55 / 60
第17章 背中を預けるということ
7
しおりを挟む
積むに積まれた大量のフェアリービーの巣が入った容器に腰を抜かした翌日。
ちょっとギルドに行って情報を仕入れてくる、と出掛けていったツバキが、げっそりとした顔で帰ってきた。
「し、師匠。どうでした? 何か分かりましたか?」
「……わけが分からない」
「え?」
ぼそぼそと呟くツバキに、ラーハルトは水が入ったコップを手渡しながら聞き返す。
「わけがっ! 分からない!!」
「ぅええっ!?」
と、突然ツバキが天井を仰いで叫び出した。
「あああああ……最近人気の冒険者さんなんですよぉ。ご存知ありませんかぁ? ええ、職業冒険者の従魔術師の女性で。可愛らしい容姿だけではなく、実力も折り紙付きで、老若男女にファンがついていらっしゃるようですよぉ」
「……え? え? ツバキ師匠!?」
と、思えば、今度はどこか澄ました声色と表情でつらつらと1人喋り出すツバキに、ラーハルトは自身の従魔であるシシーと抱き合って震える。
「最近流行りの映像玉ですね、ええ、そちらで自身のご活躍を記録して販売されているそうでぇ、彼女の人気が爆発。彼女のようになりたいと真似をされる方が急激に増えているそうです。服装や映像玉に冒険の様子を記録する事、それから、」
震えるラーハルトとシシーは気にせずペラペラと喋り続けていたツバキがそこでようやく息をつく。そして。
「彼女の連れている従魔、フェアリービーをテイムする従魔術師や冒険者が爆増しているとかああああああああ!!」
ツバキの怒りの咆哮に遅れること僅か。
ツバキの奇行に震えていたラーハルトは、そこでようやくこの一連の騒動の原因を悟り、ツバキに遅れること一瞬、叫ぶ。
「っそういうことかあああああ!!」
いつぞやの爆弾鼠の際の騒動再び、である。
玄関で叫ぶな、というもっともな注意をサザンカにされたツバキとラーハルトは、毛玉猫達がすぴょすぴょと寝ているリビングへと移動した。
お互いに一回落ち着こう、と熱いお茶を一口飲んで深呼吸をする。
「ところで……フェアリービー騒動の原因については分かりましたけど、さっきのはなんだったんです?」
「ギルドで聞いたことをそのまま真似してみたの」
「な、なんでわざわざ……」
「このイラつきをラーハルトにも分けたくて。なんか私だけイラっとするの嫌じゃない」
「なんでですか! 俺だってイラっとしたくないですよ!」
わけの分からないツバキの持論にイラっとしつつ、ラーハルトは要点をまとめましょう、とお茶の入ったコップを卓の脇に寄せる。
「それで、フェアリービーをテイムしようとする人々が急増したのは分かりました。でもそれとフェアリービーの巣が増えている事はどう関係あるんですか?」
「結論だけ言うと、飼育放棄ね。1度テイムしたフェアリービーを適当に手放したり放置したり。で、放置されたフェアリービー達が本来の生息地以外で集まって巣を作っている、と」
「なんでそんな事に……フェアリービーは爆弾鼠と違って面倒な特性があったりとかないですよね? 特別交戦的でもないですし、飼育が困難でもないと思いますけど……」
「それよ」
「え?」
ツバキははあ、と深くため息を吐く。
「件の女性冒険者は高ランクの実力者なの。で、その彼女の活躍を見た人達の多くがフェアリービーが可愛い上にとっても強い魔物だと思ったそうなの」
「ま、まさか」
「弱いから。そんな理由で、フェアリービーを簡単に捨てている人達が沢山いる」
ツバキの口から飛び出た言葉に、ラーハルトは言葉をなくした。
ちょっとギルドに行って情報を仕入れてくる、と出掛けていったツバキが、げっそりとした顔で帰ってきた。
「し、師匠。どうでした? 何か分かりましたか?」
「……わけが分からない」
「え?」
ぼそぼそと呟くツバキに、ラーハルトは水が入ったコップを手渡しながら聞き返す。
「わけがっ! 分からない!!」
「ぅええっ!?」
と、突然ツバキが天井を仰いで叫び出した。
「あああああ……最近人気の冒険者さんなんですよぉ。ご存知ありませんかぁ? ええ、職業冒険者の従魔術師の女性で。可愛らしい容姿だけではなく、実力も折り紙付きで、老若男女にファンがついていらっしゃるようですよぉ」
「……え? え? ツバキ師匠!?」
と、思えば、今度はどこか澄ました声色と表情でつらつらと1人喋り出すツバキに、ラーハルトは自身の従魔であるシシーと抱き合って震える。
「最近流行りの映像玉ですね、ええ、そちらで自身のご活躍を記録して販売されているそうでぇ、彼女の人気が爆発。彼女のようになりたいと真似をされる方が急激に増えているそうです。服装や映像玉に冒険の様子を記録する事、それから、」
震えるラーハルトとシシーは気にせずペラペラと喋り続けていたツバキがそこでようやく息をつく。そして。
「彼女の連れている従魔、フェアリービーをテイムする従魔術師や冒険者が爆増しているとかああああああああ!!」
ツバキの怒りの咆哮に遅れること僅か。
ツバキの奇行に震えていたラーハルトは、そこでようやくこの一連の騒動の原因を悟り、ツバキに遅れること一瞬、叫ぶ。
「っそういうことかあああああ!!」
いつぞやの爆弾鼠の際の騒動再び、である。
玄関で叫ぶな、というもっともな注意をサザンカにされたツバキとラーハルトは、毛玉猫達がすぴょすぴょと寝ているリビングへと移動した。
お互いに一回落ち着こう、と熱いお茶を一口飲んで深呼吸をする。
「ところで……フェアリービー騒動の原因については分かりましたけど、さっきのはなんだったんです?」
「ギルドで聞いたことをそのまま真似してみたの」
「な、なんでわざわざ……」
「このイラつきをラーハルトにも分けたくて。なんか私だけイラっとするの嫌じゃない」
