16 / 18
16、紅の少年
しおりを挟む「…………ここはどこ………?」
ベットで寝ていたはず…………目を開けるとそこは天を突かんばかりの石の塔が乱立した世界だった…………見たことの無い建造物、王族が住む王宮よりも精巧に、緻密に作られている、製造技術すら不明な希少な透明な板を何十枚、何百枚を寸分違わず並べられ、窓がわりにしている塔が幾つも聳え立っている、だが、些か不可解だ、まるで何年も放置された無人の民家のように紅い植物の蔓が塔に絡みついている………まるで拘束具のように見える………。
『グルルルル………』
「ーーー貴方は…………でも…………」
『グルルルル………グラァァッッッ!!!』
「ーーーッッッッッッ??!!!」
そこには私の所有する退魔の剣に宿る聖霊獣だと思われる狼が居た、だがおかしい……見た目はそっくりだが、毛の色が赤だったはずだ……なぜか白い……………不意に銀狼が私に噛みつこうと襲いかかってくる。
『ーーおっと』
『ーーーグラァッッッ??!!!』
『………どうどう』
私に到達する寸前、石の塔に絡みついた蔓達が銀狼に伸びて、手足を縛り付け、口も開けないよう巻きつかれ、空中で身動きが取れなくなる。
「………貴方は………誰?……」
『誰?、何言ってんの、僕だよ、■■■■■■だ』
「………?」
『…………ああ、そうか………まだ………』
いつの間にか背後に居たのはフード付き赤マントを見に纏い、厚い革グローブを手につけている少年、フードを被っているので詳しくは見えないが、幼げながらも整った顔、つボサついた栗毛、襟首の辺りで長い髪を一つに纏めていて、ポニーテールのようになっている、名前を問うが、名前の部分だけノイズがかかったように聞こえない…………私の様子に一人で勝手に納得げに呟く彼。
『………それにしても、いきなり他の聖武器とのリンクを切るから、■■■■■■■■■……いや聞こえないか………この子が暴れ始めちゃったじゃないか、困るよ、世話できないのに餌をお腹いっぱい食べさせたら、最近胃拡張気味なのか、食欲旺盛で制御するのも大変だよ』
「聖武器との、リンク?」
『?、うん、君の退魔の剣が吸収した魔力は他の聖武器へと流れ、強化するために消費されていただろう?』
「え?……そう、なの?」
子供にペットの世話を押し付けられた母親のような口ぶりでぼやく少年………途中なんかサラッととんでもない秘密を言われた気がする。
『ありゃ、結構長い付き合いだったのに、聞かされてなかったんだ………まぁこの秘密が知られたら困るからねぇ、仕方ないのかな』
「………いろいろ聞きたいことがあるけど、その前に貴方の名前を聞かせてよ、まだ教えてもらってない」
『ごめんね、教えたいのは山々なんだけど、教えるわけにはいかないかな………知れば必ず君は不幸になる、知らなくて良い事なんてこの世にはごまんとあるさ』
「……………」
『…………納得いかないって顔だね』
「よくわからないけど………私をあの狼から助けてくれたよね?」
『うん?、まぁそれが僕の仕事だからね』
「確かに貴方の言う通り、この世には知らなくて良い事が溢れてる…………だけど、助けてもらった恩人の名前を知れないのは、もうそれ自体が不幸だよ」
『…………頑固だねぇ、ま、君とは長い付き合いになるだろうし、名前がないと不便か…………それじゃあ、ブランシェットとでも名乗っておこうか………気軽にフランって呼んで』
ゆっくりと優しい声音で語り続ける少年………再度名前を尋ねるも、言い渋る彼………少年改めフランは根負けする形で名乗る。
「ブランシェット…………」
『………うん、話はここまでにしようかな』
「え?、ま、まだ話したいことが山ほど………」
『続きはあっちでしよう』
「?」
私の意識はそこで途絶えた。
2
あなたにおすすめの小説
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!
月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。
そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。
新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ――――
自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。
天啓です! と、アルムは――――
表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。
【短編】婚約破棄?「喜んで!」食い気味に答えたら陛下に泣きつかれたけど、知らんがな
みねバイヤーン
恋愛
「タリーシャ・オーデリンド、そなたとの婚約を破棄す」「喜んで!」
タリーシャが食い気味で答えると、あと一歩で間に合わなかった陛下が、会場の入口で「ああー」と言いながら膝から崩れ落ちた。田舎領地で育ったタリーシャ子爵令嬢が、ヴィシャール第一王子殿下の婚約者に決まったとき、王国は揺れた。王子は荒ぶった。あんな少年のように色気のない体の女はいやだと。タリーシャは密かに陛下と約束を交わした。卒業式までに王子が婚約破棄を望めば、婚約は白紙に戻すと。田舎でのびのび暮らしたいタリーシャと、タリーシャをどうしても王妃にしたい陛下との熾烈を極めた攻防が始まる。
義母と義妹に虐げられていましたが、陰からじっくり復讐させていただきます〜おしとやか令嬢の裏の顔〜
有賀冬馬
ファンタジー
貴族の令嬢リディアは、父の再婚によりやってきた継母と義妹から、日々いじめと侮蔑を受けていた。
「あら、またそのみすぼらしいドレス? まるで使用人ね」
本当の母は早くに亡くなり、父も病死。残されたのは、冷たい屋敷と陰湿な支配。
けれど、リディアは泣き寝入りする女じゃなかった――。
おしとやかで無力な令嬢を演じながら、彼女はじわじわと仕返しを始める。
貴族社会の裏の裏。人の噂。人間関係。
「ふふ、気づいた時には遅いのよ」
優しげな仮面の下に、冷たい微笑みを宿すリディアの復讐劇が今、始まる。
ざまぁ×恋愛×ファンタジーの三拍子で贈る、スカッと復讐劇!
勧善懲悪が好きな方、読後感すっきりしたい方にオススメです!
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる