辺境に捨てられた花の公爵令息

金剛@キット

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22話 宿

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 王都を出て、シルト一行が最初の宿に着いたのは、日が暮れるギリギリの時間だった。


「リヒト! 宿に着いたから休めるぞ… 食事は摂れそうか?」
 一時は治まっていたリヒトの発情は、再びぶり返し…
 抱いて馬を走らせるシルトの方にも、リヒトのフェロモンの影響が出始めていた。

「んんっ…」
 真っ赤な顔で赤金色の瞳を潤ませて、シルトを見上げ…
 ブルブルと震えながら、リヒトは微かに首を横に振る。


「…ダメか?」
 発情を誘発されかけているシルトの声も、熱っぽくかすれていた。

「・・・っ」
 シルトの声を聞き苦痛に耐えるように、ギュッと瞳を閉じてリヒトはうなずいた。

 声を聞いただけで、リヒトの身体は敏感に感じてしまっているのだ。

 キスをどれだけしたくても、シルトはその様子を見て堪える。



 社交シーズンが、すでに終わっている為、宿の客はシルトたち以外にアルファはおらず、ベータの行商人が2人いるだけで、ホッと胸を撫で下ろした。

 貴族は魔力を持って生まれる、アルファとオメガで構成されているが…
 平民たちの中にも、数は少ないがアルファやオメガは存在する。

(ベータには魔力を蓄積する素養が無く、魔法が使えない)

 生まれは貴族でも魔法が使えなければ、貴族階級に属するのは難しく…
 魔法を使えない者は、裕福な平民と婚姻を結び、平民の身分になることが多いからである。

 宿の主人に、医者はどこにいるかと尋ねたところ、近くの町に行けばいるらしいが…
 使いを出して連れ帰るまでに、深夜近くになるという話だ。

 魔法を使える者同士であれば、連絡用の魔道具を使いもっと早く効率的に出来るのだが…
 残念ながら魔法が使えない平民たちは、連絡には使いの者を出すのが一般的だった。



 シルトの腕に抱かれたまま、宿の主人の話を聞いたリヒトは…
 絶望で顔を歪ませ、涙ぐんだ。


「大丈夫だ私が側にいる! リヒト、もう少しの我慢だ」
 小さな声で、リヒトにだけ聞こえるようにシルトは励ました。
 涙ぐみながらも、リヒトは笑顔を見せうなずく。


「冷めても食べれそうな食事を、私の部屋に2人分運んでくれ… それと湯あみの用意だ! 急げよ!!」
 少し多めの金を宿屋の主人に渡すと…

「はい、旦那様!! 大急ぎでご用意させます!!」
 主人は目の色を変え、ニコニコと張り切って請け合う。


「後は、お前たちに任せた!!」

 臣下たちに威厳をたっぷり込めてうなずき、シルトはリヒトを抱いたまま…

 宿屋の主人の娘に案内され、上階の1番大きな部屋へと通された。



 





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