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39話 オエスチ侯爵の問いかけ3

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 ソファから腰を上げながら、何故、急に第一騎士団へ顔を出したのかをオエスチ侯爵は語った。

「王宮で君の従者に会い忙しそうだと聞き、第二騎士団へ帰るついでにこちらへ寄ったが… なるほど、これでは忙しいはずだ!」
 ちょこんとデスチーノの隣りに座るアディをチラリと見て、オエスチ侯爵は何度もウンウンとうなずき笑った。

「すみませんオエスチ侯爵、あなたも忙しい時にここまで、御足労頂いてしまい…」

「いや、その分仕事にはうるさい君が、職場で恋人とイチャつく場面を見物できたから、文句は言わないさ! それに第一騎士団の騎士団長殿に貸も出来そうだしな!」
 機嫌良くアディにパチンッ… とオエスチ侯爵はウインクをした。

 耳どころか、小さなてのひらまで真っ赤に染めて、アディは顔を伏せる。

「オエスチ侯爵、あまり揶揄からかわないで下さい…」

「いやいや、君は何時も可愛げが無いほどすきがないからな、揶揄える時に揶揄っておかないと、後で後悔しそうだ」
 ソファの脇に立て掛けてあった剣を取ると… カチッ… カチッ… と音を立て、手際良くオエスチ侯爵は腰の革ベルトに装着し、いつもの癖なのか、腰に付けた剣の柄を握り、ほんの少しさやから出すと、カチンッ… と金属音を立ててスグに剣をさやに戻した。


「本当に困った、おヒトですね!」
 デスチーノもオエスチ侯爵を送り出すために腰を上げ、真っ赤な顔のアディも一緒に立ち上がった。
 
「おおっと、そうだった! 何のためにここまで来たのかを忘れるところだった! 手合いの日時と草案は私の方で、ある程度練っておくから、そっちは任せてくれ!」

「それは助かります!」
 すっかり忘れていたのはデスチーノも同じで、苦笑を浮かべた。

「王家主催の舞踏会は第一騎士団が主導で守るわけだし、あれが終るまでは君が忙しいのは分かっているしな」

「ええ、本当に考えたく無いほどです」

「だが、来月のうちの舞踏会と晩餐会ばんさんかいまでには必ず結婚してくれよ? 妻をガッカリさせたくないからな」

「はい、きもに銘じます!」

 アルファの中でも極めて体格の良い2人が並んで立つと、圧倒的な威圧感があり…
 2人は威嚇いかくし合っているわけでもないのに、アディはソファから腰を上げた途端、またすぐにストンッ… と腰を下ろしてしまった。





 オエスチ侯爵が帰った後…
 フゥ―――――――――ッ… と、アディは長い長いため息をく。


「大丈夫か、アディ?」

「何だか疲れてしまってぇ…」
 ソファに座りアディはぐったりとする。

「ふふふっ… オエスチ侯爵のように、あれだけ何もかも強い人はあまりいないからなぁ… 若いオメガには、少しきつかっただろう?」
 アディの薄い肩をトントンとデスチーノは叩いてねぎらった。

「はい」

「アディ、これからはああいう人にも慣れないといけないぞ?」

「ああ、やっぱりそうなりますよね? あははは… 頑張ります…」
 身体よりも気疲れが大きく、アディはそのままソファで昼寝がしたくなった。

「あ! 噂で聞いたことがあるが、オエスチ侯爵の奥方はかなりの恐妻らしいぞ?」

「えええ?! 何か想像できないなぁ~? 侯爵様を尻に引く奥様?」

 アディは可愛らしく首をかしげた。


「だよなぁ?」

 デスチーノも一緒に首をかしげる。





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