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物理的に縮まる距離と心理的に縮まらない距離
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昼食のバタバタからそう時間も経たず、まだドキドキと心臓が落ち着かないままにララはシリウスの部屋を整えに来ていた。
シリウスの部屋の前の廊下、扉の取手に手をかけたままララは目をつむり、トーマスから聞いた注意事項と仕事の内容をよくよく思い出す。
「…まずはシーツとタオルの類を回収して、代わりに新しい物と取り替えて、水差しをベッド横のテーブルに置いて、窓を開けて空気を入れ替えて、部屋を掃除」
ララはそれらをぶつぶつと呟き繰り返す。
「そして何より大事なのは、それらを迅速に、ミスなく、静かに、閣下のご機嫌を損ねることなく全てを遂行すること…!!」
よしっ!と気合いを入れるとララは勢いよく扉を開ける。
「入ってくるならノックをしろ!!!」
「ひぃっ!すっ、すみませんでしたぁぁぁっ!!」
勢いよく開けた扉を勢いよく閉める。
半ベソをかきながらもう自室に帰りたい気持ちで一杯のララに、今し方閉めた扉の中から低くドスのきいた声がかかる。
「…一度開けたもんはもういいから、早く入ってこい!」
「はいぃぃっ!ただいまぁぁあ!!」
再び勢いよく扉を開ける。ガチャガチャガチャガチャと開閉を繰り返した蝶番がギイィ、と悲しげな音をたてる。ララはそれにすら肩を跳ねさせながらなんとか室内へと足を進めるとベッドの上でうつ伏せ寛ぐシリウスへと部屋を整えに来たことを告げる。
「(い、一番難易度の高いミッションのシーツ交換を最初にやっちゃおう…!)あ、あの~…閣下?その、シーツの交換を、ですね…」
「…ふんっ」
「あ!ありがとうございます!すぐにやりますから!!」
ララの言葉にシリウスは一つ鼻を鳴らすとのっそりと起き上がりベッドから降りる。
ララはすかさずベッドへ近づき、まずは素早くシーツを剥がそう!と勢い良くシーツを引っ掴み、そして──
「ぅわあっ!?」
「!?──チッ」
ベッドから剥いだシーツに見事に足が絡まり、そのまま勢いを殺せずに真後ろへララの体が倒れ込む。
──ドサァッ… モフッッッ!!!
「…」
「…」
「……」
「……」
「………」
「………」
後頭部に感じる生暖かい温度とモッフモフの感触に、ララの思考は停止する。
「…っぶねぇな。飯の準備もだが、そこまで急がなくていいから、落ち着いて丁寧に仕事しろ」
「…」
「おい?」
転倒したララの下敷きとなっていたシリウスが怒鳴るでもなく呆れてため息をつく。が、ララからの応答はない。
「おい、いつまで倒れてんだ」
「………ぎ」
「ぎ?」
「っっぎゃ────!!!!!」
「っ!?!?」
無言で跳ね起きたかと思えば、大絶叫をあげたララは再びシリウスの上へと倒れ込んで気絶した。
「…な、なんなんだこの女!?」
後頭部を床にしたたかに打ち付けるところだったのを身を挺して庇ったというのに、感謝をされるどころか力一杯叫ばれたシリウスは今度こそ背中に倒れ込んで気絶しているララをもう知らねえとばかりに床に振り落とした。
シリウスの部屋の前の廊下、扉の取手に手をかけたままララは目をつむり、トーマスから聞いた注意事項と仕事の内容をよくよく思い出す。
「…まずはシーツとタオルの類を回収して、代わりに新しい物と取り替えて、水差しをベッド横のテーブルに置いて、窓を開けて空気を入れ替えて、部屋を掃除」
ララはそれらをぶつぶつと呟き繰り返す。
「そして何より大事なのは、それらを迅速に、ミスなく、静かに、閣下のご機嫌を損ねることなく全てを遂行すること…!!」
よしっ!と気合いを入れるとララは勢いよく扉を開ける。
「入ってくるならノックをしろ!!!」
「ひぃっ!すっ、すみませんでしたぁぁぁっ!!」
勢いよく開けた扉を勢いよく閉める。
半ベソをかきながらもう自室に帰りたい気持ちで一杯のララに、今し方閉めた扉の中から低くドスのきいた声がかかる。
「…一度開けたもんはもういいから、早く入ってこい!」
「はいぃぃっ!ただいまぁぁあ!!」
再び勢いよく扉を開ける。ガチャガチャガチャガチャと開閉を繰り返した蝶番がギイィ、と悲しげな音をたてる。ララはそれにすら肩を跳ねさせながらなんとか室内へと足を進めるとベッドの上でうつ伏せ寛ぐシリウスへと部屋を整えに来たことを告げる。
「(い、一番難易度の高いミッションのシーツ交換を最初にやっちゃおう…!)あ、あの~…閣下?その、シーツの交換を、ですね…」
「…ふんっ」
「あ!ありがとうございます!すぐにやりますから!!」
ララの言葉にシリウスは一つ鼻を鳴らすとのっそりと起き上がりベッドから降りる。
ララはすかさずベッドへ近づき、まずは素早くシーツを剥がそう!と勢い良くシーツを引っ掴み、そして──
「ぅわあっ!?」
「!?──チッ」
ベッドから剥いだシーツに見事に足が絡まり、そのまま勢いを殺せずに真後ろへララの体が倒れ込む。
──ドサァッ… モフッッッ!!!
「…」
「…」
「……」
「……」
「………」
「………」
後頭部に感じる生暖かい温度とモッフモフの感触に、ララの思考は停止する。
「…っぶねぇな。飯の準備もだが、そこまで急がなくていいから、落ち着いて丁寧に仕事しろ」
「…」
「おい?」
転倒したララの下敷きとなっていたシリウスが怒鳴るでもなく呆れてため息をつく。が、ララからの応答はない。
「おい、いつまで倒れてんだ」
「………ぎ」
「ぎ?」
「っっぎゃ────!!!!!」
「っ!?!?」
無言で跳ね起きたかと思えば、大絶叫をあげたララは再びシリウスの上へと倒れ込んで気絶した。
「…な、なんなんだこの女!?」
後頭部を床にしたたかに打ち付けるところだったのを身を挺して庇ったというのに、感謝をされるどころか力一杯叫ばれたシリウスは今度こそ背中に倒れ込んで気絶しているララをもう知らねえとばかりに床に振り落とした。
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