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71話 弟
しおりを挟む仮の私室がある上階から、城主館の玄関ホールへ降りると、そこには仕立てたばかりの真新しいプファオ騎士団の騎士服を着た、弟ヴァルムと副騎士団長のタイヒが…
リヒトたちをソワソワと落ち着きなく玄関ホール中を歩き回りながら待っていた。
「…兄上!!」
兄リヒトの姿を見つけると、人懐こい子犬のように、ヴァルムはパタパタと足音を立てて走り寄った。
プファオ公爵家の特徴である、孔雀色の艶やかな髪を項で一本に縛り、赤金色の瞳を涙でうるうるとさせている。
「ヴァルム… 少し見ない間に、立派になったね!」
シルトよりは2回りほど小さいが、オメガのリヒトよりは、ずっと大柄なアルファの弟をギュッと抱きしめた。
「兄上こそ… とても… とても…っ! うっ… うううっ…」
涙ぐみながらヴァルムも、大きな身体で細身のリヒトを、ギュウギュウと抱きしめる
「泣いてはダメだよヴァルム、今のお前は、見習いでも騎士服を着ているのだから… 人前で泣いたりしたら、お前に守られる人たちが、プファオ騎士団の騎士は大丈夫なのかと、不安になるだろう?」
グスグスと泣く弟の、大きな背中をトントンと叩き、リヒトは穏やかにいさめた。
「そ… それは… 魔獣退治…の場で…大丈夫だと… 証明する…つもりですから…!」
「そう思うなら、一緒に戦う騎士たちに笑われないよう、泣き止みなさい!」
言い訳をする弟に、リヒトも笑いながら涙を流し、叱咤する。
「もう、分かりましたよ! 兄上は本当に厳しいですね? 段々父上そっくりになって来ましたよ?」
ようやく抱き締めるのを止め、ヴァルムは目を真っ赤にして、リヒトを見下ろした。
「父上は元気? 母上は?」
弟を見上げながら、リヒトがたずねると…
「えっ?! 父上と兄上は、3日に1度は幻鳥を使って、連絡を取り合っているでしょう? 私よりも知っていると思っていた!」
ヴァルムは驚いた顔をする。
国王の信頼厚い公爵は、国政に深く関わっているせいで、公爵邸には帰らず王宮に何日も泊まり、仕事をすることは珍しくなかった。
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困った顔でリヒトは、側に立っているシルトに視線を移した。
「そうなのですか? 父がいつも連絡用の幻鳥が届く度に、兄上の状況を逐一教えてくれるから… 兄上も私たちの状況を、知っているのかと思っていました」
戸惑いながらヴァルムも、兄からシルトへと視線を移した。
「公爵の伝文はいつも簡潔だからな…」
体格が違うが、同じ色を持つよく似た兄弟の視線を受けて、シルトは微笑みながら、口をはさんだ。
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