辺境に捨てられた花の公爵令息

金剛@キット

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108話 蜜月が明けて

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 重臣たちと、シルトの側近たちの心遣いで…
 新婚のシュナイエン辺境伯夫妻は、私室に7日間こもり、2人きりで蜜月を堪能することが出来た。
(2人に子作りをさせ、早々に跡継ぎ問題を解消するのが、重臣たちの狙いである)

 だからと言って、2人に課せられた仕事まで無くなるわけではなく…
 7日分の仕事は全て、山積みにされていた。

 城主館の執務室で、大嫌いな書類仕事をするシルトと側近のフリーデンは、魔窟の森を監視する見張台から届いた報告を読んで、満足そうにうなずいた。


「瘴気どころか… 魔窟の森自体が昨日の祭祀でさらに小さくなりましたか!! 素晴らしい!!」
 珍しく興奮気味のフリーデンは、魔力があまり強い方ではなく、騎士としては有能とは言えないが…
 執務(事務)に関しては別で、側近の中で1番処理能力が高く、フリーデンの仕事場は主に魔獣退治の戦場ではなく、城主館の執務室である。
 
「"花の令息"の存在は、我々人間には計り知れないものがあるな! これも女神の導きというやつだな」
 インク壺でペンにインクを付けると…
 シルトはカルト騎士団に雇われていた下級騎士たちを、シュナイエン騎士団に入団させる契約書類に署名を入れ、フリーデンに手渡した。


「騎士の数もそこそこ揃いましたし、本当にこれで一安心ですね!」



 リヒトの判断で、今度はシルトも参加して、改めて正式な作法で祭祀をやり直した。

 長年の経験があり祭祀には慣れていると言っても…
 リヒトとシュピーゲルだけでは魔力が足りず、祭祀で出来ることが限られてくる。 

 …だが、

『ふふふ… 私の旦那様の魔力は、国王陛下以上に強いですね、頼もしいです! それに魔力交換のせいか、シルト様は初めてなのに、驚くほど円滑に進められましたし…』

『なんだリヒト、惚れ直したか? 遠慮せずに抱き着いても構わないぞ!』

 前日、リヒトはニコニコと微笑み、祭祀の後で夫のシルトを自慢げに褒めちぎり…
 シルトはニヤニヤと笑い、新妻を抱き上げた。

 祭祀でのシルトや国王の役目は、リヒトとシュピーゲルだけでは足りない、魔力を供給することである。

 王族は王国の貴族たち(3公爵以外)に比べると魔力が強く…
 辺境伯家の血筋は、魔獣から国を守護するという立場上、王族と同等の強い魔力を保持していた。


「そろそろ昼食の時間だ、リヒトを神殿に迎えに行くか!」
 執務机の椅子から腰を上げ、シルトはいそいそと執務室を逃げ出す。

「もう、お腹が減ったのですか? まだ昼食には早いと思いますよ、シルト様!」

 やれやれと呆れた顔をしながら、フリーデンは手渡された書類に不備は無いかと確認し…
 新婚だから仕方ないか… と苦笑を浮かべ、フリーデンはシルトの大きな背中を見送った。







 神殿の奥にある、神官長の小さな執務室で、リヒトとシュピーゲルの2人は…
 難しい顔で、連絡用の幻鳥が届けた伝文を見ていた。


「珍しいなリヒト、おまえが祈りの場に居ないなんて」
 迎えに来たシルトは、リヒトの強張らせた顔を見て、心配そうに眉をひそめ…

「シルト様…」

「何かあったのか?!」
 不安そうな顔をするリヒトの細い腕を、シルトはなだめるように撫でた。

「シルト様… たった今、王都の大神官ヴァッサーファル様から連絡が来たのですが…」
 途中まで話して、シュピーゲルは言いよどむ。

「それで何だ? はっきり言えシュピーゲル」
 イライラとシルトは、先をうながすと…

「西方の魔窟の森が広がり、瘴気が大量に発生し、王都ブルーメの浸食を始めたそうです」
 シュピーゲルの代わりにリヒトが答えた。

「瘴気?! 王都が、魔獣の襲撃を受けたのか?!」
 流石のシルトも顔色を変えた。


「はい」








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