辺境に捨てられた花の公爵令息

金剛@キット

文字の大きさ
135 / 178

133話 王立騎士団の苦境

しおりを挟む

 ヴァッサーファルが大神殿の支援者から、プファオ騎士団の騎士たちが、王立騎士団本部の地下牢に収監されていることを聞き出し…
 シルトたちはその情報を元に、夜になってから暗闇にまぎれ、王立騎士団本部に訪れる。

 敷地の裏で馬を降り、シルトはタイヒと視線を合せた。

 側近たちとヴァルムは、少し離れた場所で待たせてある。


「ここで待ちましょう! 王立騎士団に入団したばかりの頃、組んでいた騎士ですが、信用の出来る人ですから… 今は団長の執務を補佐していて、王宮の内情にも詳しいはずです」




 タイヒの友人が来るのを静かに待つと…
 しばらくしてマントを被った老騎士が現れ、タイヒが1人では無いと分かると警戒するように話し始めた。

「こちらも困っているのだタイヒ、副団長が捕縛されて、プファオ騎士団と共に、収監されているのだが…」
 タイヒの友人は怒りを隠せない様子だ。

「何故、副団長が捕縛されなければならないのだ?!」
 思わず隣で聞いていたシルトは口を挟んだ。

「アンタは誰だ?」
 タイヒの友人はいぶかしげにたずね…

「シュナイエン辺境伯のシルト殿だ!」
 すぐにタイヒが紹介すると…

「これは、失礼しました! 無礼をお許しください! 我々、王立騎士団もプファオ騎士団のように、北方で魔獣退治の経験を積んでいれば、このような苦境には立たずに済んだものを!! 本当に悔しい限りです!!」
 老騎士は自分の胸に手を当て、シルトに礼儀正しくお辞儀をした。

「同じ騎士として、最前線で魔獣と戦う騎士たちに、心から同情している! この厳しい状況を何とかしたくて、私たちはここに来たのだ!」
 自分よりも頭1つ分、小柄な老騎士の肩に手を置き、シルトは騎士の心に寄り添った。

「今の状況を話してくれ、もしかすると、力になれるかもしれない」
 タイヒも話に加わり、友人を説得する。

「魔獣との戦いに慣れているプファオ騎士団の騎士を中心に、王立騎士団の騎士が組んで戦うことで、辛うじて食い止めることが出来ていたというのに、突然王宮から王太子の命令でプファオ騎士団を連れて行かれて…」

「王太子の命令か… リーラ公爵が王太子を完全に取り込んだ証拠だな」
 シルトがつぶやくと、老騎士もうなずいた。


「主力の騎士たちを失い、残った我々王立騎士団だけでは対応できないと、少し前に戦場から戻り、副団長が王宮へ行き抗議したら、捕縛されたのだ!!」
 老騎士は悔し涙を浮かべ、夢中で話し続けた。

 魔窟の森の前で戦う仲間たちから、既に半数以上の騎士が、命を落としたという報告が、王立騎士団本部に幻鳥で届いているという。

 残りの半分もケガを負っても、治療師の数が少なすぎて、治療が間に合わない状態だと…


「魔窟の森からの瘴気の影響で、治癒魔法が掛かりにくいのではないか?」
  少し前のシュネー城塞がそうだった。

「その通りです、シルト殿! 今は魔窟の森の瘴気が少しだけ薄れ、魔獣の襲撃が止んでいますが、いつまた再開するか…」
 リヒトの祭祀の影響が出ているのだと、タイヒとシルトは顔を見合わせた。

「今のうちに騎士を全員、引かないと全滅するぞ!」

「ですがシルト殿、王立騎士団まで引けば、王都が丸裸になります」
 老騎士は流石に反論するが…

「このままでは、濃い瘴気に曝された騎士たちは、魔獣化してしまう! 全滅よりも恐ろしいことになる! 王都を守るどころか、魔獣化した騎士たちが、王都の民を襲撃するだろう」

「…まさか、そんな!!」
 シルトの話を聞くうちに、老騎士の怒りで赤かった顔が、恐怖で青ざめ強張って行く。

「魔窟の森に入った人間がどうなるか、知っているだろう? その魔窟の森がすごい勢いで、拡大しているのだから、のんびりしている暇は無いぞ!」
 当の王立騎士団の騎士でさえ、この調子である。

 シルトは焦燥しょうそう感を感じていた。


「・・・・・・」
 老騎士はようやく、魔獣を退治すれば良いだけの状況ではないと悟った。

「シルト殿、王立騎士団の団長はプファオ公爵と懇意にしていたはずです、もしかすると説得が、出来るかも知れません」 
 タイヒの提案にシルトはうなずいた。



「ならば、副団長もプファオ騎士団と一緒に、牢獄から出して説得を手伝ってもらおう… これで信じなければ、王立騎士団の全滅は回避できないしな!」








しおりを挟む
感想 47

あなたにおすすめの小説

勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました

鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」 そう言ったのは、王太子アレス。 そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。 外交も財政も軍備も―― すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。 けれど功績はすべて王太子のもの。 感謝も敬意も、ただの一度もない。 そして迎えた舞踏会の夜。 「便利だったが、飾りには向かん」 公開婚約破棄。 それならば、とレイナは微笑む。 「では業務も終了でよろしいですね?」 王太子が望んだ通り、 彼女は“確認”をやめた。 保証を外し、責任を返し、 そして最後に―― 「ご確認を」と差し出した書類に、 彼は何も読まずに署名した。 国は契約で成り立っている。 確認しない者に、王の資格はない。 働きたくない公爵令嬢と、 責任を理解しなかった王太子。 静かな契約ざまぁ劇、開幕。 ---

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

処理中です...