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66話 黒騎士団の変化
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第4代目レガロ伯爵、カベサの手記にはアスカルの期待通り、有益な情報がたくさん残されていた。
いつの間にか日が暮れ、夕食もお茶を飲む時も、数冊に渡る手記のページをめくる手を休めることなく、夜明け近くになってもアスカルは時間を忘れ、夢中で読み耽ってしまう。
不意にギュッ… と肩をつかまれ、アスカルは執務机の椅子の上で驚きのあまり、飛び跳ねた。
「ひゃあっ?!!」
「おい、アスカル! こんな時間まで、何をしているんだ? 身体を壊すぞ?!」
5日ぶりに帰宅したグランデが、心配そうにアスカルの顔をのぞき込んだ。
少しでも夫婦の時間を持ちたくて、毎朝アスカルは、騎士団本部に朝食を届けに通っているため、グランデの顔を見たのは、久しぶりというわけではないが…
やはり自分の元へ帰って来た、愛する夫と顔を合わせるのは、格別の喜びを感じるものである。
「わあっ! グランデ様、お帰りなさい!!」
ガタタッ… と椅子から立ち上がり、アスカルは嬉しくて、甘えるように抱き付こうとするが…
「こら! ダメだアスカル! 待て、待て! 魔獣の返り血を浴びているから、お前まで臭くなってしまうぞ?!」
細い腰をつかみグイィーッ… と自分から離そうと押し返すグランデに、アスカルは子供のように頬をぷぅ~っ… とふくらませた。
「もう! グランデ様、少しぐらい大丈夫ですよ! 意地悪を言わないで下さい!!」
「ははははっ… 上着を脱ぐから、少しだけ待て!」
渋々離れるアスカルを嬉しそうに見下ろしながら、グランデはいそいそと、魔獣臭いマントと上着を脱ぎ捨てる。
「・・・・・・」
騎士服の下に着ている白いシャツの上から、アスカルは逞しい身体をなで回し… 鋭く視線を動かしてグランデにケガは無いかと確かめた。
<グランデ様は優し過ぎて、僕が心配しないように、不都合なことは何も言わず黙っているから… 僕の方がいつも先回りをして、気を付けていないとね!>
「大丈夫だアスカル! オレにケガは無い… あってもアユダルが綺麗に治療してくれるから、何も心配することは無い」
「ああ、アユダルさんは元気にしていますか? ここ最近、彼はとても忙しそうで… 僕も毎日、騎士団へ行くのに、顔を見ていないのです… 彼こそあまり無理をさせないように、気にしてあげないと…」
「その辺りのことは、オレの部下たちが目を光らせているから、大丈夫だ!」
未婚で番がいない若いオメガを、アルファだらけの職場で働かせるのなら、嫌がらせをされたり、関係を迫られたりだとか、その手の問題を未然に防ぎ、アユダルが自分の力を存分に発揮できるような、働きやすい環境を作る責任がグランデにはある。
グランデは信頼する部下たちに、アユダルから目を離さず、なるべく助力することを指示していた。
「でもまぁ… アユダルさんが、無理してでも頑張りたくなる気持ちも、理解できるから、仕方ないかな…?」
グランデにケガがないことを確認し終えると、アスカルは今度こそギュッ… と広い胸に抱き付いた。
「そうだな」
グランデの専属治療師として、アユダルはレガロ伯爵家が雇っていることになってはいるが… 実際にはケガが多い、下級貴族出身の騎士たちを治療するのがほとんどである。
週に何度も起きる魔獣の襲撃にアユダルは同行し、分け隔てなく黙々と治療を進めるため… 患者をえり好みする、元からいる治療師たちの存在が霞んで見えるほど、アユダルの目覚ましい働きが、目立つようになっていた。
そこでグランデは、アユダルが治療した2ヶ月分の治療記録を王太子アニマシオンに提出すると…
それまでの常識はくつがえされ、黒騎士団史上初めてのオメガの治療師アユダルが、正式な騎士団付き治療師となることが決まったのだ。
魔王討伐を前にして、アユダルに続き、2人目、3人目と… オメガの治療師を確保しようと、王太子の指示で交渉も始まっている。
