輝かせて、美形アルファは微笑みヒラソルにキスをしようとする。
「ダメ! ダメ! ダメですってば!! 僕には番がいます! 番以外のアルファに抱かれたら、僕の身体は拒絶反応をおこして、死んでしまうかも知れない!」
キスも危ないと聞いたことがある!
パッ… と自分の唇を押さえて、ヒラソルは美形アルファのキスを遮る。
「だからお前は私の番にしただろう?」
「はぁ?! 何をおっしゃているのか、わかりません?!」
「何だと?! 忘れたとは言わせないぞ?! 裏庭のガセボでお前は私に『犯して下さい』と懇願したのを忘れたのか?!」
美形アルファはムッ… と腹を手てて、ヒラソルをにらむ。
「何ですって?! 僕は番のガロテ様に抱いて欲しくて言ったのです!」
僕はガロテ様のフェロモンをたどって、ガセボに行って… 暗闇の中でそれから…
「ガロテ?! いや… お前は間違いなく、私に言ったぞ?!」
美形アルファの身体から放たれた濃厚なアルファ・フェロモンにヒラソルは気づく。
「あ…?! フェロモンを… 感じる?!」
なんか… ガロテ様似ているような…? というより、同じフェロモン…?! そんなバカな?!
「当然だ! 私がお前の番だからな! だから私も、お前のフェロモンを感じている」
通常、番になったオメガのフェロモンは、番にしか感知出来なくなる。
「そんな… 僕はまた、やらかしたの?!」
この人のフェロモンをガロテ様のフェロモンと勘違いして… 暗闇の中で顔は確かめられなかったから! 僕… 僕は… ガロテ様とこの人を… 間違えて誘ったの?! 番以外のアルファを受け入れた僕は… 僕は死ぬの…?
ヒラソルは真っ青になり、死の恐怖に囚われガタガタと震えだす。
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