傷心オメガ、憧れのアルファを誘惑

金剛@キット

文字の大きさ
46 / 87

45話 公爵様、深夜の帰宅

しおりを挟む
 社交シーズン真っ盛りで、どの騎士団も大忙しの中… デスチーノが数日ぶりに、公爵邸へ帰って来た。


 何日も帰れないデスチーノのために、アディは第一騎士団本部へ、また昼食を持って行こうかと思い…
 毎日、デスチーノの着替えを取りに戻って来る、従者のカディラに騎士団に訪問して良いかを聞いてみた。


『今は公爵様を筆頭に、第一騎士団の騎士たちは、目が回るような忙しさですから… お止めになられた方がよろしいかと』

『そう… 今、僕が行ったら邪魔になってしまうのだね?』

 カディラの反応が悪く、しょんぼりとアディが落ち込むと…

『いえ、アデレッソス様そうではありません… 公爵様ご自身が、常にあちら、こちらへと移動しておられるので、お会いするのがとても難しく… 食事も馬の上で済ませる時があるほどで…』

『ええええ?! 馬の上―――っ?! それは大変だ!』

『はい、アデレッソス様… どうかしばらくお待ちください』

 有能なカディラは、主人が去年の社交シーズンよりも、3倍忙しく働いている理由をアディには明かさなかった。

 オエスチ侯爵の助言を聞き入れ、王太子に口添えを頼み、フーアとの離婚を、通常は数か月かかるところを3日で終わらせ… ついでに結婚許可証まで手に入れていた。

 つまり、デスチーノは書類上では、いつでもアディと結婚が可能な状態なのだ。

 だが、王太子に口添えを依頼したことで、デスチーノは王太子の仕事を、このクソが付くほど忙しい社交シーズンに受けることとなり…
 デスチーノ自身の時間が減り、結婚式が行えないでいた。

 こうなる予感があったため、最初にデスチーノが王太子に口添えを頼むのを躊躇ちゅうちょしたのである。




 昼間、カディラが用事で公爵邸に戻って来た時に…
 今夜はデスチーノが帰宅すると教えられ、アディは眠い目をこすりながら、必ず起きて出迎えようと深夜近くまで、玄関ホールで待っていた。

 玄関の扉が開き、デスティーノの姿が見えると…ぱっ… と花が咲いたように、満面の笑みを浮かべてアディは駆け寄った。


「お帰りなさい、デスチーノ! んんっ? …デスチーノ?!」
 久しぶりに帰宅したデスチーノの姿を見て、アディは一瞬、別人かと思った。

 デスチーノのスミレ色の瞳は落ち窪み、頬はこけ、疲れているのだろう、口を不機嫌そうに歪めていた。

 アディの顔を見ても、デスチーノは大喜びで笑うこともなければ、抱き締めることもなく…

「・・・・・・」 
 沈黙したまま、大きな掌で、アディの頭をぽんっ… ぽんっ… としただけだった。

 それにいつもの颯爽さっそうとした歩き方ではなく、重そうにドスンッ… ドスンッ… と歩くのだ。

「申… 申し訳ありません、アデレッソス様! 旦那様の進路を、ふさがないようにお願いします…っ!!」
 有能な従者カディラは、アディに奇妙な指示を出す。

「は?! 何?! 進路…?!」
 思わずアディが聞き返すと… 

「ただいま、旦那様は真っ直ぐにしか歩けませんので!」

「真っ直ぐ?! えええええ―――っ?! 何で?!」
 理由を聞き、増々アディは混乱した。

「目は開いておりますが、眠っているのとあまり変わらない状…態…  ああ、危ない旦那様! 階段の柱にぶつかるっ…!!」
 慌ててカディラは、デスチーノの隣りへ行き、腕を引っ張り階段へと誘導する。

