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プロローグは突然に
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どことも知れない暗闇の中。ララは背後から迫り来る恐ろしいソレから逃れる為に息を切らし必死に走っていた。
走れども走れどもソレとの距離は開かず、次第に唸り声は大きくなっていく。
息が切れる。肺が苦しい。怖い。疲れた。止まりたい。けれど、足を止めた瞬間に、きっとソレの大きな顎門がぐわりと開かれ、そしてララを頭からガブリと一飲みにしてしまうだろうと思うと止まる事すら恐ろしくて出来ない。
ぜぇぜぇと荒い息を吐きながら、一体全体どうしてこんな事態になっているのだっけ、とふとララは思った。
「(…あれ?そもそもここはどこだっけ?あれ?おかしい…。そうだ、朝起きて、それで─)」
べろり。
湿り気を帯びた生暖かい何かがララの頬を舐める。
「お前がララだなぁ…!恨むなら…あのクソ魔女を恨むんだなぁあ!!」
♦︎
「っっうっぎゃああああああ……あ?」
ガバリと勢いよく上半身を起こすと、ララはドッドッドッ…と早鐘を打つ胸を押さえる。そして一度ゆっくりと深呼吸をしてから再度ぼすりと後ろへ倒れるようにしてベッドに身を沈める。
「はぁ~…おっそろしい夢を見た…」
ララは目を閉じて肌触りの良いシーツの感触を確かめるが、そこでふと我に帰る。はて、我が家のシーツはこんなに肌触りの良い上等なシーツだったっけ?と疑問に思ったところで急速に意識を失う前に起こった一連の出来事が脳裏を駆け抜けていった。
「ああああああ!!」
再びガバリと慌てて上半身を起こすときょろきょろと周囲に視線を投げる。
「ガルルゥッ!」
「ぎゃ───!!犬──!!!」
「ちょっとお嬢さん、落ち着きなさい」
「いや───!!おじいさん──!!!…ん?おじいさん?」
何故、一度目に起きた時に気づかなかったのか、ララが恐怖のあまり意識を手放す原因となった大きな黒い獣がララの寝ていたベッドから少し離れた大きなソファーに偉そうに寝そべりながら牙を剥いている。その恐ろしい光景に叫ぶと、ララに呼び掛ける声があった。もう何もかもが恐怖だと反射的に再び悲鳴を上げるが、しれっと視界に入ってきた第三者にララはベッドの上で不安定に立ち上がったままぱちくりとまばたきをする。
「……え、人?」
「ほほ、気がつかれたようで何よりです。さ、お嬢さん、こちらへどうぞ。お茶を淹れましょう」
「え?え?」
ベッドの上から動かないララに痺れを切らしたのはやはり、黒い獣だった。
「ッチ!いいからとっととこっちに来やがれ!!」
「っ!?」
獣の唸り声に驚いたララは大きく肩を跳ねさせるとベッドから転がり落ち再び臀部を床に強打させたのだった。
走れども走れどもソレとの距離は開かず、次第に唸り声は大きくなっていく。
息が切れる。肺が苦しい。怖い。疲れた。止まりたい。けれど、足を止めた瞬間に、きっとソレの大きな顎門がぐわりと開かれ、そしてララを頭からガブリと一飲みにしてしまうだろうと思うと止まる事すら恐ろしくて出来ない。
ぜぇぜぇと荒い息を吐きながら、一体全体どうしてこんな事態になっているのだっけ、とふとララは思った。
「(…あれ?そもそもここはどこだっけ?あれ?おかしい…。そうだ、朝起きて、それで─)」
べろり。
湿り気を帯びた生暖かい何かがララの頬を舐める。
「お前がララだなぁ…!恨むなら…あのクソ魔女を恨むんだなぁあ!!」
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「っっうっぎゃああああああ……あ?」
ガバリと勢いよく上半身を起こすと、ララはドッドッドッ…と早鐘を打つ胸を押さえる。そして一度ゆっくりと深呼吸をしてから再度ぼすりと後ろへ倒れるようにしてベッドに身を沈める。
「はぁ~…おっそろしい夢を見た…」
ララは目を閉じて肌触りの良いシーツの感触を確かめるが、そこでふと我に帰る。はて、我が家のシーツはこんなに肌触りの良い上等なシーツだったっけ?と疑問に思ったところで急速に意識を失う前に起こった一連の出来事が脳裏を駆け抜けていった。
「ああああああ!!」
再びガバリと慌てて上半身を起こすときょろきょろと周囲に視線を投げる。
「ガルルゥッ!」
「ぎゃ───!!犬──!!!」
「ちょっとお嬢さん、落ち着きなさい」
「いや───!!おじいさん──!!!…ん?おじいさん?」
何故、一度目に起きた時に気づかなかったのか、ララが恐怖のあまり意識を手放す原因となった大きな黒い獣がララの寝ていたベッドから少し離れた大きなソファーに偉そうに寝そべりながら牙を剥いている。その恐ろしい光景に叫ぶと、ララに呼び掛ける声があった。もう何もかもが恐怖だと反射的に再び悲鳴を上げるが、しれっと視界に入ってきた第三者にララはベッドの上で不安定に立ち上がったままぱちくりとまばたきをする。
「……え、人?」
「ほほ、気がつかれたようで何よりです。さ、お嬢さん、こちらへどうぞ。お茶を淹れましょう」
「え?え?」
ベッドの上から動かないララに痺れを切らしたのはやはり、黒い獣だった。
「ッチ!いいからとっととこっちに来やがれ!!」
「っ!?」
獣の唸り声に驚いたララは大きく肩を跳ねさせるとベッドから転がり落ち再び臀部を床に強打させたのだった。
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