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本篇
第2話
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前回の続き。魔王討伐の最終決戦にて魔王と対峙したら聖女が発狂した。
♦︎
「はあああああ!!?何言ってんだお前!!!」
真っ先に正気に戻ったのは常日頃彼女の暴走を物理的に止める役目を気づけば負ってしまっていた戦士だった。
頬を愛らしく染めてきらきらとお星様を瞳に飛ばす聖女の両肩を真正面から掴んで揺さぶる。
「ちょ、邪魔。魔王様の国宝級の顔面が見えない」
「ぶっっ!!」
まるで蚊でも払うかの様に、聖女は魔王との直線上に割り込んできた戦士の手を振り払う。
恐ろしい速度で吹っ飛んでいった戦士の先に居た勇者は今までの経験から真面目に受け止めればこちらも怪我をする事が分かっている為にあえて飛んできた戦士を避ける。後ろの壁に衝突して壁が壊れる音がしたが、彼ならば瀕死にはなっても即死はないだろうと目を背ける。
「ふっ…ざけんなこのゴリラ女…!一瞬意識吹っ飛んだわ!死ぬだろうが!!」
「えっ、きゃああ!ごめんなさい!!やばいやばい、回復っ」
「ちょっ、それより今貴女なんて言いました?好き?相手分かってます?魔王ですよ!?」
「きゃああ!そんな、恥ずかしいからはっきり言わないでっ!」
「ぐっっ!!」
先ほど大声で叫んでいたくせに、何を今更恥ずかしがるのか。今度は照れた聖女に張り手を受けた魔法使いが魔王の玉座下に吹っ飛ばされる。
「……大丈夫か?」
「…うっ…これはどう、も…うおええええ…」
驚く事にあの魔王が自分の足元に吹っ飛んできた魔法使いに手を貸し、あまつさえ鳩尾をやられたのか不本意ながら吐いてしまった魔法使いの背を摩ってさえいる光景に勇者は眩暈を覚える。
「おいこら聖女──!!!魔法使いは戦士ほど肉体的には強くないんだからまじで気をつけろよ!まじで!!」
「きゃあああ!ごめんなさいごめんなさい!!!回復回復っ!」
「ちょ、すみません…そこの玉座お借りしてもいいですか…?」
「あ、ああ…」
聖女の張り手一発でふらふらになった魔法使いが魔王の玉座に腰掛け魔王直々に介抱されている。
俺達は何しにここへ…と勇者が言葉もなく立ち尽くしていると、この目も当てられないカオスな状況を瞬時に作り出した張本人、聖女がおずおずと勇者の背に隠れながら魔王に声を掛けた。
「あ、あの、あのっ、魔王様って恋人とか…いますかっ?」
びくりと魔王が肩を揺らす。
「な、何を言っているのだ貴様…」
「あのっあのっ、もしいないなら私…彼女候補に立候補してもいいですか?」
「頭沸いてるのか貴様。はっ、それともこんな子供騙しでこの俺様を惑わそうとでも言うのか?人族の聖女とやらは随分と尻が軽いらしい」
違います、頭沸いてるんです…と思いながら聖女に服ごと掴まれている肩の肉がギチギチと引き千切られそうになっている勇者は痛みで震える。
「そんな…っ!私はただ、貴方様を一目見た時からずっと…っ」
「一目見た時って、ついさっきだろうが。大体、貴様は人族の聖女だろう。この俺様を倒しにきたのではないのか!?」
「一目惚れしたので宗旨替えします」
「は!!?」
聖女以外の全ての者の声が重なる。
薄々お察しだろうがこの聖女、小さな体のどこにそんな力があるのかと100人が100人頭を捻り病院を紹介しようとしてくるほどに驚くべき怪力を秘めている。
加えて大層なおっちょこちょいで聖杖を壊すのは当たり前、旅の道中行く町行く町で備品を壊し、家屋さえも破壊してきた。
とてもありがたい聖女様なのだと勇者一同、時には国王陛下の名をチラつかせ旅を乗り切ってきたが、まさか最後の最後、惚れた腫れたでこんなとんでも発言が飛び出てくるとは流石に勇者も想像だにしていなかった。
「ちょ、ちょちょちょちょっと待ってくれ聖女!君は俺と同様に神から託宣を受けた身だろう!?」
「勇者様…」
勇者はがばりと振り返り聖女の目を覗き込む。勇者の真剣な眼差しに、聖女はぐっと声を詰まらせハッとした様に目を瞬かせる。
夢から覚めたような聖女のその様に、まさか魔王による魅了の魔法の類か─!?とつい緩み切ってしまっていた自身の気を再度引き結び──
「神は言いました。愛に生きそして愛に死ねと…。というわけで私は愛に生きます。神もお喜びになるでしょう」
「ええっ!?」
ギャグ漫画よろしく勇者は思わずズッコける。
戦士も魔法使いも白目を剥いている。
そして魔王に至っては何か理解の及ばないおぞましいモノを見る目つきで聖女を遠く離れた所から見ている。
あの魔王を怯えさせるとは、ある意味流石選ばれし聖女だな…と勇者はすっかりただの恋する乙女モードに変わり果てた少女にため息を一つ吐いた。
