私の恋人はこの国ですので!〜前世でも来世でも妹に婚約者を寝取られ、すっかり婚約恐怖症となった私になぜか王子や獣人達に婚約を迫られる〜

ターナー

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1、プロローグ

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「………これで全部かな……」

「……のようだな」

………ここは京都、その昔、魑魅魍魎、悪鬼羅刹が跋扈する花の都だった………妖怪や怪異が人を襲うのは日常茶飯事だった………しかし時が流れ、文明が進み、妖怪や怪異の信憑性が薄れ、一般市民達の危機感は無くなっていた………だが、妖怪や怪異が消えたわけではない、ただ、闇夜に紛れ、人目につかないように襲う妖怪や怪異は未だ存在する。

だからこそ、私達陰陽師は日々、人に害する妖怪達を退治するのが仕事だ、実際、私、青葉小春は相棒の妖怪、金毛九尾の九重と一緒に天狗の群れを追い払っていた。

基本的に陰陽師は相棒に妖怪や怪異を一体いる、呼び方はコンビとか相方とかパートナーとか人によって様々だ………かつてこの京都を襲った大災害と言われた大妖怪が今は京都を守っているというのはなんとも不思議な話だ………というのも私のご先祖様がなんとか自身の魂に封印する事に成功、代々青葉家の次期当主は代々受け継いでいる……先代まではただ、周囲に被害が出ないように抑え込んでいただけだが、根気強く話し合うことにより和解、陰陽師が術を使う時に使用する力、『呪力』を『妖力』に変換させ、九重に渡すことによって持ちつ持たれつ、力を貸してくれている。

「やっーーーーと、帰れる!!!」

「そうさなぁ、もう一ヶ月は家にも帰れず働き詰めだったな………妖怪の儂はまだマシだったが、人の身の小春はかなりキツかっただろう」

「もう体中汗まみれで気持ち悪い~九重~風呂まで転移をお願い~」

「ーーったく、あいよ」

妖怪達の襲撃が重なってしまって、一ヶ月も働き詰めになってしまった私、帰宅する暇すらなく、そこら中を飛び回っていたので身体中が汗まみれ、ベタベタで気持ち悪い、すぐに自宅に帰りたかったので九尾の能力の一つ、転移術で湯船へと転移する。

「ーーうっひょ~気持ち良い~」

「全く子供みたいにはしゃいで……」

本当なら体を洗う前に湯船に浸かるのはマナー違反だが、今日くらいは無礼講だろう、こんな遅い時間なら同棲してる婚約者ならとっくに寝ているし、もしまだ入っていなかったり、入っている途中ならいっそ一緒に浸かってしまうの手だ………家に帰ってこれなかったから全くイチャイチャできなかったし、ちょうど良いといえばちょうど良い、お風呂で気分を上げた後にベットの上で………ムフフフ♡。

「………ん?」

「気持ちよかったです、もっと可愛がってください♡」

「俺も気持ちよかったよ♡」

湯船に浸かって一瞬後、誰かが浴室にいることに気づく、湯気のせいで気づくのが遅れた、目を凝らすとそこには………婚約者の東雲九頭竜と私の妹、青葉紅葉が壁に手をついて、蛇のように淫靡に絡み合っていた………平たく言うと男女の営みをしていた。

「え………何……やってんのアンタら………?」

「「ーーーえ??!、あ!!?」」

私が声をかけるとやっと気づいたのか、青い顔をする二人………。

「………どういう事?」

「「えっと、その………」」

青筋を浮かべながら私は説明を二人に求める………しかし、二人は口籠もり、冷や汗を浮かべているだけ………ダンマリを決め込む。

「……………心苦しいが、君との婚約破棄させてもらう…………」

「はい?」

私の質問に訳のわからん返答を返す九頭竜、あまりに急な話だったので間抜けな顔を晒してしまう。

「………君がいない間、世話をしてくれる紅葉を恋してしまった………そして気づいてしまった、彼女への愛こそが、真実の愛だということに………このまま紅葉を愛したまま、君とも婚約しているわけにはいかないんだ……君にも申し訳ない……許してくれ!!」

