41 / 64
第7篇 愚か者のブルース
第7話 エピローグ
しおりを挟む
あるところに、人と神と竜が生きる国がありました。
ある時罪を犯した竜に対して、神は罰を与える事になります。
決して許される罪ではありません。けれども、ただ罪を犯した竜を殺してしまったのでは、それは罰ではなくただの1つの命の終焉でしかありません。
どうしたものか、神は頭を悩ませます。
するとその時、神の内の1人が声をあげました。
〝贖罪の旅路を歩ませましょう〟
〝竜はいつも天を自由気ままに飛び回っているから、大地を歩かせ、そこに生きる者が居るのだと教えましょう〟
〝竜はいつも火を吐き出して回るだけだから、その口で他の事も出来るのだと教えましょう〟
〝しかし竜がそれで改心するだろうか?〟
その提案に、神は首をかしげます。
〝長い竜の命をもってしても、その命の終わりまで心を改めなければ?〟
〝例え竜の命が尽きても、その次の命も、その次も、贖罪の旅路を歩ませましょう。竜が学ぶまで。果たして彼が何をして、何をしてこなかったのか〟
神はいまだ牙を剥く竜に疑いの眼差しを向けます。
〝ならば私も贖罪の旅路に同行します。彼の傍で、彼が歩みを止める時はこれを諌め、心改めたと認めた時には貴方に報告に向かいます〟
〝報告に?竜と共に大地へ降りるのに、翼を持たぬお前はどうやって再びこの天へ?〟
〝もう一度竜に翼を与え、その背に乗って天へと参ります〟
いいだろう、と神は言いました。
更に神は続けます。
〝お前に竜の監督を任せよう。日々の行いも報告するように。竜が改心しないならば罰を与え続ける事とする〟
分かりましたと一言告げたその神は、傍らの竜に話し掛けます。
〝さあ、私と共に大地へ、貴方が焼いてしまった人の生きる地へと行きましょう。旅はとても、気が遠くなるほど長いものとなるでしょう。私は貴方の行いを、貴方をずっと見ています。そして私は、貴方が私を背に乗せてまたこの天へとかえって来る日を信じています〟
それは遠い遠い昔、1匹の竜と1人の神が大地へ降りたお話。
【愚か者のブルース】完
ある時罪を犯した竜に対して、神は罰を与える事になります。
決して許される罪ではありません。けれども、ただ罪を犯した竜を殺してしまったのでは、それは罰ではなくただの1つの命の終焉でしかありません。
どうしたものか、神は頭を悩ませます。
するとその時、神の内の1人が声をあげました。
〝贖罪の旅路を歩ませましょう〟
〝竜はいつも天を自由気ままに飛び回っているから、大地を歩かせ、そこに生きる者が居るのだと教えましょう〟
〝竜はいつも火を吐き出して回るだけだから、その口で他の事も出来るのだと教えましょう〟
〝しかし竜がそれで改心するだろうか?〟
その提案に、神は首をかしげます。
〝長い竜の命をもってしても、その命の終わりまで心を改めなければ?〟
〝例え竜の命が尽きても、その次の命も、その次も、贖罪の旅路を歩ませましょう。竜が学ぶまで。果たして彼が何をして、何をしてこなかったのか〟
神はいまだ牙を剥く竜に疑いの眼差しを向けます。
〝ならば私も贖罪の旅路に同行します。彼の傍で、彼が歩みを止める時はこれを諌め、心改めたと認めた時には貴方に報告に向かいます〟
〝報告に?竜と共に大地へ降りるのに、翼を持たぬお前はどうやって再びこの天へ?〟
〝もう一度竜に翼を与え、その背に乗って天へと参ります〟
いいだろう、と神は言いました。
更に神は続けます。
〝お前に竜の監督を任せよう。日々の行いも報告するように。竜が改心しないならば罰を与え続ける事とする〟
分かりましたと一言告げたその神は、傍らの竜に話し掛けます。
〝さあ、私と共に大地へ、貴方が焼いてしまった人の生きる地へと行きましょう。旅はとても、気が遠くなるほど長いものとなるでしょう。私は貴方の行いを、貴方をずっと見ています。そして私は、貴方が私を背に乗せてまたこの天へとかえって来る日を信じています〟
それは遠い遠い昔、1匹の竜と1人の神が大地へ降りたお話。
【愚か者のブルース】完
0
あなたにおすすめの小説
課長と私のほのぼの婚
藤谷 郁
恋愛
冬美が結婚したのは十も離れた年上男性。
舘林陽一35歳。
仕事はできるが、ちょっと変わった人と噂される彼は他部署の課長さん。
ひょんなことから交際が始まり、5か月後の秋、気がつけば夫婦になっていた。
※他サイトにも投稿。
※一部写真は写真ACさまよりお借りしています。
雪の日に
藤谷 郁
恋愛
私には許嫁がいる。
親同士の約束で、生まれる前から決まっていた結婚相手。
大学卒業を控えた冬。
私は彼に会うため、雪の金沢へと旅立つ――
※作品の初出は2014年(平成26年)。鉄道・駅などの描写は当時のものです。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる