伯爵夫人Ωの攻防

金剛@キット

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36話 覚醒



 ガガッンン…!! 

 大きな振動を身体中に感じ、フェーリアスはふと目覚めた。 

 お腹と、顔が酷く痛んだ。

<ううっ… 痛い!>


 腕が動かなくて、引っ張ると、後ろ手に縛られていたから、動かなかったのだ。

 ソレに口の中へ、布を押し込んで、その上から縛ってあるから…

 フェーリアスは、唸り声は上げられても、叫び声は上げられない。
 

「ううう…ううっ…」
 

 ガッ…ガッ…ガッ…ガガンッ!!

<くううっ… あばらが、硬い床に当たって痛い…っ!>
 
 また、大きな振動が、身体に伝わり、身体が小さく跳ねた。 


<ああ、馬車だ! 私は縛られて馬車の中に転がされているのか…>

 お腹と顔の痛みは、馬車に乗る前に…

 フェーリアスが、暴れると面倒だから、パセィオに殴られ、気絶させられた後、縛り上げられたからだ。


 ガッ…ガガッ…ガガッ…ガガンッ!!

「ううううっ…」

<体を起こさないと、あばら骨にヒビが入りそう…>

 足が縛られていなくて、幸運だった。

 ゴロゴロと狭い床の上を転がり、身体を起こし、椅子にもたれて座った。


<このまま南方まで、行くわけには、いかない! なるべく王都に近い場所で、逃げ出さない>

 だからと言って…

 走る馬車から、腕を縛られた状態で、飛び降りれば、首を折って死にかねない。


<そうだ! 道が真っ直ぐの場所はダメだ… 道が、曲がっているトコロなら、ゆっくり馬を走らせるはず…>

 馬車の動きが、ゆっくりになったら…

 フェーリアスはいつでも、飛び降りようと、覚悟した。



 無茶をして、死ぬのは絶対に嫌だが…

 パセィオに乱暴されるのも、嫌だった。

 

 フェーリアスはパセィオに殴られて、気絶させられる前のコトを思い出した。



『僕たちは、夫婦じゃないか、フェーリアス! 今夜からお前だけを、可愛がってやるよ』


 背後から、パセィオに抱き締められ、フェーリアスは、項を噛まれて、驚いて抵抗したのだ。


『オイ! 可愛がって欲しければ、生意気な口を利くな!! 僕の妻なら、大人しくしていろ!!』


<項を噛めば、私が発情する、と知っているから… でも強い抑制剤に、変えたばかりで、私は何とか抵抗して踏み留まるコトが出来た… でも、縛られた状態では、抑制剤は飲めない… もうスグ、薬の効果が切れる頃だ!!>


 抑制剤が切れ、無防備になった時のコトを考えると…

 フェーリアスは心底ゾッとした。

<性奴隷のように扱われても、私は文句を、言えなくなってしまう!!>



<でも、フェーリアスが連れ去られるのを、何人もの使用人たち、が心配して見ていたから、誰かが団長に伝えてくれるはず!!>

 カルナヴァウ伯爵邸の、使用人たちは…

 フェーリアスの結婚前から、ずっと勤めている者が多い。

 執事などはフェーリアスの、子供時代も知っていて、パセィオよりずっと、付き合いが長いのだ。


<ソレに結婚当初から、パセィオを嫌っていた使用人たちが… 毎日、団長が通って来るようになると、まるで彼を、歓迎しているような、素振りを見せた>


 穏やかに笑うヴァーリの顔が、脳裏を過ぎり…

 時と場合を選ばず、溢れそうになる涙に、フェーリアスは酷く、腹を立てた。


<今、泣いても… 膝に乗せて、優しく慰めてくれる人は、側にいないし! 自分で涙を拭うコトも、出来ないのだから!! 泣いてどうするのさ!! 全くもう!!>



 コレ以上、涙が零れないように…

 フェーリアスは、アレコレ考えたりせず、行動することにした。


<飛び降りる云々の前に、扉を上手く開かないと、出られないよ?!>





 

 ガタガタと揺れる馬車の中で、フェーリアスは気合いを入れて扉を睨む。








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