「…………」

………私は青筋を浮かべながらも、とりあえず彼の言い分を聞いてみる………真実の愛だとかなんか色々言ってるが、要約すると私がいなくて性欲を発散出来なかったので、近くに甲斐甲斐しく世話をしてくれる年若い娘がいたから手を出した………という風にしか聞こえない。


「あ、アンタね……」

「ーーー九頭竜は悪くないです!!、責めるなら私を責めなさい!!……九頭竜だけに重荷は背負わせません………私も一緒に罪を背負います!!」

「………も、紅葉………」

「………」

私は頭を片手で抑えながら彼に詰め寄ろうとするも、紅葉が間に挟まってくる…………なんか二人で感動的な空気を出してくるが…………お前らのやってる事は同棲してる婚約者が帰ってこない間に乳繰り合ってただけだからな?ひどい頭痛と目眩がしてきた………。


「ーーー茶番は終わったか?」

「「ーーえ??ガハッッッッ??!!?」」

「九重??!!」

刹那の内に実体化した九重が二人の首を鷲掴み、そのまま壁へ叩きつける、そして九つの尻尾の先を鋭利な刃物の状態へと変化させ、うち五つは九頭竜へ、四つは紅葉へと突きつける。

「………小春を裏切ったんだ………死ぬ覚悟はできてるんだろうな貴様ら」

「「ーーッッッッッ??!!」」

「ーーちょ、やめなさい九重!!!」

手に力を込め、ギリギリと万力のように二人の喉を締め上げる、頭まで血が上らなくなって、一瞬で彼女達の顔が青く染まっていく。


「………こいつらは一ヶ月働き詰めだったお前を裏切ってたんだぞ?、しかも自分達を悲劇のヒロインヒーロー気取りして……」

「だからって殺しちゃダメ、とりあえずその手離して、解放してあげて」

「………わかった……」


今にも二人を八つ裂きにしてしまいそうな剣幕の九重、急いでやめさせる私、私の言葉に渋々ながらも手を離し、二人を解放する………ぶっちゃけ、陰陽師の名家同士、東雲家と青葉家の婚約を気分で破棄したのだ………その場で打ち首にしてもこちらは罪に問われる事はないが………こんな奴らでも妹と婚約者なのだ、切り捨て御免はしたくない。


「ガハッッッッ、ゴホッッッッッ」

「だ、大丈ーー」

「ふざけんじゃねぇよ!!優しくしてりゃつけ上がりやがってこのクソアマ!!!んqこn45音くぃおにおbなぢおtrんhwしくぃおにおbなぢおtrんhwし0おナチ0オエ」

「………え?」

「とっとと出て行きなさいよ!!!、このババァが!!!ンゴイqn四位おqんごんび0dzんち0んウィ0ygひあn0英rg〇位h〇位はz〇位hrし0hrし0ジェs0い」

咳き込む彼女達に駆け寄るといきなり態度を豹変させる二人、私は唖然としてしまう………確かにいきなり九重が乱暴を働いてしまったのは事実だが、それでもここで殺されても文句は言えないことを彼らはしているのだ、それなのに、いきなりキレるとは………元々、根っこの原因は彼らが浮気をするからいけないのであって、彼らがキレて良い理由は何処にも無い………なのにここまでキレ散らかされるとは思っていなかった、しかも紛いなりにも助けた相手にこの態度はいかがなものか………後半に至ってはもう何を言ってるのか聞き取れない奇声を発している。


「………貴様ら」

「ーーー九重!!」

「ーー!!」

「………わかった、わかったよ、二人とも………出て行くよ………」

「早く出ていけよカス!!」

「そうよそうよ暴力女」

「…………さようなら」

一ヶ月も休まず働いてきたせいか、心身ともにボロボロだったのにそこに妹と婚約者の浮気、婚約破棄、二人の汚い本性………この世の全てに絶望した私は人知れず自殺した…………




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