67 / 178
65話 カルト騎士団の団長 シルトside
しおりを挟む
神殿で朝の祈りを終え、リヒトが夕暮れ時から始まる祭祀に向けて、休息を取っている間…
面倒な辺境伯の仕事を片付けようと、シルトはカルト騎士団の宿舎へと足を運んでいた。
「さてと… ヴァイネン殿、下級騎士たちから話は聞いたが、昨夜、魔獣退治に参加しなかった理由を、アナタの口から聞かせてもらおうか?」
宿舎内の団長執務室で、ソファセットに腰を下ろしたシルトは…
年齢は30を少し過ぎたぐらいの、目の前に座る横柄な態度の男、カルト騎士団団長ヴァイネンから、くだらない言い訳を聞き出そうとしていた。
このヴァイネンという男は、国中から優秀な騎士が揃えられた王立騎士団に…
昔、所属していたことが自慢らしく、いまだに何かというと王立騎士団ではこうだった、ああだったと自慢げに愚痴をこぼすのだ。
<騎士としてはそこそこ頼りになる男なのに… 本当に残念な奴だ!>
学園生時代シルト自身、王立騎士団団長に剣と魔法の腕を見込まれて、何度も誘われたことがあるが…
今はそのことを、言うのが面倒だから、ヴァイネンには内緒にしている。
「そういうシルト殿こそ、王都から性奴隷を連れ帰り、骨抜きにされていると聞いておりますが… いくらお若いとはいえ、このシュネー城塞の長を務める者として、いかがなものでしょうかね?」
シルトの後ろで控えていたオーベンとフェルゼンが、ヴァイネンの無礼な物言いに、息を呑んだ。
2人の側近たちをチラリと見て、ヴァイネンは意地悪そうに笑った。
「ほう? そのことは知っておられるのに、昨夜の魔獣襲撃は知らなかったと?」
顔色を変えずシルトも、安い挑発を仕掛けたヴァイネンを鼻で笑った。
「おや? 奴隷に骨抜きにされているのは、否定されないのか? 奴隷と遊びたいなら、早くナーデル殿を妻に迎え、子を作ってしまえば、誰も文句は言わないでしょうに」
たるんだ腹をゆすりながら、ヴァイネンは笑った。
「本当に… 知らないとは怖いことですなぁ… ヴァイネン殿、アナタは今、私の心配をしている場合では無いのではありませんか?」
耳の穴を節太い小指でぐりぐりとほじり、シルトは面倒臭そうにヴァイネンと話しながら、耳かすをフウッ~… と吹き飛ばした。
「ほう? 私に何か知らないことが、あるとは?」
負けじとヴァイネンは自分を大きく見せようと…
シルトより2回りは縦に短い身体を伸ばして、ソファにふんぞり返る。
「…ところでヴァイネン殿、昨夜はずいぶんと、酒場で部下の騎士たちと楽しんだそうですな? それで魔獣の襲撃に間に合わなかったと聞いていますが?」
「いやいや、シルト殿… 我々とて呼ばれれば参上しましたがね、運悪く飲みに出ていた為に、手柄に目が眩んだ下級騎士たちは、故意に我々上級騎士を呼びに来なかったのですよ… 全く奴らときたら!」
いかにも無念だと言いたげに、ヴァイネンは首を振る。
「ヴァイネン殿が行かれた酒場というと… カッツェの店ですかな?」
気の無い素振りでシルトはたずねた。
「ああ、そうですあの店です」
「ふむ… ならばアナタ方、カルト騎士団の上級騎士たちは、全員牢獄へ入ってもらわねばなりませんな」
さらりと耳を疑うような話をするシルトに…
流石のヴァイネンは目をむいた。
「な… 何ですと?! 何と無礼な!! 先程、言ったように、我々が魔獣退治に参加出来なかったのは、下級騎士たちが魔獣襲撃の連絡を怠ったからだと、言ったではありませんか!!」
顔を赤くして立ち上がり、シルトを睨み付けるヴァイネン。