グランデは執務室の明かりを落とし… アスカルを抱き上げると、熱烈なキスを交わしながら、当主の部屋へと向かう。
いつの間にか日が暮れ、夕食もお茶を飲む時も、数冊に渡る手記のページをめくる手を休めることなく、夜明け近くになってもアスカルは時間を忘れ、夢中で読み耽ってしまう。
不意にギュッ… と肩をつかまれ、アスカルは執務机の椅子の上で驚きのあまり、飛び跳ねた。
「ひゃあっ?!!」
「おい、アスカル! こんな時間まで、何をしているんだ? 身体を壊すぞ?!」
5日ぶりに帰宅したグランデが、心配そうにアスカルの顔をのぞき込んだ。
少しでも夫婦の時間を持ちたくて、毎朝アスカルは、騎士団本部に朝食を届けに通っているため、グランデの顔を見たのは、久しぶりというわけではないが…
やはり自分の元へ帰って来た、愛する夫と顔を合わせるのは、格別の喜びを感じるものである。
「わあっ! グランデ様、お帰りなさい!!」
ガタタッ… と椅子から立ち上がり、アスカルは嬉しくて、甘えるように抱き付こうとするが…
「こら! ダメだアスカル! 待て、待て! 魔獣の返り血を浴びているから、お前まで臭くなってしまうぞ?!」
細い腰をつかみグイィーッ… と自分から離そうと押し返すグランデに、アスカルは子供のように頬をぷぅ~っ… とふくらませた。
「もう! グランデ様、少しぐらい大丈夫ですよ! 意地悪を言わないで下さい!!」
「ははははっ… 上着を脱ぐから、少しだけ待て!」
渋々離れるアスカルを嬉しそうに見下ろしながら、グランデはいそいそと、魔獣臭いマントと上着を脱ぎ捨てる。
「・・・・・・」
騎士服の下に着ている白いシャツの上から、アスカルは逞しい身体をなで回し… 鋭く視線を動かしてグランデにケガは無いかと確かめた。
<グランデ様は優し過ぎて、僕が心配しないように、不都合なことは何も言わず黙っているから… 僕の方がいつも先回りをして、気を付けていないとね!>
「大丈夫だアスカル! オレにケガは無い… あってもアユダルが綺麗に治療してくれるから、何も心配することは無い」
「ああ、アユダルさんは元気にしていますか? ここ最近、彼はとても忙しそうで… 僕も毎日、騎士団へ行くのに、顔を見ていないのです… 彼こそあまり無理をさせないように、気にしてあげないと…」
「その辺りのことは、オレの部下たちが目を光らせているから、大丈夫だ!」
未婚で番がいない若いオメガを、アルファだらけの職場で働かせるのなら、嫌がらせをされたり、関係を迫られたりだとか、その手の問題を未然に防ぎ、アユダルが自分の力を存分に発揮できるような、働きやすい環境を作る責任がグランデにはある。
グランデは信頼する部下たちに、アユダルから目を離さず、なるべく助力することを指示していた。
「でもまぁ… アユダルさんが、無理してでも頑張りたくなる気持ちも、理解できるから、仕方ないかな…?」
グランデにケガがないことを確認し終えると、アスカルは今度こそギュッ… と広い胸に抱き付いた。
「そうだな」
グランデの専属治療師として、アユダルはレガロ伯爵家が雇っていることになってはいるが… 実際にはケガが多い、下級貴族出身の騎士たちを治療するのがほとんどである。
週に何度も起きる魔獣の襲撃にアユダルは同行し、分け隔てなく黙々と治療を進めるため… 患者をえり好みする、元からいる治療師たちの存在が霞んで見えるほど、アユダルの目覚ましい働きが、目立つようになっていた。
そこでグランデは、アユダルが治療した2ヶ月分の治療記録を王太子アニマシオンに提出すると…
それまでの常識はくつがえされ、黒騎士団史上初めてのオメガの治療師アユダルが、正式な騎士団付き治療師となることが決まったのだ。
魔王討伐を前にして、アユダルに続き、2人目、3人目と… オメガの治療師を確保しようと、王太子の指示で交渉も始まっている。
グランデは執務室の明かりを落とし… アスカルを抱き上げると、熱烈なキスを交わしながら、当主の部屋へと向かう。
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