「なんでですか! 俺だってイラっとしたくないですよ!」
わけの分からないツバキの持論にイラっとしつつ、ラーハルトは要点をまとめましょう、とお茶の入ったコップを卓の脇に寄せる。
「それで、フェアリービーをテイムしようとする人々が急増したのは分かりました。でもそれとフェアリービーの巣が増えている事はどう関係あるんですか?」
「結論だけ言うと、飼育放棄ね。1度テイムしたフェアリービーを適当に手放したり放置したり。で、放置されたフェアリービー達が本来の生息地以外で集まって巣を作っている、と」
「なんでそんな事に……フェアリービーは爆弾鼠と違って面倒な特性があったりとかないですよね? 特別交戦的でもないですし、飼育が困難でもないと思いますけど……」
「それよ」
「え?」
ツバキははあ、と深くため息を吐く。
「件の女性冒険者は高ランクの実力者なの。で、その彼女の活躍を見た人達の多くがフェアリービーが可愛い上にとっても強い魔物だと思ったそうなの」
「ま、まさか」
「弱いから。そんな理由で、フェアリービーを簡単に捨てている人達が沢山いる」
ツバキの口から飛び出た言葉に、ラーハルトは言葉をなくした。
76
あなたにおすすめの小説
魔物をお手入れしたら懐かれました -もふプニ大好き異世界スローライフ-
うっちー(羽智 遊紀)
ファンタジー
3巻で完結となっております!
息子から「お父さん。散髪する主人公を書いて」との提案(無茶ぶり)から始まった本作品が書籍化されて嬉しい限りです!
あらすじ:
宝生和也(ほうしょうかずや)はペットショップに居た犬を助けて死んでしまう。そして、創造神であるエイネに特殊能力を与えられ、異世界へと旅立った。
彼に与えられたのは生き物に合わせて性能を変える「万能グルーミング」だった。
転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化!
転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。
どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。
- カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました!
- アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました!
- この話はフィクションです。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~
鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!
詳細は近況ボードに載せていきます!
「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」
特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。
しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。
バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて――
こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。
間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜
舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」
突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、
手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、
だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎
神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“
瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・
転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?
だが、死亡する原因には不可解な点が…
数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、
神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?
様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、
目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“
そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪
*神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw)
*投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい
*この作品は“小説家になろう“にも掲載しています
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。