面倒な辺境伯の仕事を片付けようと、シルトはカルト騎士団の宿舎へと足を運んでいた。
「さてと… ヴァイネン殿、下級騎士たちから話は聞いたが、昨夜、魔獣退治に参加しなかった理由を、アナタの口から聞かせてもらおうか?」
宿舎内の団長執務室で、ソファセットに腰を下ろしたシルトは…
年齢は30を少し過ぎたぐらいの、目の前に座る横柄な態度の男、カルト騎士団団長ヴァイネンから、くだらない言い訳を聞き出そうとしていた。
このヴァイネンという男は、国中から優秀な騎士が揃えられた王立騎士団に…
昔、所属していたことが自慢らしく、いまだに何かというと王立騎士団ではこうだった、ああだったと自慢げに愚痴をこぼすのだ。
<騎士としてはそこそこ頼りになる男なのに… 本当に残念な奴だ!>
学園生時代シルト自身、王立騎士団団長に剣と魔法の腕を見込まれて、何度も誘われたことがあるが…
今はそのことを、言うのが面倒だから、ヴァイネンには内緒にしている。
「そういうシルト殿こそ、王都から性奴隷を連れ帰り、骨抜きにされていると聞いておりますが… いくらお若いとはいえ、このシュネー城塞の長を務める者として、いかがなものでしょうかね?」
シルトの後ろで控えていたオーベンとフェルゼンが、ヴァイネンの無礼な物言いに、息を呑んだ。
2人の側近たちをチラリと見て、ヴァイネンは意地悪そうに笑った。
「ほう? そのことは知っておられるのに、昨夜の魔獣襲撃は知らなかったと?」
顔色を変えずシルトも、安い挑発を仕掛けたヴァイネンを鼻で笑った。
「おや? 奴隷に骨抜きにされているのは、否定されないのか? 奴隷と遊びたいなら、早くナーデル殿を妻に迎え、子を作ってしまえば、誰も文句は言わないでしょうに」
たるんだ腹をゆすりながら、ヴァイネンは笑った。
「本当に… 知らないとは怖いことですなぁ… ヴァイネン殿、アナタは今、私の心配をしている場合では無いのではありませんか?」
耳の穴を節太い小指でぐりぐりとほじり、シルトは面倒臭そうにヴァイネンと話しながら、耳かすをフウッ~… と吹き飛ばした。
「ほう? 私に何か知らないことが、あるとは?」
負けじとヴァイネンは自分を大きく見せようと…
シルトより2回りは縦に短い身体を伸ばして、ソファにふんぞり返る。
「…ところでヴァイネン殿、昨夜はずいぶんと、酒場で部下の騎士たちと楽しんだそうですな? それで魔獣の襲撃に間に合わなかったと聞いていますが?」
「いやいや、シルト殿… 我々とて呼ばれれば参上しましたがね、運悪く飲みに出ていた為に、手柄に目が眩んだ下級騎士たちは、故意に我々上級騎士を呼びに来なかったのですよ… 全く奴らときたら!」
いかにも無念だと言いたげに、ヴァイネンは首を振る。
「ヴァイネン殿が行かれた酒場というと… カッツェの店ですかな?」
気の無い素振りでシルトはたずねた。
「ああ、そうですあの店です」
「ふむ… ならばアナタ方、カルト騎士団の上級騎士たちは、全員牢獄へ入ってもらわねばなりませんな」
さらりと耳を疑うような話をするシルトに…
流石のヴァイネンは目をむいた。
「な… 何ですと?! 何と無礼な!! 先程、言ったように、我々が魔獣退治に参加出来なかったのは、下級騎士たちが魔獣襲撃の連絡を怠ったからだと、言ったではありませんか!!」
顔を赤くして立ち上がり、シルトを睨み付けるヴァイネン。
5
あなたにおすすめの小説
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる