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43話 シルトの家族4
しおりを挟むフォーゲルの居室へと、リヒトはギュッと手を握られたまま、連れて来られると…
「今は私のお下がりで我慢してね… 時間が出来たら、流行の新しいのを揃えに行こう」
クローゼットの中から次々と出された、フォーゲルの服をリヒトは身体に当てられ…
似合う服、似合わない服と分別され、目の前にドンドン積まれて行く。
「奥様とリヒト様の身長は、同じぐらいなので、身体にピタリとくっ付いて、線が目立つような型で無ければ、お直しをしなくても良さそうですね」
ベータの侍女がクローゼットの奥から、新しい服を出して吟味しながら口を開いた。
「私は頂けるだけでも、身に余る光栄です… どうか、お気をわずらわせないで下さい」
2人の勢いに圧倒されながら、控えめな態度でリヒトは遠慮がちに口を挟んだ。
いつも母が選んで与えられた服を、何も考えずそのまま着ていたリヒトは…
自分に似合う服がどういうものかさえ分からず、呆然と立ち尽くしていた。
「まぁリヒト、アナタこそ、気にしてはいけませんよ!」
生真面目なリヒトの意見は右から左に、スルりと流され…
元々、王都出身で、オシャレ大好きのフォーゲルは、欲望のまま大騒ぎでベータの侍女と共に、リヒトの服を選んだ。
「奥様、こちらの朱色のものはどうでしょうか? リヒト様の美しい赤金色の瞳に合うのではありませんか?」
ふわふわとウサギの毛皮で襟元を飾った、暖かそうだが少々派手なものを、リヒトの胸に当てる侍女。
侍女の持つ服の派手さにギョッ… と、するリヒト。
「でもね、リヒトの美しい孔雀色の髪がもっと映える色のものが良いと思うのだけど…」
侍女と話しながら、フォーゲルは、宝石が縫い付けられた、赤茶色(すごく派手な)の服をリヒトに当てる。
「困りましたね… 何を着てもお似合いになりそうで、こうなると選ぶのが一苦労でございますね!」
金糸で繊細な刺繍が施された、見るからに豪華で高価そうな服を、侍女がリヒトに当てた。
「奥方様… 私はそちらの、焦げ茶色のモノが…とても、暖かそうで… それに魔獣退治にも参加しますし、汚れてしまうと勿体ないので… 出来れば騎士用のものが有れば…」
1番地味そうなのを、指差したリヒト。
「あら、リヒト! 今選んでいるのは晩餐用で、魔獣退治用はまた別に選ばないとね!! それに普段着用も!!」
「ああ…っ…」
リヒトの心が折れそうになっていると、フォーゲルたちも気付いたが… あえて気付かなかない、ふりをした。
「いっそのこと、シルト様に合わせてはどうでしょうか? こちらなどは、ピッタリかと… 奥方様も以前は良く、旦那様に合わせたものを、好んで着ておられたでしょう?」
侍女は淡い空色の生地に、銀糸で刺繍が施されたものを手に取り、リヒトの胸に当てた。
「確かにそれなら、リヒトの髪も美しく映えて、良いのだけど…」
急にフォーゲルの口が重くなり、瞳が陰った。
何故かは分からないが、急にフォーゲルは暗い空気をまといリヒトを見つめた。
侍女と共に、リヒトもフォーゲルの心の変化を読み取り、慌てて…
「あ、あの! 私はフォーゲル様が手に持った、服の色が好きです!!」
フォーゲルの手にあるチャコールグレーに豪華な金糸の刺繍が施されたものを、リヒトはとっさに指差した。
「おや? リヒトは若いのに、華やかなものよりも渋い色が好みなの?」
「はい!」
「確かに… 鮮やかな孔雀色の髪と、赤金色の瞳の組み合わせなら、こういう渋い色が合うね」
ふむふむと、機嫌良く、頷くフォーゲル。
「・・・・・・」
<そういえば… ああいう色は、父上が良く着ていた服の色だ…>
刑場での父親の姿を思い出し、胸にチクリと痛みを感じた、リヒトは苦笑いを浮かべた。
「今夜はこれを着るとして、ひとまず他のものは、シルトの部屋へ移しておきましょう」
侍女が山になった服を、シルトの部屋へと運んで行く。
「あの… 私は使用人用の部屋では無く、シルト様のお部屋に… ですか?!」
フォーゲルと2人きりになり、リヒトはシルトの部屋で、寝起きをするのかとたずねた。
「今のところ婚姻はまだ、済ませてないから… それでも良いでしょう」
「婚姻を済ませて無い…?」
「リヒト、そのことで少し、話をしましょう」
再びフォーゲルの瞳が陰った。
「はい…」
リヒトは、嫌な予感がした。
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