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117話 回想 プファオ公爵side
しおりを挟む王宮の一室で、金と青で彩色された華奢な形のティーカップを持ち上げ、王室御用達の最高級の茶葉で淹れた琥珀色のお茶を飲んだ。
今日もプファオ公爵は国王陛下への謁見を希望し、仕事の合間に時間が許す限り、待ち続けていた。
<いくら何でもこれはおかしい!! シュロス王妃が亡くなり、悲観に暮れふせっていた時でさえ、私が謁見を申し込めば必ず陛下は会ってくれたのに…>
シルトの叔母であり、"花の令息"だったシュロス王妃と国王は、誰が見ても相思相愛だった。
学園生時代から、国王の親友だったプファオ公爵は…
子供の頃から婚約していた2人が、穏やかに愛を育む姿を、1番近くで見ていた。
<身体の弱かったシュロス王妃との間に、王子が生まれなかったのが本当に残念だ!>
プファオ公爵はカップを薄い唇に付けながら、眉間にシワを寄せ…
自分自身の不愉快な感情に耐えた。
<愚かなフリーゲなどを王太子に据えることも無かったはずだ!! それも尻軽側妃(現王妃)が産んだ他人の種で出来た子供などを!!>
王太子フリーゲが学園に入る前、国王とプファオ公爵はフリーゲの資質、容姿が少しも国王に似ていないことに疑問を持ち…
プファオ公爵が信頼の置ける魔力開発の研究者に、フリーゲの魔力を本人も含め秘密裏に、精密な検査を依頼した。
魔力は詳しく解析すると、その者の両親から受け継いだ魔力の特性が混在している。
例えば、父親のように風魔法が使えないシルトであっても、詳細に解析すれば、風魔法の要素が微量だがシルトの魔力の中に存在するという話である。
国王の氷結魔法の要素が、フリーゲには一切存在しなかった。
フリーゲ誕生の際にも同じ検査は行われたことから…
恐らくその時、検査の結果を改ざんし、誰かが不正を犯したのは間違い無い。
『国王陛下、新しい王妃を娶るべきです!』
フリーゲが国王の子では無いと判明した時、プファオ公爵は忠臣として進言した。
『プファオよ、国王が娶る王妃は女神の加護を得るために"花の令息"と決まっている』
国王はプファオ公爵の進言に、心底不快そうに答えた。
『はい、存じております陛下!』
膝の上で握った公爵の拳が密かに震えていた。
『お前は自分の息子を… 幼いリヒトを私の妻に差し出すと言うのか? あの健気な子を?!』
声を荒げ国王は、八つ当たりだと自覚しつつ、怒りをプファオ公爵にぶつけた。
『この国の… シュメッターリング王国と民の安寧の為です、陛下にも、私にも、そして幼いリヒトにも… その責任と義務があります!』
プファオ公爵は血を吐くような思いで、国王に忠言した。
『出来ぬプファオ、私には子を成す能力がもう無いのだ…』
国王は顔を伏せて、弱々しく答えた。
『陛下?! それは… 優秀な治療師を呼んで…っ』
同じアルファとして公爵も理解できる、苦痛を伴う告白をしなければならなかった国王を気遣いつつ、不妊治療をすすめようとするが…
国王は手を上げて、公爵の言葉をさえぎった。
『何度か治療を受けたが… 侍医の診断が正しければ、私がリヒトを娶っても王子は生まれない』
国王の言葉を信じ、プファオ公爵は進言を取り下げるしかなかった。
…だが、それ以来ずっと疑っている。
<あれは、リヒトの為を思い国王陛下がついた嘘だったのではないか?>
結局、王家の血よりも、"花の令息"を王妃に迎えることが何よりも重要だと…
国王の意向に従い、プファオ公爵は真実にふたをし、フリーゲを王太子に立てたまま沈黙を守る。
フリーゲの魔力は母方の緑の魔法と、わずかだが火の魔法が存在していた。
火の魔法と言えば、リーラ公爵家が有名だが…
プファオ公爵家の雷魔法のように珍しいものではなく、火の魔法自体はよくある魔法である。
<現王妃は、リーラ公爵夫人の従兄弟に当たるオメガだ、接点がある以上リーラ公爵がフリーゲの父親と言う線は捨てきれない… まぁ誰が実父でも、状況は変わらないが>
「陛下と私が不愉快に思うだけで…」
ぽつりとつぶやき、公爵はお茶を飲み干したティーカップを…
カチャッ… と小さな音を立てて、皿の上に戻した。
大きなため息をつき、眉間を指でもみ解す。
コンッ… コンッ… 扉が叩かれ、国王陛下の補佐官の1人が顔を出した。
「プファオ公爵様、お待たせ致しました、陛下の侍医殿から、面会の許可が出たのでご案内します」
「おお… やっと出たか! 待ちくたびれたぞ」
頬を緩めプファオ公爵は腰を上げ、補佐官が開いた扉から廊下へと足早に出た。
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