 アディもカディラとは反対側に行き、デスチーノの肘を掴んだ。

 何とか2人で階段にデスチーノを誘導できたが、階段の一段目をガツガツととばしては、長い足が引っ掛かり…

「旦那様!! 階段です!! 階段ですよ―――っ?!! もっと足を上げなければ、階段を上れませんよおぉ―――っ!!!」
 カディラがデスティーノに大声で叫んだ。

「ああ、僕が上に立って手を引いてみるよ!!」
 重い腕を掴んで、アディは階段の上に立ち、デスチーノを引っ張った。

「では、私は背中を押してみます!!」
 カディラはデスチーノの後ろに立ち、押し始めると… デスチーノはよろよろと階段を上り始めた。

<ううわあぁぁぁぁぁ―――っ… 大変!!!!>
 アディはふうっ… ふうっ… と言いながら汗をかき、デスチーノの重い腕を持ち上げて引っ張り続けた。

<ああ、デスチーノったら… こんなに重い腕を2本もぶら下げているんだぁ~?! これは大変!>


「アデレッソス様、頑張って下さい!!」

「カディラもねぇ―――っ!!」



 ふうっ… ふうっ… ふうっ… ふうっ… 





しおりを挟む
感想 40

あなたにおすすめの小説

執着

紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。

うそつきΩのとりかえ話譚

沖弉 えぬ
BL
療養を終えた王子が都に帰還するのに合わせて開催される「番候補戦」。王子は国の将来を担うのに相応しいアルファであり番といえば当然オメガであるが、貧乏一家の財政難を救うべく、18歳のトキはアルファでありながらオメガのフリをして王子の「番候補戦」に参加する事を決める。一方王子にはとある秘密があって……。雪の積もった日に出会った紅梅色の髪の青年と都で再会を果たしたトキは、彼の助けもあってオメガたちによる候補戦に身を投じる。 舞台は和風×中華風の国セイシンで織りなす、同い年の青年たちによる旅と恋の話です。

すべてはあなたを守るため

高菜あやめ
BL
【天然超絶美形な王太子×妾のフリした護衛】 Y国の次期国王セレスタン王太子殿下の妾になるため、はるばるX国からやってきたロキ。だが妾とは表向きの姿で、その正体はY国政府の依頼で派遣された『雇われ』護衛だ。戴冠式を一か月後に控え、殿下をあらゆる刺客から守りぬかなくてはならない。しかしこの任務、殿下に素性を知られないことが条件で、そのため武器も取り上げられ、丸腰で護衛をするとか無茶な注文をされる。ロキははたして殿下を守りぬけるのか……愛情深い王太子殿下とポンコツ護衛のほのぼの切ないラブコメディです

白金の花嫁は将軍の希望の花

葉咲透織
BL
義妹の身代わりでボルカノ王国に嫁ぐことになったレイナール。女好きのボルカノ王は、男である彼を受け入れず、そのまま若き将軍・ジョシュアに下げ渡す。彼の屋敷で過ごすうちに、ジョシュアに惹かれていくレイナールには、ある秘密があった。 ※個人ブログにも投稿済みです。

ぼくが風になるまえに――

まめ
BL
「フロル、君との婚約を解消したいっ! 俺が真に愛する人は、たったひとりなんだっ!」 学園祭の夜、愛する婚約者ダレンに、突然別れを告げられた少年フロル。 ――ああ、来るべき時が来た。講堂での婚約解消宣言!異世界テンプレ来ちゃったよ。 精霊の血をひく一族に生まれ、やがては故郷の風と消える宿命を抱えたフロルの前世は、ラノベ好きのおとなしい青年だった。 「ダレンが急に変わったのは、魅了魔法ってやつのせいじゃないかな?」 異世界チートはできないけど、好きだった人の目を覚ますくらいはできたらいいな。 切なさと希望が交錯する、ただフロルがかわいそかわいいだけのお話。ハピエンです。 ダレン×フロル どうぞよろしくお願いいたします。

騎士様、お菓子でなんとか勘弁してください

東院さち
BL
ラズは城で仕える下級使用人の一人だ。竜を追い払った騎士団がもどってきた祝賀会のために少ない魔力を駆使して仕事をしていた。 突然襲ってきた魔力枯渇による具合の悪いところをその英雄の一人が助けてくれた。魔力を分け与えるためにキスされて、お礼にラズの作ったクッキーを欲しがる変わり者の団長と、やはりお菓子に目のない副団長の二人はラズのお菓子を目的に騎士団に勧誘する。 貴族を嫌うラズだったが、恩人二人にせっせとお菓子を作るはめになった。 お菓子が目的だったと思っていたけれど、それだけではないらしい。 やがて二人はラズにとってかけがえのない人になっていく。のかもしれない。

ユキ・シオン

那月
BL
人間の姿をした、人間ではないもの。 成長過程で動物から人間に変わってしまう”擬人化種”の白猫青年と、16歳年上のオッサンとのお話。 出会ったのは猫カフェ。白猫従業員としての青年と客としてやってきたオッサン。 次に再会したのは青年が人間として通う大学。オッサンは保健室の先生だった。 青年が金のためにヤバいことをしていて、あるトラブルが起こる。 そこへ見計らったかのようにオッサンが飛び込んで救出したのをきっかけに2人の距離は縮まり…… ※表紙絵は自作。本編は進むにつれてどんどん動物園と化します(笑)

聖者の愛はお前だけのもの

いちみりヒビキ
BL
スパダリ聖者とツンデレ王子の王道イチャラブファンタジー。 <あらすじ> ツンデレ王子”ユリウス”の元に、希少な男性聖者”レオンハルト”がやってきた。 ユリウスは、魔法が使えないレオンハルトを偽聖者と罵るが、心の中ではレオンハルトのことが気になって仕方ない。 意地悪なのにとても優しいレオンハルト。そして、圧倒的な拳の破壊力で、数々の難題を解決していく姿に、ユリウスは惹かれ、次第に心を許していく……。 全年齢対象。

処理中です...