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「はあああああ!!?何言ってんだお前!!!」
真っ先に正気に戻ったのは常日頃彼女の暴走を物理的に止める役目を気づけば負ってしまっていた戦士だった。
頬を愛らしく染めてきらきらとお星様を瞳に飛ばす聖女の両肩を真正面から掴んで揺さぶる。
「ちょ、邪魔。魔王様の国宝級の顔面が見えない」
「ぶっっ!!」
まるで蚊でも払うかの様に、聖女は魔王との直線上に割り込んできた戦士の手を振り払う。
恐ろしい速度で吹っ飛んでいった戦士の先に居た勇者は今までの経験から真面目に受け止めればこちらも怪我をする事が分かっている為にあえて飛んできた戦士を避ける。後ろの壁に衝突して壁が壊れる音がしたが、彼ならば瀕死にはなっても即死はないだろうと目を背ける。
「ふっ…ざけんなこのゴリラ女…!一瞬意識吹っ飛んだわ!死ぬだろうが!!」
「えっ、きゃああ!ごめんなさい!!やばいやばい、回復っ」
「ちょっ、それより今貴女なんて言いました?好き?相手分かってます?魔王ですよ!?」
「きゃああ!そんな、恥ずかしいからはっきり言わないでっ!」
「ぐっっ!!」
先ほど大声で叫んでいたくせに、何を今更恥ずかしがるのか。今度は照れた聖女に張り手を受けた魔法使いが魔王の玉座下に吹っ飛ばされる。
「……大丈夫か?」
「…うっ…これはどう、も…うおええええ…」
驚く事にあの魔王が自分の足元に吹っ飛んできた魔法使いに手を貸し、あまつさえ鳩尾をやられたのか不本意ながら吐いてしまった魔法使いの背を摩ってさえいる光景に勇者は眩暈を覚える。
「おいこら聖女──!!!魔法使いは戦士ほど肉体的には強くないんだからまじで気をつけろよ!まじで!!」
「きゃあああ!ごめんなさいごめんなさい!!!回復回復っ!」
「ちょ、すみません…そこの玉座お借りしてもいいですか…?」
「あ、ああ…」
聖女の張り手一発でふらふらになった魔法使いが魔王の玉座に腰掛け魔王直々に介抱されている。
俺達は何しにここへ…と勇者が言葉もなく立ち尽くしていると、この目も当てられないカオスな状況を瞬時に作り出した張本人、聖女がおずおずと勇者の背に隠れながら魔王に声を掛けた。
「あ、あの、あのっ、魔王様って恋人とか…いますかっ?」
びくりと魔王が肩を揺らす。
「な、何を言っているのだ貴様…」
「あのっあのっ、もしいないなら私…彼女候補に立候補してもいいですか?」
「頭沸いてるのか貴様。はっ、それともこんな子供騙しでこの俺様を惑わそうとでも言うのか?人族の聖女とやらは随分と尻が軽いらしい」
違います、頭沸いてるんです…と思いながら聖女に服ごと掴まれている肩の肉がギチギチと引き千切られそうになっている勇者は痛みで震える。
「そんな…っ!私はただ、貴方様を一目見た時からずっと…っ」
「一目見た時って、ついさっきだろうが。大体、貴様は人族の聖女だろう。この俺様を倒しにきたのではないのか!?」
「一目惚れしたので宗旨替えします」
「は!!?」
聖女以外の全ての者の声が重なる。
薄々お察しだろうがこの聖女、小さな体のどこにそんな力があるのかと100人が100人頭を捻り病院を紹介しようとしてくるほどに驚くべき怪力を秘めている。
加えて大層なおっちょこちょいで聖杖を壊すのは当たり前、旅の道中行く町行く町で備品を壊し、家屋さえも破壊してきた。
とてもありがたい聖女様なのだと勇者一同、時には国王陛下の名をチラつかせ旅を乗り切ってきたが、まさか最後の最後、惚れた腫れたでこんなとんでも発言が飛び出てくるとは流石に勇者も想像だにしていなかった。
「ちょ、ちょちょちょちょっと待ってくれ聖女!君は俺と同様に神から託宣を受けた身だろう!?」
「勇者様…」
勇者はがばりと振り返り聖女の目を覗き込む。勇者の真剣な眼差しに、聖女はぐっと声を詰まらせハッとした様に目を瞬かせる。
夢から覚めたような聖女のその様に、まさか魔王による魅了の魔法の類か─!?とつい緩み切ってしまっていた自身の気を再度引き結び──
「神は言いました。愛に生きそして愛に死ねと…。というわけで私は愛に生きます。神もお喜びになるでしょう」
「ええっ!?」
ギャグ漫画よろしく勇者は思わずズッコける。
戦士も魔法使いも白目を剥いている。
そして魔王に至っては何か理解の及ばないおぞましいモノを見る目つきで聖女を遠く離れた所から見ている。
あの魔王を怯えさせるとは、ある意味流石選ばれし聖女だな…と勇者はすっかりただの恋する乙女モードに変わり果てた少女にため息を一つ吐いた。
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